罪を作らなくても、神さまの傍に居られる。
そんな夢のような許しを得たぼくは、冬休みの間毎日教会を訪れた。
リヒトさんも、裏庭への用事がない時にもたまに教会に顔を出してくれるようになった。
本人は散歩のついでだと言っていたけれど、こんな森の奥にわざわざ散歩に来る人はいない。
二階の小部屋には、カイロやブランケットなんかの温かくなれるものが置かれるようになり、いつの間にかお菓子や飲み物も用意されていた。クリスマス会で貰ったあの幸せのようで、なんだか嬉しくなった。
お菓子は好きに食べていいと言われたけれど、リヒトさんと一緒に楽しみたいから、お腹が空いても我慢した。
手洗いや飲水も気軽に出来るようにと、水道も改めて契約してくれたらしく、自由に使えるようになっていた。
さすがに漏電の危険や廃墟に煌々と明かりがつくのはまずいからと、電気は変わらず使えないまま、ランタンのみ室内に常設となった。
本棚にはリヒトさんのお気に入りの小説だという本がいくつか並び、彼が居ない日にも、それを読むことで世界を共有できるような気がした。
読み終わり感想を聞かれる時、リヒトさんの望む答えを探そうと悩むこともあったけれど、違う感想を抱いても彼は否定しないでいてくれるから、ぼくは自分の心に素直になることができる。
ぼくがたくさん本を読むのを喜んでくれたリヒトさんは、ある日金属製の綺麗な栞をプレゼントしてくれた。ステンドグラスのように鮮やかで、光に翳すと透き通って見えるそれは、ぼくの宝物になった。
リヒトさんに会えない日は、それを神に祈るロザリオのようにして、彼のことを想った。
そうしてたくさんの幸せを与えてくれた、ぼくの神さま。
ぼくには持ち寄れるものなんてなかったけれど、リヒトさんに喜んで欲しくて、お母さんのアクセサリーをこっそり売ったお金で美味しそうな紅茶をプレゼントしたり、埋葬の儀式で汚れた時に使うためのタオルを補充したりした。
神さまを喜ばせるためなのだ、その盗みは罪なんかじゃない。
昔のぼくならそれでもきっと罪悪感に押し潰されていたけれど、一度越えたハードルは、容易く飛び越えられるものになっていた。
そうして冷たい廃墟の中にはぼくたちの物が増えていき、そこはぼくにとって、楽園のような場所になった。
そこで過ごす時間は、ぼくの人生においてもっとも温かく穏やかな、幸せな日々だった。



