高臣はにこりともせず、薫と高臣の前に立った。
「もう、と言うがいい時間だぞ、直弥。説明は済んだのか?」
「あれ、本当だ。すっかり話し込んでしまったよ。すみません、薫さん。疲れたでしょう?」
「いえ、私は平気です」
気づけばもう夕方だった。直弥は話上手で、怪異について薫に何でも教え、薫も彼の話を興味深く聞いていた。今日一日でだいぶ怪異について理解が進んだと薫は思う。
「もうすぐ夕飯だが、食べていくだろう? 直弥」
「いや、僕はちょっと人と会う約束があるから帰るよ。それに、ようやく新妻とゆっくりできるんだから、僕が邪魔しちゃ悪いしね」
直弥はからかうように笑い、薫に視線を送る。当の薫は高臣の前で気まずい気持ちしかない。
「おい、あまりからかうな。僕達が契約結婚だとお前も知っているだろ」
「それはそうだけど、でもせっかく夫婦になったんだし、これから一緒に怪異と戦うことになるんだから、少しは仲良くした方がいいと思うけどね」
「大きなお世話だ。ほら、急ぐんだろう? もう帰れ」
「別に急いでないけど……分かったよ、帰るって。それじゃ薫さん、また」
「あ、ありがとうございました」
背中を強引に押し、追い立てるように高臣は直弥を部屋から追い出す。薫は手を上げる直弥の背中に慌てて声をかけたが、直弥の姿はあっという間に部屋から消えた。
直弥を見送った高臣は、ため息をつきながら薫がいる部屋へ戻って来た。
「……全く、あいつはいつもああなんだ。調子のいいことばかり言って」
文句を言う高臣だが、その顔には直弥に対する信頼も感じられる。仲のいい友人に照れながら悪態をつく男の顔だ。
「でも、とても話しやすくていい方でしたよ」
薫が何気なく言った言葉に、高臣は何故か眉をひそめた。
「直弥はああ見えて女癖が悪い。あなたも気をつけるように」
「そんなつもりで言ったわけじゃ……すみません」
(そもそも朝倉さんを家に呼んだのはこの人なのに)
理不尽に怒られ、薫が少しムッとしていると高臣は軽く咳払いした。
「それで……僕がいない間、変わりはなかったか?」
「あ、はい。春江さんに色々教えていただいたりしていました」
「そうか。これからも春江に色々学ぶといい」
「はい……分かりました」
ぎこちないやり取りが続いた後、会話が途切れて部屋の中はしんと静まり返った。
「……少し、雰囲気が変わったな」
「私ですか?」
高臣は横目でちらりと薫を見た。ここに来た時は古い着物を着て、みすぼらしい姿だったが新しい着物をもらい、春江から髪の毛や肌の手入れを教えてもらい、見た目は随分とましになった。
「顔色が良くなった」
「おかげさまでよく眠れていますので……」
寝室は高臣と別々である。初めてのベッドに最初は慣れず、なかなか寝つけなかったが数日経つとすっかり慣れてよく眠れるようになった。畳にぺたんこの布団を敷いて寝ていた頃とは全然違う。今思えばあれは布団とも呼べないものだったな、と薫は思い出しながらベッドに入る日々であった。
「体調が悪いと怪異退治に影響が出る。健康には気をつけるように」
「はい……」
まるで医者の問診のようなやり取りをしていた二人は、距離が全くといっていいほど縮まらない。書類上では夫婦になったとはいえ、結婚式もなく夫婦の誓いもない。会ったばかりの男といきなり夫婦になれと言われても、薫の実感がないのは当然だ。
「……では、今後もよろしく頼む。僕の仕事については直弥から説明を受けたと思う。出動の知らせが来たら、どんな時でも最優先で任務に当たって欲しい」
「はい」
思わずピンと背筋を伸ばし、薫は答えた。これが契約結婚の大きな目的なのだ。
「食事は今まで通り、あなたの好きな時に取ってくれ。僕と合わせる必要はない」
「分かり……え? 一緒に食べないんですか?」
薫が驚いて聞き返すと、高臣までつられたように驚いた顔をした。薫は実家で常に家族と一緒にご飯を食べていたので、別々に食べるという考えがそもそもなかった。当然高臣と一緒に夕食を食べると思っていたのだ。
「……僕は家を空けることも多いし、帰りも遅くなる。あなたが僕を待つ必要はない」
「それは分かるんですけど、今日は……?」
首を傾げる薫の顔を見た高臣は、パッと顔を背けた。
「僕は一人で食べる」
「そうですか……分かりました」
高臣は気まずそうな顔で、部屋を出て行った。一人部屋に残された薫はなんだか胸がむかむかとしてきた。
(いくら契約結婚だからって、あんなにあからさまに私を避けなくても! 朝倉さんは女嫌いだとか言っていたけど、あれはきっと高臣様が私に興味がないのを慰めようとしたんだわ。高臣様は確かに見た目がいいし立派な華族様だけど、あれじゃどのお嬢様だって逃げていくでしょうね!)
薫はこれまで見世物小屋で下品な客に絡まれたりするのはしょっちゅうだったが、男から分かりやすく拒絶されたことはなかった。
(私、あの人とこれからずっと一緒に暮らさないといけないんだ……)
妙前家に来てから、薫は初めて鼻の奥がつんとなった。それは絶望にも似た気持ちで、居心地の良かった妙前家が、急に二度と出られない監獄のように感じられたのだった。
♢♢♢
翌朝、高臣はいつものように一階のダイニングルームに顔を見せた。一般的には畳の上で座って食事をするものだが、妙前家ではテーブルに着いて食事を取る。高臣が座る場所には彼の食事と今朝の新聞が数誌並ぶ。これは女中の春江が用意したものだ。
高臣は部屋に入ると、背筋を伸ばした薫が既にテーブルに着いていることに気づき、驚いて足を止めた。薫は口を真一文字に結び、緊張しているようだ。
「おはようございます、た……高臣様」
薫はちらりと視線を動かすと、固い表情のまま高臣に挨拶をした。高臣は戸惑いながら「あ、ああ」と返し、椅子に腰かける。
薫の前には手つかずの朝食。鯵の干物、青菜のおひたし、卵焼き、ご飯と味噌汁、そして香の物というごく一般的な朝食である。華族とは言え、普段食べるものは平民とあまり変わらない。ただ食器はどれも美しく、高価なものだ。
「僕のことは気にせず、先に食べていてくれればいい」
困惑したままの顔で高臣は食事を始めた。薫も続けて箸を取り、味噌汁を口に運ぶ。妙前家の食事は全て春江が作る。だしの香りがふわっと鼻に抜ける上品な味だ。
「一人ずつ用意をしてその度に片づけをしたのでは、二度手間です! 高臣様がいらっしゃる時は、私も一緒に食べます!」
椀を静かに置いた薫は、一気に話すと再び口を真一文字に結んだ。薫の顔をポカンと見つめていた高臣は、上げていた箸を下ろすと小さく息を吐いた。
「そうか。なら好きにしなさい」
一言返した高臣は、再び食べ始めた。高臣は特に文句を言ったりすることもなかったが、代わりに何か薫に話しかけたりすることもない。二人はその後も無言のままだった。静かな空間の中、薫はもくもくと箸を進めていたがふと見ると、高臣はとっくに食べ終わっていて横の新聞を手に取って読んでいる。眉間に皺を寄せながら、高臣が新聞を隅々まで読んでいる様子は真剣そのものだ。途中で春江が入ってきてお茶を置いて行ったが、お茶には目もくれずに次々と新聞を手に取る。
(そうか、この人は朝食をさっさと食べて新聞を読みたいのね)
聞いてもいいか迷いながら、思い切って薫は口を開いた。
「あの、毎朝それだけの新聞を読むんですか?」
高臣は新聞から目を離し、お茶をようやく手に取ると薫をちらりと見た。
「おかしな事件や事故がないか調べている。僕が興味を持つ出来事というのは、大抵どうでもいい記事に眠っているものだ。例えば『千里眼を持つ女が公開実験を行う』という記事とかな」
「そうでしたか……」
どうやら薫の公開実験のことは、思ったよりも新聞に大きく取り上げられていたようだ。薫の公開実験は失敗に終わり、その後の新聞記事にも当然そのことが書かれていた。薫は春江から過去の新聞を見せてもらったが、公開実験翌日の見出しには『千里眼実験は大失敗、一ノ倉薫の異能は偽物』と写真付きで報じられていた。酷い書かれようだが、元々それを狙っていたので仕方ないと思いつつ、まるで詐欺師の片棒を担いでいたかのような記事の内容にはさすがに落ち込んだ。だがその日の夜に永田が亡くなったこともあり、薫のことはそれきり記事になることはなかったようだ。
高臣は毎朝、怪異や千里眼に関わりがありそうな記事を探しているようだ。これから一緒に朝食を食べることになったとしても、彼の邪魔はしない方がよさそうである。
高臣は一通り新聞を読み終えると部屋に戻り、隊服に着替えて出勤する。薫はそれのお見送りに出る。玄関で靴を履く高臣の背中を見ていると、靴を履き終えた高臣が突然振り返って薫の顔を見た。
「……昨夜は、あのような物言いをしてすまなかった」
「昨夜?」
始め何のことを言っているのだろうと思った薫は、すぐに高臣が薫に「一人で食べる」と話した時のことだと気づいた。
「今後、朝食なら一緒に食卓についてもらって構わない」
薫から目を逸らしながら話す高臣は、薫の返事を聞く前に出ていってしまった。
「……何なの?」
呆然としながら高臣が出ていくのを見ていた薫は、やがて彼なりに気を使っているのだと気づき、思わず頬が緩んだ。
「もう、と言うがいい時間だぞ、直弥。説明は済んだのか?」
「あれ、本当だ。すっかり話し込んでしまったよ。すみません、薫さん。疲れたでしょう?」
「いえ、私は平気です」
気づけばもう夕方だった。直弥は話上手で、怪異について薫に何でも教え、薫も彼の話を興味深く聞いていた。今日一日でだいぶ怪異について理解が進んだと薫は思う。
「もうすぐ夕飯だが、食べていくだろう? 直弥」
「いや、僕はちょっと人と会う約束があるから帰るよ。それに、ようやく新妻とゆっくりできるんだから、僕が邪魔しちゃ悪いしね」
直弥はからかうように笑い、薫に視線を送る。当の薫は高臣の前で気まずい気持ちしかない。
「おい、あまりからかうな。僕達が契約結婚だとお前も知っているだろ」
「それはそうだけど、でもせっかく夫婦になったんだし、これから一緒に怪異と戦うことになるんだから、少しは仲良くした方がいいと思うけどね」
「大きなお世話だ。ほら、急ぐんだろう? もう帰れ」
「別に急いでないけど……分かったよ、帰るって。それじゃ薫さん、また」
「あ、ありがとうございました」
背中を強引に押し、追い立てるように高臣は直弥を部屋から追い出す。薫は手を上げる直弥の背中に慌てて声をかけたが、直弥の姿はあっという間に部屋から消えた。
直弥を見送った高臣は、ため息をつきながら薫がいる部屋へ戻って来た。
「……全く、あいつはいつもああなんだ。調子のいいことばかり言って」
文句を言う高臣だが、その顔には直弥に対する信頼も感じられる。仲のいい友人に照れながら悪態をつく男の顔だ。
「でも、とても話しやすくていい方でしたよ」
薫が何気なく言った言葉に、高臣は何故か眉をひそめた。
「直弥はああ見えて女癖が悪い。あなたも気をつけるように」
「そんなつもりで言ったわけじゃ……すみません」
(そもそも朝倉さんを家に呼んだのはこの人なのに)
理不尽に怒られ、薫が少しムッとしていると高臣は軽く咳払いした。
「それで……僕がいない間、変わりはなかったか?」
「あ、はい。春江さんに色々教えていただいたりしていました」
「そうか。これからも春江に色々学ぶといい」
「はい……分かりました」
ぎこちないやり取りが続いた後、会話が途切れて部屋の中はしんと静まり返った。
「……少し、雰囲気が変わったな」
「私ですか?」
高臣は横目でちらりと薫を見た。ここに来た時は古い着物を着て、みすぼらしい姿だったが新しい着物をもらい、春江から髪の毛や肌の手入れを教えてもらい、見た目は随分とましになった。
「顔色が良くなった」
「おかげさまでよく眠れていますので……」
寝室は高臣と別々である。初めてのベッドに最初は慣れず、なかなか寝つけなかったが数日経つとすっかり慣れてよく眠れるようになった。畳にぺたんこの布団を敷いて寝ていた頃とは全然違う。今思えばあれは布団とも呼べないものだったな、と薫は思い出しながらベッドに入る日々であった。
「体調が悪いと怪異退治に影響が出る。健康には気をつけるように」
「はい……」
まるで医者の問診のようなやり取りをしていた二人は、距離が全くといっていいほど縮まらない。書類上では夫婦になったとはいえ、結婚式もなく夫婦の誓いもない。会ったばかりの男といきなり夫婦になれと言われても、薫の実感がないのは当然だ。
「……では、今後もよろしく頼む。僕の仕事については直弥から説明を受けたと思う。出動の知らせが来たら、どんな時でも最優先で任務に当たって欲しい」
「はい」
思わずピンと背筋を伸ばし、薫は答えた。これが契約結婚の大きな目的なのだ。
「食事は今まで通り、あなたの好きな時に取ってくれ。僕と合わせる必要はない」
「分かり……え? 一緒に食べないんですか?」
薫が驚いて聞き返すと、高臣までつられたように驚いた顔をした。薫は実家で常に家族と一緒にご飯を食べていたので、別々に食べるという考えがそもそもなかった。当然高臣と一緒に夕食を食べると思っていたのだ。
「……僕は家を空けることも多いし、帰りも遅くなる。あなたが僕を待つ必要はない」
「それは分かるんですけど、今日は……?」
首を傾げる薫の顔を見た高臣は、パッと顔を背けた。
「僕は一人で食べる」
「そうですか……分かりました」
高臣は気まずそうな顔で、部屋を出て行った。一人部屋に残された薫はなんだか胸がむかむかとしてきた。
(いくら契約結婚だからって、あんなにあからさまに私を避けなくても! 朝倉さんは女嫌いだとか言っていたけど、あれはきっと高臣様が私に興味がないのを慰めようとしたんだわ。高臣様は確かに見た目がいいし立派な華族様だけど、あれじゃどのお嬢様だって逃げていくでしょうね!)
薫はこれまで見世物小屋で下品な客に絡まれたりするのはしょっちゅうだったが、男から分かりやすく拒絶されたことはなかった。
(私、あの人とこれからずっと一緒に暮らさないといけないんだ……)
妙前家に来てから、薫は初めて鼻の奥がつんとなった。それは絶望にも似た気持ちで、居心地の良かった妙前家が、急に二度と出られない監獄のように感じられたのだった。
♢♢♢
翌朝、高臣はいつものように一階のダイニングルームに顔を見せた。一般的には畳の上で座って食事をするものだが、妙前家ではテーブルに着いて食事を取る。高臣が座る場所には彼の食事と今朝の新聞が数誌並ぶ。これは女中の春江が用意したものだ。
高臣は部屋に入ると、背筋を伸ばした薫が既にテーブルに着いていることに気づき、驚いて足を止めた。薫は口を真一文字に結び、緊張しているようだ。
「おはようございます、た……高臣様」
薫はちらりと視線を動かすと、固い表情のまま高臣に挨拶をした。高臣は戸惑いながら「あ、ああ」と返し、椅子に腰かける。
薫の前には手つかずの朝食。鯵の干物、青菜のおひたし、卵焼き、ご飯と味噌汁、そして香の物というごく一般的な朝食である。華族とは言え、普段食べるものは平民とあまり変わらない。ただ食器はどれも美しく、高価なものだ。
「僕のことは気にせず、先に食べていてくれればいい」
困惑したままの顔で高臣は食事を始めた。薫も続けて箸を取り、味噌汁を口に運ぶ。妙前家の食事は全て春江が作る。だしの香りがふわっと鼻に抜ける上品な味だ。
「一人ずつ用意をしてその度に片づけをしたのでは、二度手間です! 高臣様がいらっしゃる時は、私も一緒に食べます!」
椀を静かに置いた薫は、一気に話すと再び口を真一文字に結んだ。薫の顔をポカンと見つめていた高臣は、上げていた箸を下ろすと小さく息を吐いた。
「そうか。なら好きにしなさい」
一言返した高臣は、再び食べ始めた。高臣は特に文句を言ったりすることもなかったが、代わりに何か薫に話しかけたりすることもない。二人はその後も無言のままだった。静かな空間の中、薫はもくもくと箸を進めていたがふと見ると、高臣はとっくに食べ終わっていて横の新聞を手に取って読んでいる。眉間に皺を寄せながら、高臣が新聞を隅々まで読んでいる様子は真剣そのものだ。途中で春江が入ってきてお茶を置いて行ったが、お茶には目もくれずに次々と新聞を手に取る。
(そうか、この人は朝食をさっさと食べて新聞を読みたいのね)
聞いてもいいか迷いながら、思い切って薫は口を開いた。
「あの、毎朝それだけの新聞を読むんですか?」
高臣は新聞から目を離し、お茶をようやく手に取ると薫をちらりと見た。
「おかしな事件や事故がないか調べている。僕が興味を持つ出来事というのは、大抵どうでもいい記事に眠っているものだ。例えば『千里眼を持つ女が公開実験を行う』という記事とかな」
「そうでしたか……」
どうやら薫の公開実験のことは、思ったよりも新聞に大きく取り上げられていたようだ。薫の公開実験は失敗に終わり、その後の新聞記事にも当然そのことが書かれていた。薫は春江から過去の新聞を見せてもらったが、公開実験翌日の見出しには『千里眼実験は大失敗、一ノ倉薫の異能は偽物』と写真付きで報じられていた。酷い書かれようだが、元々それを狙っていたので仕方ないと思いつつ、まるで詐欺師の片棒を担いでいたかのような記事の内容にはさすがに落ち込んだ。だがその日の夜に永田が亡くなったこともあり、薫のことはそれきり記事になることはなかったようだ。
高臣は毎朝、怪異や千里眼に関わりがありそうな記事を探しているようだ。これから一緒に朝食を食べることになったとしても、彼の邪魔はしない方がよさそうである。
高臣は一通り新聞を読み終えると部屋に戻り、隊服に着替えて出勤する。薫はそれのお見送りに出る。玄関で靴を履く高臣の背中を見ていると、靴を履き終えた高臣が突然振り返って薫の顔を見た。
「……昨夜は、あのような物言いをしてすまなかった」
「昨夜?」
始め何のことを言っているのだろうと思った薫は、すぐに高臣が薫に「一人で食べる」と話した時のことだと気づいた。
「今後、朝食なら一緒に食卓についてもらって構わない」
薫から目を逸らしながら話す高臣は、薫の返事を聞く前に出ていってしまった。
「……何なの?」
呆然としながら高臣が出ていくのを見ていた薫は、やがて彼なりに気を使っているのだと気づき、思わず頬が緩んだ。
