「それだけじゃないんだよ。あとは、そうだな……その後きみに見られたのは、アヤミさんかな」
「えっと、あの派手な……首にタトゥーの入った、茶髪の女の人……?」
「うん。彼女は……同じ大学の子で、入学当時から僕のことを好きだと言ってくれてね」
「え……っ」
思わず苦々しい声が出た。しかし土埃のせいで噎せたふりをして、咳払いをしてなんとか誤魔化す。
「大丈夫かい?」
「すみません、続けてください……」
「うん……好奇心なのか、興味本位なのか、僕に声をかけてくれる子はよくいるんだけど……線引きをすれば基本的に、それ以上近付いては来ないんだ。だけどアヤミさんはどれだけ流しても、かわしても、他の子と違って会う度にアプローチしてくるものだから……つい、彼女の好意を信じてしまった」
「……それは、単に図々しいというか空気読めないというか……明確に突き放さないリヒトさんの優しさに付け込んでるというか……」
心当たりのある内容に、言っていて少し苦しくなり、ぼくは口を噤む。
「ふふ。信じた上で、誠意としてきちんとお断りしようと思ったんだけどね……その前に、彼女に同棲している恋人が居ると知ってしまって」
「は……?」
再び声が出てしまった。しかしリヒトさんは僕に同調するように肩を竦めて、困ったように笑った。
「彼女は少しして、恋人のDVで亡くなったよ」
「え」
「相手は社会人だったらしくて、大学内での行動はあまり知られてなかったようなんだけど……何かのきっかけで、僕に色目を使っていたのがバレたんだろうね。……捕まった犯人は、僕さえいなければアヤミさんは死なずに済んだのにと供述していたらしくて……」
「そんなの、完全に犯人が悪っ……いや、恋人いるのにリヒトさんにちょっかいかけたアヤミさんも悪いけど……!」
「……ううん。アヤミさんを殺したのは僕なんだよ……もっと早く信じて断ればよかったのか、そもそも信じず他の子と同じようにあしらう形で放置し続けばよかったのかは、わからないけど……」
それがリヒトさんのせいだなんて、ぼくには納得がいかなかった。
しかしそれからリヒトさんは、過去に埋めてきた罪についても話してくれた。
幼馴染みや、近所のお姉さん。クラスメイトに、学校の先生や親戚のおじさん。
ぼくが教会に通い始めるずっと前から、彼の周りには間接的に死が付きまとっていた。
リヒトさんは何度か罪の証として小さな人形やぬいぐるみを埋めに来ていたらしく、語ってくれただけでもその数は十近かった。



