Scene 03.
소희(所姬:ソヒ)が目を開けた。数日前に銃を受けた痕から、まだ引かぬ疼くような痛みが感じられるようだった。だるい肩胛骨のあたりを撫でさすりながら、身を難儀して起こした。隣の部屋で眠っていた시연(始緣:シヨン)の鼾が所姬の耳を震わせていた。所姬が長い髪をわしゃわしゃと掻きながら身を立て、部屋を出た。だるい肩胛骨のあたりを揉みながら外へ出ると、一層盛大な音が聞こえてきた。冷え込む天気だったが、低い体温のおかげで暑さを感じていた始緣は、戸を大きく開け放ったまま深い眠りに沈んでいた。所姬が顔をしかめきった表情で、深く眠り込んだ始緣をどうしたものか困り果てていた。起こすか起こすまいか、深い思案に思案を重ねる間に、ひとりでに息が詰まるかのような大きな山場を迎えた始緣が、大きく咳き込みながら慌てて身を起こした。仰天して身を起こした始緣の勢いに、敷居に立っていた所姬がかえって驚いた目で始緣を責めた。
所姬 : びっくりした!!
始緣 : あ。ああ。うん。あ。
呟きを続けた始緣が、身をべたりと再び横たえた。所姬が始緣をそっと起こした。
所姬 : おい。李始緣。目ぇ開けろ。
始緣 : なに。あたし昨日遅くまで起きてたの。もっと寝る。
所姬 : 今日、お母さんが知暎オンニの家に来ると思うけど、一緒に行く?
始緣が横を向いて寝転がったまま、所姬の言葉を聞いては身を起こした。鼻をすすった始緣が、鼻の詰まりきった声で目をかろうじて開けたまま、所姬を見つめた。
始緣 : あたしも行っていいの?
所姬 : 当たり前でしょ。早く準備して。一緒にお昼食べるから。
始緣 : 朝じゃなくて?
所姬 : あたしらが洗って準備してたら、知暎オンニはもう朝ごはん済ませてるよ。昼頃に着くと思うから、さっさと準備しな。
所姬が欠伸混じりの声で始緣を急かすと、始緣は寝床からがばりと立ち上がり、タオルを手にして浴室へ向かった。
Scene 04.
연수(延秀:ヨンス)が不審そうに연희(連曦:ヨンヒ)を見つめていた。連曦は黙って煙管を髪の中に差し込んでいた。延秀が連曦の部屋の敷居に立ち、腕を組んだまま連曦を怪しげに見ていた。早朝のかなり明るい陽射しが、連曦の部屋を照らしていた。
延秀 : 怪しい。かなり。
連曦 : 何が??
煙管を仕舞いながら、連曦が延秀の独り言めいた詰りに答えた。
延秀 : どこ行くの? 週末に? 勤務服着て? いや違うね。武道着みたいだけど。
連曦がはためく장삼포(長衫袍:ジャンサンポ)を羽織ったまま、中に着た저고리(赤古里:チョゴリ)を落ち着いて整えた。
延秀 : オンニ、誰かと何、喧嘩でもすんの??
連曦 : あたしがそんなことあるわけないでしょ。
延秀 : だからさ。世にも都連曦が人を殴る用事もないし。決闘する用事もないはずなのに。なんで最近、本廳にも下りないでここにずっといながら武道着姿で歩き回ってるの?
連曦 : あたしがいるの嫌なら下りようか?
延秀 : いや、そういうことじゃないでしょ。あたしはただオンニが心配だから言ってんの。
連曦が延秀の真剣な反駁に口の端をひくつかせた。
連曦 : ほんとに追い出すつもりだったんだ。真顔になってるの見ると。
延秀 : 違うってば!!
延秀の一喝に、連曦が薄く笑いながら再び前に据えた鏡を見つめた。身なりを全て直し終え、化粧まで済ませた連曦が身を立てた。
連曦 : 特別に受けた指示があってね。後で整理がついたら全部話すから。
延秀 : そう。
連曦 : 拗ねた?
延秀 : いいや。
連曦が笑いながら小さな体を運び、延秀にしがみつくように腕を絡めた。
連曦 : 拗ねてるくせに。
延秀 : 武道着まで似合うくせに。
延秀がひくつきながら不満を隠そうとしなかった。
連曦 : 今日ちょっと遅くなりそう。バイト午後でしょ?
延秀 : うん。もうちょっと寝てから出るつもり。
連曦 : そうやってまた昨日みたいに遅刻しないでよ。
延秀 : アニ、ほんとに。到着は間に合ったんだってば?
不満を零す延秀を背に、連曦が玄関へ出た。延秀が気のない声で連曦に言い添えた。
延秀 : いつも気をつけて。何か、あたしの助けでも要るなら電話して。
連曦が現代式に改良された수화자(水靴子:スファジャ)を履いた。踵がわずかに覗く長靴のように見える水靴子の中へ、白い버선(襪:ポソン)を添わせるように入れて仕舞いを終えてから、見送っていた延秀を見つめた。
延秀 : 羨ましい。水靴子も可愛い。
連曦が悪戯を仕掛けようと、大したことでもなさそうに延秀に言った。
連曦 : いつでも言いなさいって、あたしが慶——
延秀 : アニ、わざわざ早いうちからぶっ叩かれたくないの。あたしは雇われて正式に堂々と要求するから、さっさとあたしの知らない用事しに行って。
連曦が口の端をひくつかせては身を翻し、玄関を出た。
延秀 : 気をつけて行ってきて!
連曦が歩いていた足取りのまま頭を巡らせて延秀を見ては、明るく笑った。頷いた連曦が、車庫に停めてあった車に乗り込んだ。かなり大振りな車のエンジンが掛かると、車庫を塞いでいた門がひとりでに開いた。連曦がなめらかに車を走らせ、その場を離れた。居間に入った延秀が、連曦の車が場を空けるとインターホンのボタンを押して車両用の大門を閉めた。連曦が去った家で、延秀は真っ先にテレビの電源を入れるとゲーム機を繋ぎ始めていた。また寝たら遅刻するという、自己正当化に近い行動だった。
Scene 05_01.
陽射しがちょうど昇り始めたとある路地だった。まだ誰もが目覚めていない週末の朝。路地の入り口に停まった大振りな中型車両の方へ、連曦(ヨンヒ)の水靴子が慎ましい気配で近づいた。楽な装いの이심(以心:イシム)が、後部座席に座り首を預けたまま深い夜を過ごしている最中だった。とても起こせないと困惑を浮かべた連曦の姿を、運転席に座った기사(技師)が先に確認し、ドアを静かに開けて外へ出た。自分よりもずっと幼い連曦に深い挨拶を黙って伝えた운전 기사(運転技師)に、連曦がさらに深い挨拶を返そうと腰を深く折った。
임 기사(林 技師:イム・ギシ) : あの、團長がきょう早くにお出ましになられまして、まだお休みです。よろしければ、近くのカフェでお飲み物でも一杯召し上がってからお戻りになる方が——
連曦 : あ、はい。承知しました。では、團長がお目覚めになりましたら、ご連絡を、お願いしても——
後部座席に座り、無防備のまま盛大な鼾をかいていた以心が、己の鼻音で目を覚まし、慌てて周囲を見回した。
以心 : いいのよ。寝てないわ。入りなさい。
鼻音を懸命にやり過ごしながら急いで周りを見回した以心の体面を汲もうと、運転技師と連曦が辛うじて目を逸らした。以心が慌てて後部ドアを開け、連曦を中へ招き入れた。
以心 : コーヒー屋なんてまだ開いてないでしょ。どこに行くっていうの。寝てないわ。うん。早く入って。寒いでしょ。
だぼっとした長袖のシャツとジャージを雑に纏った以心が、ぼさぼさの姿を懸命に整えていた。長い髪を手繰り寄せて高く結ぶ間、連曦が以心の身支度を手伝おうと、広々とした車の後部座席へ先に身を乗せた。
소희(所姬:ソヒ)が目を開けた。数日前に銃を受けた痕から、まだ引かぬ疼くような痛みが感じられるようだった。だるい肩胛骨のあたりを撫でさすりながら、身を難儀して起こした。隣の部屋で眠っていた시연(始緣:シヨン)の鼾が所姬の耳を震わせていた。所姬が長い髪をわしゃわしゃと掻きながら身を立て、部屋を出た。だるい肩胛骨のあたりを揉みながら外へ出ると、一層盛大な音が聞こえてきた。冷え込む天気だったが、低い体温のおかげで暑さを感じていた始緣は、戸を大きく開け放ったまま深い眠りに沈んでいた。所姬が顔をしかめきった表情で、深く眠り込んだ始緣をどうしたものか困り果てていた。起こすか起こすまいか、深い思案に思案を重ねる間に、ひとりでに息が詰まるかのような大きな山場を迎えた始緣が、大きく咳き込みながら慌てて身を起こした。仰天して身を起こした始緣の勢いに、敷居に立っていた所姬がかえって驚いた目で始緣を責めた。
所姬 : びっくりした!!
始緣 : あ。ああ。うん。あ。
呟きを続けた始緣が、身をべたりと再び横たえた。所姬が始緣をそっと起こした。
所姬 : おい。李始緣。目ぇ開けろ。
始緣 : なに。あたし昨日遅くまで起きてたの。もっと寝る。
所姬 : 今日、お母さんが知暎オンニの家に来ると思うけど、一緒に行く?
始緣が横を向いて寝転がったまま、所姬の言葉を聞いては身を起こした。鼻をすすった始緣が、鼻の詰まりきった声で目をかろうじて開けたまま、所姬を見つめた。
始緣 : あたしも行っていいの?
所姬 : 当たり前でしょ。早く準備して。一緒にお昼食べるから。
始緣 : 朝じゃなくて?
所姬 : あたしらが洗って準備してたら、知暎オンニはもう朝ごはん済ませてるよ。昼頃に着くと思うから、さっさと準備しな。
所姬が欠伸混じりの声で始緣を急かすと、始緣は寝床からがばりと立ち上がり、タオルを手にして浴室へ向かった。
Scene 04.
연수(延秀:ヨンス)が不審そうに연희(連曦:ヨンヒ)を見つめていた。連曦は黙って煙管を髪の中に差し込んでいた。延秀が連曦の部屋の敷居に立ち、腕を組んだまま連曦を怪しげに見ていた。早朝のかなり明るい陽射しが、連曦の部屋を照らしていた。
延秀 : 怪しい。かなり。
連曦 : 何が??
煙管を仕舞いながら、連曦が延秀の独り言めいた詰りに答えた。
延秀 : どこ行くの? 週末に? 勤務服着て? いや違うね。武道着みたいだけど。
連曦がはためく장삼포(長衫袍:ジャンサンポ)を羽織ったまま、中に着た저고리(赤古里:チョゴリ)を落ち着いて整えた。
延秀 : オンニ、誰かと何、喧嘩でもすんの??
連曦 : あたしがそんなことあるわけないでしょ。
延秀 : だからさ。世にも都連曦が人を殴る用事もないし。決闘する用事もないはずなのに。なんで最近、本廳にも下りないでここにずっといながら武道着姿で歩き回ってるの?
連曦 : あたしがいるの嫌なら下りようか?
延秀 : いや、そういうことじゃないでしょ。あたしはただオンニが心配だから言ってんの。
連曦が延秀の真剣な反駁に口の端をひくつかせた。
連曦 : ほんとに追い出すつもりだったんだ。真顔になってるの見ると。
延秀 : 違うってば!!
延秀の一喝に、連曦が薄く笑いながら再び前に据えた鏡を見つめた。身なりを全て直し終え、化粧まで済ませた連曦が身を立てた。
連曦 : 特別に受けた指示があってね。後で整理がついたら全部話すから。
延秀 : そう。
連曦 : 拗ねた?
延秀 : いいや。
連曦が笑いながら小さな体を運び、延秀にしがみつくように腕を絡めた。
連曦 : 拗ねてるくせに。
延秀 : 武道着まで似合うくせに。
延秀がひくつきながら不満を隠そうとしなかった。
連曦 : 今日ちょっと遅くなりそう。バイト午後でしょ?
延秀 : うん。もうちょっと寝てから出るつもり。
連曦 : そうやってまた昨日みたいに遅刻しないでよ。
延秀 : アニ、ほんとに。到着は間に合ったんだってば?
不満を零す延秀を背に、連曦が玄関へ出た。延秀が気のない声で連曦に言い添えた。
延秀 : いつも気をつけて。何か、あたしの助けでも要るなら電話して。
連曦が現代式に改良された수화자(水靴子:スファジャ)を履いた。踵がわずかに覗く長靴のように見える水靴子の中へ、白い버선(襪:ポソン)を添わせるように入れて仕舞いを終えてから、見送っていた延秀を見つめた。
延秀 : 羨ましい。水靴子も可愛い。
連曦が悪戯を仕掛けようと、大したことでもなさそうに延秀に言った。
連曦 : いつでも言いなさいって、あたしが慶——
延秀 : アニ、わざわざ早いうちからぶっ叩かれたくないの。あたしは雇われて正式に堂々と要求するから、さっさとあたしの知らない用事しに行って。
連曦が口の端をひくつかせては身を翻し、玄関を出た。
延秀 : 気をつけて行ってきて!
連曦が歩いていた足取りのまま頭を巡らせて延秀を見ては、明るく笑った。頷いた連曦が、車庫に停めてあった車に乗り込んだ。かなり大振りな車のエンジンが掛かると、車庫を塞いでいた門がひとりでに開いた。連曦がなめらかに車を走らせ、その場を離れた。居間に入った延秀が、連曦の車が場を空けるとインターホンのボタンを押して車両用の大門を閉めた。連曦が去った家で、延秀は真っ先にテレビの電源を入れるとゲーム機を繋ぎ始めていた。また寝たら遅刻するという、自己正当化に近い行動だった。
Scene 05_01.
陽射しがちょうど昇り始めたとある路地だった。まだ誰もが目覚めていない週末の朝。路地の入り口に停まった大振りな中型車両の方へ、連曦(ヨンヒ)の水靴子が慎ましい気配で近づいた。楽な装いの이심(以心:イシム)が、後部座席に座り首を預けたまま深い夜を過ごしている最中だった。とても起こせないと困惑を浮かべた連曦の姿を、運転席に座った기사(技師)が先に確認し、ドアを静かに開けて外へ出た。自分よりもずっと幼い連曦に深い挨拶を黙って伝えた운전 기사(運転技師)に、連曦がさらに深い挨拶を返そうと腰を深く折った。
임 기사(林 技師:イム・ギシ) : あの、團長がきょう早くにお出ましになられまして、まだお休みです。よろしければ、近くのカフェでお飲み物でも一杯召し上がってからお戻りになる方が——
連曦 : あ、はい。承知しました。では、團長がお目覚めになりましたら、ご連絡を、お願いしても——
後部座席に座り、無防備のまま盛大な鼾をかいていた以心が、己の鼻音で目を覚まし、慌てて周囲を見回した。
以心 : いいのよ。寝てないわ。入りなさい。
鼻音を懸命にやり過ごしながら急いで周りを見回した以心の体面を汲もうと、運転技師と連曦が辛うじて目を逸らした。以心が慌てて後部ドアを開け、連曦を中へ招き入れた。
以心 : コーヒー屋なんてまだ開いてないでしょ。どこに行くっていうの。寝てないわ。うん。早く入って。寒いでしょ。
だぼっとした長袖のシャツとジャージを雑に纏った以心が、ぼさぼさの姿を懸命に整えていた。長い髪を手繰り寄せて高く結ぶ間、連曦が以心の身支度を手伝おうと、広々とした車の後部座席へ先に身を乗せた。
