ぼくの神さま。



「……今日も居ない」

 ぼくを救ってくれた『神さまの共犯者』という甘美な称号をいただいてからぼくは、度々教会へと通うようになった。しかし当然、いつもリヒトさんが居るわけではない。
 それはそうだ、彼はここに、罪を埋めに来ているのだから。
 リヒトさんが居ない教会は以前と変わらないはずなのに、なんだか寂しく感じられた。掲げられている創造主の像にリヒトさんの姿を重ねて、「また会えますように」と祈ることもあった。
 彼が罪を重ねるのを願うなんて、教会の神さまが聞いたらどう思うだろう。その疑問に答えてくれるひとはいなかった。


 やがてあれほど鮮烈だった出会いの夏が過ぎ、日が短くなり秋に差し掛かる頃には、リヒトさんに会えるタイミングをなんとしても逃したくなくて、通う頻度も増えていった。
 放課後も休みの日も、時には早起きをして学校の前に。毎日のように鬱蒼とした森を抜け、廃墟の教会に通うようになっていた。
 それでも、中々会えない日が続いた。
 もしかすると、彼に嫌われてしまったのではないか。ひょっとして、彼に何かあったのではないか。
 殺そうとした相手に返り討ちにされただとか、知らぬ間に警察に捕まってしまっただとか、そんな嫌な予感がぐるぐると巡っては、教会以外、彼の行きそうな場所さえ知らないことに絶望した。

「リヒトさん……」

 そもそも名前以外、何も聞かされていないのだ。知っているのは、彼の優しい声と触れた指先の温度だけ。あれだけリヒトさんの存在は安心の象徴だったのに、考える度不安でたまらなくなった。

「リヒトさん……リヒトさん、……会いたいなぁ」

 踏み込まないことを褒められたのに、いつしかぼくは、彼のことをもっと知りたくなっていた。そして、そんな欲張りな自分が、また少し嫌になった。