アンコールはこのあとで

「二の三ー! こっち来て並んで! 点呼取るよー!」
 クラス委員が声を張っている。二年三組のメンツがその声を聞いて集まってきて、ぞろぞろといびつな列をつくった。おれもその真ん中らへんに並ぶ。後ろに並んでいる堺と戸佐もマフラーに顔をうずめて温存状態だ。
 びゅーっと木枯らしが吹いて、冷たさがぴりぴりと頬に刺さってきて「うげぇ、さむ、死ぬ」と独り言が出た。
「オノレン、手かじかんでない? ダイジョウブ?」
「この寒さだと動かしにくいんじゃないの」
 これは大変だと堺と戸佐がじりじりと近づいてきて風よけになってくれる。ぎゅって引っ付いたらなかなかあったかい。その優しさがうれしい。おれの友だちみんな優しいわ。
「ふふふ、心配ご無用!」
 にこにこ笑いながらポケットに突っ込んでいた両手を見せた。
「カイロ持ってきた!」
「天才! オノレン天才!!」堺がバチバチクソでかい拍手をする。「いい子ダネ!!」
「これで俺たち優勝できんじゃね?」
「おれ歌わないから頑張ってよおまえら」
「この裏切り者ー!!」
 戸佐が叫ぶのがうるさいので無言で口を塞いだら、マジで大焦りした様子で「それは違うそれは違う」と言われた。命の危機を感じたらしい。さっきから四方八方から突き刺さる女子の視線に気づけよ。
 たぶん戸佐のことを噂で耳にしていたのだろう、憧れのキラキラした視線がだんだんと澱んでいく。「なんか違う気がする……」って女子の心の声が聞こえてきそう。うーん、まあ、顔がいいだけのクソガキだからな……戸佐は……。
「これだから残念なイケメンは……」
 堺が呟くのに同意して頷いた。
「え何の話?」きょとん、と目を丸くする。
「戸佐ってマジで顔はいいよねって話」
「えっ急に褒めてくれんの何? 見直したのかレンコンやろう~」
 戸佐がによによしながら肩を組んでくる。すごいウザいです。
「それ以外がクソだねって話だヨ!」
「ぐはァ」
 堺がガンキマりの黒目でサムズアップする。戸佐がよろよろとおれにもたれかかってきた。相当なダメージを受けたらしい。フォローしようとしたけれど、顔もきれいで性格も悪くないし友だちとして付き合うのにはいいけど、たしかにそれ以外は基本的にクソというか、最悪寄りというか……。
 戸佐と付き合える女子がいる可能性を考えると……うーん……結構姉御系の人しか思い浮かばないしな……。
「堺……頼むから、もうちょっとオブラートに包んでやってよ……」
「おまえが一番傷えぐってるんだよ……」
「え、ごめん?」
 戸佐がうううう、と耳元で呻る。堺が肩をすくめた。
 おれは隣の列で女子からわあきゃあ言われている一颯のつやつやした髪の毛におおわれた後頭部を見ながら、ポケットのなかであっつあつになったカイロをぎゅっと握りしめた。
 戸佐や境に、緊張しているのかと聞かれなくて助かった。めちゃくちゃに緊張してて心臓もさっきから動きがおかしい。人に言われるとどうしても意識してしまうから、深呼吸して、自分の奥底に沈める。
 ――さあ、勝負だ。
 ぎゅっと目をつぶった。一颯はまっすぐに前だけ向いたまま微動だにしない。
 負ける気はねえからな、と、片頬だけで笑った。戸佐が「なに笑ってんの?」とノンデリにも言ってきたので一旦肩で首を絞めておいた。