ぼくの神さま。


 静かな夜の森に、シャベルと土や砂利のぶつかる高い音と、放られた土が地面に戻る低い音が交互に響く。
 思いの外重労働で、寒いはずなのにじんわり汗が滲んできた。

「ふう……」
「……ユウヒくん、もういいよ。あとは僕がやるから」
「いえ……やらせてください」

 やはり土に埋める感覚は、心地好い。嫌な気持ちも何もかも、奥深くへと閉ざされ見えなくなっていく。
 ミーティアを埋めた時には、土で布団を掛けるように、安らかに眠って欲しかった。

 壊してしまった櫛を埋めた時には、罪を隠すように、そっと蓋をするようにした。

 そしてぼくは今、無心で見知らぬ女の死体を埋めている。
 とにかく気持ちの悪い胸の中のぐるぐるを覆うように、女を念入りに土の底へと閉じ込めた。

「できた……」
「お疲れ様。……でもユウヒくん、なんでこんなことを……?」

 ようやく女の痕跡が消えて、すっかり暑くなったぼくは、少し土に汚れた上着を脱ぐ。
 そして汚れを払ってから、寒空の下でずっと作業を見守ってくれたリヒトさんの肩に、そっと自分のコートをかけた。

 改めて正面から向き合うと、身長差は出会った頃よりも随分縮まっていて、目線の高さもさほど変わらない。ぼくはやっと彼と同じ目線に立てるのが嬉しかった。

「……ぼくにはぼくの、あなたにはあなたの罪がある。それはわかります。でもぼくは、リヒトさんの罪を埋めました……罰を受ける時にはぼくも受けます」
「どうしてそんなことを……」
「理由は色々ありますけど……一つ言えるとしたら、あの箱の中身の罪なんかより、こっちの方がよっぽど幸せだからです」
「罪が、幸せ……?」
「ねえリヒトさん。これでぼくたち、本当に『共犯者』ですよね?」

 ぼくの言葉に目を見開いた神さまは、しばらくの沈黙の後、しょうがないなといった様子で眉を下げて笑った。


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