【続編♡】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい2


部屋に戻った俺たちは、売店で酒とつまみを買い込んで男子部屋で二度目の乾杯をした。
広い広い和室に、横長の大きなローテーブル二台。倍の人数で泊まっても困らないような部屋だ。
テーブルの上には絶対飲みきれないだろうという量の酒が並んだが、それらは意外と早く減っていった。


「だーから手品やなくて超能力やねんて!もっかい見せたるか?その代わり、見破れんかったらデコピンやで!」
「やってやって!もっかい見たい!デコピンはユズに譲る!」
「ええ〜!?」
「千冬、この煎餅美味ぇぞ。食ったか?」
「はい。こっちも美味しかったですよ」


テーブルには、中途半端に酒が残る缶、マロ専用の日本酒の瓶、使用中のコップ、俺と千冬用のノンアルが雑多に置かれている。
畳の上の座布団も散らかっていて、皆んな好きな場所に好きなように座って楽しんでいた。


「マロ、俺のメガネ知らないか?」
「マンティス…、それぼくじゃなくて座椅子だからぁ。メガネはさっきコップに落として乾かしてるんでしょ?」
「そうか…すまない」
「それはリュック。もう、誰と会話してるのぉ?ねぇ伊織ぃ、テレビのリモコンそっちにあるぅ?」
「おー」


まあまあカオスだ。
酔って首まで真っ赤にして手品を披露するカゲヤンと、やたら爆笑してる柑奈。ぽわぽわ笑いながら流されてる柚月。そして日本酒の瓶に語りかけているマンティス。
…マンティスが一番やべぇな。
俺と千冬はリモコンと煎餅を持ってマロの近くに座り直す。


「マロは酒強ぇな」
「みんなに比べたらね。ぼくの家族は皆んなこんな感じだよ」
「さすが長乃県民」
「伊織先輩は、1月に二十歳ですよね?」
「おう。悪ぃな、千冬くん。俺だけ先に大人になって」


フフンと笑うと、千冬はおかしそうにクスクス笑う。楽しそうな千冬を見て、俺も心がぽかぽかした。
みんなと酒を飲めるようになるのも楽しみだけど、千冬と一緒に飲めるようになるのも楽しみだ。
千冬は確か2月生まれだと言ってたから、まだ一年近く先か。


「あれぇ?伊織、それ何ぃ?」
「あ?あー、なんか柚月がくれたんだよ。よく分かんねぇけど」


マロが指差したのは、俺の首の左側。ちょうど耳の下のあたり。
絆創膏が貼ってあるところだ。
さっき、千冬が柑奈に絡まれてるときに柚月が「よかったら使って」と、こっそり渡してきたものだ。
てっきり右手用の絆創膏かと思って断ろうとしたけど、側にいたカゲヤンに取り上げられ、勝手に貼られてしまった。


「流行りかなんかか?俺は右手しか切ってねぇけど…」
「……」
「……あー、なんとなく分かったかも」


マロは俺と千冬の顔を交互に見て、ゆっくり頷いた。
そういえばカゲヤンがこれを貼った時も、「千冬クン大人しそうにしとんのに、結構大胆やなぁ」とか言っていた。

もしかして、柚月は千冬に言われて俺に絆創膏を渡してきたってことか??

答え合わせをしようと千冬の顔を見ると、千冬はまつ毛を下げ、少し不満そうに俺の首の絆創膏を見ていた。

…お前が貼らせたんじゃねぇのかよ?


「ちょっと伊織ぃ!シラフでしょ?私達の代わりにカゲヤンくんのこれ、見破ってよ!」
「あ〜?」
「俺の超能力に伊織がかなう訳がないねん」
「……見せてみろよ」
「ははは!」


売り言葉に買い言葉。
カゲヤンの超能力とやらは、どうせ飲み会で女子に好かれたくて習得しただけの簡単なものだろう。
酔っ払いのインチキ手品くらい見破ってやるよ。

あっさりと挑発に乗ると、体ごとカゲヤンに向いて胡座をかく。身を乗り出し、一瞬の不正さえ見逃さない構えだ。
そんな俺にカゲヤンは不敵に笑ってから一枚のコインを取り出した。
3つのカップの内の一つにそのコインを隠し、カップをランダムに移動させる。


「ほな伊織、さっきのコインはどこにあると思う?」
「……真ん中に決まって…、いや、右!右だろ?」
「ハハハッ!」


カゲヤンが急に身を乗り出し、俺との距離が縮まる。
ライトブラウンの瞳がニヤリと細められた。


「こーこ」
「うわっ、」


右手で、俺の髪を耳にかけるような仕草をすると、顔の近くから戻した右手にはコインが乗っていた。

え…、
……すげぇくね……?


「えー!?どうやったんだよ、それ!すげぇ!もう一回見てぇ!」
「せやろ?だから言ってんねん。超・能・力や…」
「わっ、」


突然腕を引かれて、視界からカゲヤンが消え、背後に倒れたんだと理解する。
倒れたと言っても、千冬の胸の中にすっぽり収まるような格好で抱き抱えられているから、痛みや衝撃は特になかったけど。


「…カゲヤン先輩、僕にも見せてください」
「ええで?せやけど、見破れんかったらその綺麗な顔にもデコピンバッチンさせてもらうからな?」
「望むところです」


俺の体を優しく起こすと、席を替わるよう促され、大人しくカゲヤンの正面を譲る。
俺は千冬の背後から顔を出して「超能力」を見守ることにした。
ちなみに柑奈と柚月は、もうカゲヤンの「超能力」には飽きたのか、マロとマンティスと遊んでいた。
まあいい。
2対1だ。俺たちの方が優勢だろ。


「よぉ見とるんやで?最初はこのカップに入れるからな?」


カゲヤンがコインをカップに隠す。
俺は立膝になり、千冬の肩に左手を乗せた。
くるくる場所を変えるカップとカゲヤンの手元を、一瞬たりとも見逃さないように集中力を研ぎ澄ます。
何度かカップの場所が入れ替えられ、カゲヤンがカップから手を放して千冬を見た。


「ほな、コインはどこや?」
「うーん……」
「………」


わかんねぇ。普通に考えたら、左のカップの中だけど……。
千冬は見破れたのか?
沈黙する後輩の様子を伺おうとしてハッとする。


「あ、悪ぃ千冬」
「…いえ、大丈夫ですよ」


集中するあまり、俺はいつの間にか千冬の肩に腕をかけ、ピンク頭に頬を乗せ、もたれかかるようにして見ていたらしい。
首や胸元も、千冬の首や背中に思い切り押し付け、完全に体重を預けていた。
重かったよな。
なんか、耳も赤ぇし。


「ハハハ!千冬クン、残念やったな!」
「はぁ?千冬はまだ何も答えてねぇだろ」
「伊織は罪な男やなぁ〜。ほな千冬クン、分かったんか?伊織が答えてもええで?」
「千冬っ、どうだ?分かったか?」
「………っ、…すみません…、わかりません、でした……」


両手で顔を隠し、さぞかし悔しそうに話す。
ガチか。
俺は恋人の無念を晴らすため、今度こそと意気込んで左のカップを指差した。


「左!左のカップ!」
「伊織の単純なとこ、俺はええと思うで?でもな……、ハズレや!アハハハ」
「うわー!2回目ともなるとうっぜぇ…」
「なんでやねん!」


悔しさ半分、疲れ半分でテーブルの上にあった適当なコップに口をつける。
簡単なトリックのはずなのに、こうも見破れないとちょっと興醒めするな。


「さあ、デコピンの時間やな。男には容赦せぇへんで?マンティスの鉄指デコピンをお見舞いしたるわ!」
「ん、呼んだか?」
「うえっ、マジかよ。マンティスのデコピン痛ぇんだよな」
「伊織先輩…、僕が伊織先輩の分もいただきます」


ずっと顔を覆っていた千冬が手を外し、マンティスの前に進み出た。


「え、千冬、ガチで痛ぇぞ?デコ割れるぞ?」
「いいんです。せめてこのくらいは、格好つけさせてください」
「格好…?」
「どけ伊織。漢に二言はない。止めるな」
「マンティスー、メガネ上下ひっくり返ってるでー」


神妙な顔をするマンティスに、カゲヤンが笑ってヤジを飛ばすが、マンティスの耳には届いていないらしい。
マンティスの前に座った千冬も真剣な顔でピンクの前髪を片手でかきあげた。
露わになった白く丸い千冬のデコに、俺は思わず小さく声を漏らす。


「あ…、」

───バチンッ、バチンッ!

「ッッッ痛っっ、〜〜〜っ!!」
「千冬っ!」


派手なデコピンの音の後、千冬はデコを手で押さえ、机の隅まで後退りすると、そのまま隅っこで座り込んだ。
柚月とマロが「大丈夫ー?」と声をかける。
千冬はこくこく頷いて応えるけど、身を屈め、手で覆った額をテーブルに乗せている様子は、本気で痛がってるようだった。


「おい千冬っ、大丈夫か?」


心配で横から顔を覗くと、千冬も俺の方に顔を向け、潤んだ栗色の瞳で俺を見た。


「…すごく…、効きました……」
「だから言ったじゃねぇか、マンティスの指は鉄砲より強ぇって」
「はぁ…、本当ですね。ふふ」


テーブルの向こうから「鉄砲は言ってなかったでしょ〜」とマロのツッコミが聞こえた気がするが、ちょっと距離があるからよく分かんねぇわ。
俺は目の前の、負傷した後輩を優先する。


「痛ぇか?」
「ちょっと。でも、伊織先輩の顔を見たら、もう痛みなんて分からなくなっちゃいました」
「何意味わかんねぇこと言ってんだよ。打ちどころが悪かったんじゃねぇか?」
「ふふっ」


冗談を言ってへにゃりと笑う千冬だけど、目尻はほんのり赤く染まり、頬も赤い。
やっぱ痛ぇんじゃねぇの?
口では冗談を返しつつも、心配な表情は隠さず千冬を見つめる。
千冬は、瞳にはたっぷりと水分を溜めているのに、口元は柔らかく笑って白い歯を覗かせていた。
前屈みの首元から、綺麗な鎖骨と、引き締まった胸元も、浴衣の影からチラ見えする。

………なんか、…え、えろい…。


「あー…、えっと…、そうだ、冷蔵庫から何か冷せるもん持ってくるわ」
「先輩、……側にいてくれませんか?」


視線を逸らし立ちあがろうとした俺を、千冬が腕を掴んで引き止める。
栗色の瞳が甘く俺を見つめるから、俺は少し迷ってから静かに座り直した。
掴まれた腕から千冬の手が滑り下り、テーブルの下で指が絡められる。
心拍数が上がる。


「伊織先輩、僕のこと、心配してくれてありがとうございます」
「…痛いなら素直に言えよ」
「先輩の手、握ったら治りました」
「んなわけあるかよ」


千冬が幸せそうに微笑む。額から手を外すと、淡いピンクの髪がゆるりとデコに落ちた。
大丈夫なら、いいけど…よ。

前髪の隙間から見えるデコには、赤い跡が残っている。
右手が、ピクリと動いた。

触れて、みたい。

スキー場でも感じた「触ってみたい」が、また俺の中でむくむくと膨らんでいく。

意を決して、俺は、乾いた口でごくりと唾を飲み込んでから、口を開いた。


「……あのさ、千冬」
「はい」
「『あとで言う』って、言ったじゃねぇか、俺。覚えてるか?」
「!、はい」


千冬が背筋をピンと伸ばした。
俺も握る手に力が入る。
そんな大したことじゃ、ねぇけど…。


「お願い…なんだけど、」
「何ですか?」
「……お前のデコ、触っても、いいか…?」
「おでこですか?もちろん、いいですけど…」


困惑気味な声を出す千冬に、俺は更に恥ずかしくなる。
それをぐっと我慢して、再び千冬の顔を覗き込んだ。

ちゃんと許可はもらった。
俺が千冬の顔の前に手をかざすと、長いまつ毛がそっと下りて、千冬が目を瞑る。


「……」
「……」


妙な緊張の中、包帯の巻かれた手で、ふわふわのピンクの前髪におそるおそる触れた。
指先で髪を撫でるように避けさせると、形のいい眉と、丸い額が現れる。

また、喉がごくりと鳴った。


「…赤く…、なってんな…」
「…でも痛くないです」
「…そーかよ」


無垢な白い額に浮かんだ赤い跡を、指の腹でそっと撫でた。

千冬の、デコ。
普段は隠されているそこに、俺の指が、触れている。
その事実に異常に胸がドキドキして、同時に満たされた気持ちになる。

なんで、そんな風に思うんだろう…。


「なんか、くすぐったいです」
「あ、悪ぃ…」


咄嗟に手を離すと、千冬がそっと目を開き、俺の手首を優しく掴んだ。


「やめないでください。…伊織先輩に触れられるの、すごく嬉しいです」


俺の手に千冬の頬が乗る。
俺より少し大きな千冬の手が、俺の手を覆うように重ねられた。
傷口を労るようにあくまで優しく頬を寄せ、手の端に、千冬の唇が僅かに触れた。
柔らかな感触に、耳の端まで熱くなる。


「もっと触ってくれて良いんですよ?次は、どこを触ってくれるんですか?」
「は……、えっ!?」
「それとも今度は、僕が触っていい番ですか?」


薄く開かれた焦茶の瞳は、熱されたカラメルのように、とろりと俺の視線を絡め取った。
呼吸が、浅くなる。


「で、デコだけで、いい…っ」
「伊織先輩」


千冬は俺の手を放さない。
それどころか、両手で俺の手首と手の甲を支えたまま、指先を滑らせる。
俺の指は千冬の綺麗な顎のラインをなぞり、熱い首筋を辿っていく。
筋肉と筋の凹凸が、生々しく俺の指先の神経を刺激した。


「ち、ふゆ…っ」


手が熱い。
千冬の顔を見ていられない。
俺の背後では、友人達の楽しそうな笑い声が聞こえる。
それなのに俺は、千冬の瞳に、声に、肌に、身体中がひどく熱くなっている。
ただ触れてるだけなのに、どうしてこんなに恥ずかしいんだ。
顔にも熱が集中して、目の奥にもじわじわ熱が溜まっていく。


「僕も…、先輩に触りたいです」
「……っ、」
「それで、俺だけのものだって…、感じたい」
「それ、どういう…」
「僕が、伊織先輩の彼氏だってことです」


意味、分かんねぇ…。
千冬の囁きに、俺は潤む目で千冬を見返した。
熱のこもった瞳が揺れる。


「伊織先輩は、僕に触れられるの、嫌ですか?」
「嫌じゃ、ねぇけど…」
「なら、好き?」
「………ん」


短く返事をして、千冬を上目遣いに見る。
千冬は目尻までほんのりピンクに染めて、幸せそうに微笑んだ。


「僕も。触れるのも触れらるのも、大好きです。好きだから触りたいし、触られたい。全部、伊織先輩だからです」
「…好きだから…、触りたい…?」
「はい。恋人だから許されることの一つですから」


千冬の言葉にハッとして、俺は視線を落とした。
千冬の頬に触れていた手も、力無く自分の膝の上に落ちた。


「…好きだから…、千冬の手も、デコも、頬も、…好き、だし……、」


触れて、確認したい。
その感触を、温度を、千冬の反応を……。


「…好きだから、」


一番、近くに、なりたい。
俺だけは、触れていいんだって感じたい。
他の人とは違う、俺だけの『特別』な距離が欲しい。
だって、俺は、
俺だけが…、


「…千冬の…恋人、だから……」


一瞬、見上げた千冬の瞳が、宝石のように輝いた。
自分の言葉が、腹の真ん中にすとんと落ちる。

……そういう、ことか…。

マロに言われた言葉が、自分の感情にカチリと当てはまった。
パズルのピースが嵌ったときのような、爽やかで心地良い感動が胸に満ちる。

千冬に触れたいと思うのは、千冬が、俺にとって特別な存在だから。

友人でも、家族でもない。「恋人として触れたい」から、…恥ずかしいんだ…。


「伊織先輩?」


千冬が俺を呼び戻した。
不思議そうな顔が俺を見つめる。


「千冬、俺、千冬が好きだ」
「…っ、は、はい。僕も───」
「だから、…デコに触りたかった。…それに、…千冬のデコに、こうやって触れられるのは…、俺だけ、がいい……」
「………」


千冬が震え混じりで息を吐く。
控えめに目だけで見上げると、千冬は手で口元を隠し、赤い顔を壁側に逸らしていた。


「………あの、…それって…」
「ん?」
「…僕のこと、独り占めしたいって、ことですか…?」


色香の滲む栗色の瞳が、欲に揺れる。
溢れる欲を飲み込むように、千冬の喉がゆっくり上下した。

……独り占め?
そう、なのか?

学祭で、千冬が連絡先を聞かれていた時や、今日のゲレンデで、千冬が柚月に優しく微笑んでいた時。
そんなとき、俺の胸はチクリと痛んだ。

少し考えて頬が熱くなる。


「………ちょっとだけ、…そう、かも…」


テーブルの向こうでは、みんながスマホの画面を見せ合って腹を抱えて笑っている。
ドキドキ言う心臓がうるさい。
千冬は誰のものでもねぇのに、なんて自分勝手な気持ちなんだろう。
白状するだけでも恥ずかしくて涙が出そうだ。

真っ赤な顔で千冬を見上げると、千冬は微かに目を見開いたまま固まっていた。
……どうした?大丈夫か?


「千冬…?」
「………………もう一部屋、予約しておけば良かった…」
「なんか言ったか?」


千冬はぎゅっと目を閉じると、机の上にあったコップをひったくるように手に取り、よく聞こえない独り言と共に一気に飲み干した。
いい飲みっぷりだ。喉乾いてたんだな…。


「んっ!、ケホッ、ケホ…!」
「千冬!?」


千冬が急に咳き込み、テレビを見ていたみんなも振り返る。


「どうしたの?大丈夫?」
「変なとこ入った?」
「…ケホッ、…いえ、水と間違えてお酒飲んじゃったみたいで…」
「ええーっ!?」


既にテーブルに突っ伏して寝落ちしているマンティス以外が、千冬の周りに集まる。


「どれ飲んだの?」
「あ!俺のジンソーダやったかも。ごめんな千冬クン、俺が紛らわしいところに置いてもうたわ」
「千冬くん、気分悪くない?とにかくお水飲んで」
「ありがとうございます、胃が少し熱いくらいで、体調は大丈夫そうです」
「水がもうねぇな。俺、下の自販機で買ってくるわ。千冬のこと頼む」
「俺も行くで。伊織片手しか使えへんやろ」
「千冬っちはこっち来て、大人しくしててねぇ。座ってるか横になるか、楽な姿勢でいいから。仰向けはダメだよぉ」


マロが千冬を自分の近くの座椅子に座らせたのを横目に確認して、スマホと財布を片手に立ち上がる。
大丈夫そうだって言ってたけど、初めて飲んだなら、どれだけ酒に強いかなんて分かんねぇもんな。
水を買って、できるだけ早く戻ろう。
俺は千冬に「すぐ戻るからな」と声をかけて、カゲヤンと部屋を出た。