昼休みを終え、午後の授業中はずっと、壊れた櫛のことを考えていた。
持ち主は今も探しているだろうか。この櫛は大切にされていたのだろうか。壊れたと知ったらどう思うだろう。もしも持ち主の大切な友人や家族の形見だとしたらどうしよう。
そんなことを延々と考えながら、時々タクロウくんから飛んでくるゴミや、先生の声に紛れさせた小声での悪口も、ぼくへの罰なのだと思うようになった。
ぼくが大人しくやられていると、タクロウくんたちは大層満足そうだった。
「おい、ユウヒ。掃除当番終わったら遊ぼうぜ。昼休み遊べなかったしな」
「え……? いや……ぼく……」
「わざわざ誘いに来たおれたちを待たせるんだ。当然来るよな?」
「……、……わかった」
「はは、終わったらすぐ来いよ」
放課後になり、ぼくはタクロウくんたちに、滅多に人の来ない校舎裏の飼育小屋の近くに呼び出された。
どうせろくなことにはならないとわかっているのに。嫌だと断って行かなければいいのに。昼休みに逃げた結果を思い出し、深く溜め息を吐く。さらに二度目ともなると、すっぽかした時の報復を想像して、ぼくは憂鬱な気持ちのまま、自分の足で待ち合わせ場所に向かった。
「……お待たせ」
「おせーよユウヒ。オレらの貴重な時間を奪った罰として、サンドバッグの刑な」
「え、でも……掃除当番終わってからすぐに……」
言い訳を待つことなく、ぼくは思い切り突き飛ばされる。
「おれたち、雨宮クンが来ないかもって不安だったんだからな。悪いのは雨宮クンだ」
「っ……!」
ぼくが全部悪い。いつもそうだ。ポケットの中に入れっぱなしだった櫛が、突き飛ばされた瞬間にさらにひび割れるのを感じた。
二人は昼休みに逃げた分だといつも以上に攻撃的で、体当たりやキックをされても、ぼくには抗う気力もなかった。地面に丸くなるように突っ伏して、せめて頭を腕で守る防御体勢を取るのがやっとだった。
そんな時間が、永遠に続く気がした。早く終われと祈りながら、耐えるしかできなかった。
「はー、疲れた。ヨイチ、そろそろ帰ろうぜ」
「ああ、そうだな。……じゃあな、雨宮クン。また明日」
「ははっ、明日もたっぷり遊んでやるからなー」
「……」
やがていいだけ遊んだタクロウくんたちが帰ったあと、飼育小屋から漂う動物の匂いを感じながら、ぼくは土にまみれ地べたに寝転んだまま、痛みと苦しみの中呟く。
「……神さま。ぼくの神さま……。ぼくはまた、罪を犯しました……。苦しくてたまりません。ぼくを許して……ぼくの罪を眠らせてください……神さま……」
全部ぼくが悪い。苦痛の中でそう考え続けることで、ぼくはタクロウくんたちへの恨みや与えられる痛みさえ、自分の罪の証のように感じていた。
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