アイドルの君へ伝えたいことー配信アイドルの僕が、本物のアイドルに恋をした—

出た瞬間、英くんは僕の腕を掴んで、中華料理屋の狭い路地に連れていかれた。

 急な言動に僕は思わず、「ぎょ!」と変な声が出た。

「言えよ、ちゃんと」

「え? なにを?」

 英くんが僕の手を強く握って、吐息も感じるほどの顔の近さに僕は自分の手で握り拳を作った。

 どういう顔をしていいのか分からずに、僕の頭はショートしてしまい、使えなくなってしまった。

「分かってんだよ、悠生が僕といてもいいのかなって思ってんでしょ」

「…な、なんでそれを」

 僕の思考を先読みしていたのか読み取られてしまっていた。

「もうね、悠生の考えることはお見通しなんだよ。中華丼食べている時にだって、俺のことを見てたよね。多分それって、女子大学生がいて、俺を見てたでしょ。それで悠生。僕でいいのかなって考えてるんだろうなって思って黙ってた。当たりでしょ?」

 英くんは眉を顰めて、顔を歪めていた。

 僕は英くんのこんな顔を見たい訳ではないのに。

 僕の言動で英くんは苦しんでいる。

 英くん、ゴメン。

 全部、英くんの言っている通りだった。

 僕は英くんに隠し事はできない。

「そ、そうだよ。悪い? だって、僕は英くんと違くて、日陰にいるような存在なんだよ。僕と英くんじゃいる世界違うんだよ」

 僕は目の前にいる英くんに顔を逸らして、唇を噛みしめた。

 英くんは何も言わずに下を向いてから、顔を上げた。

「…悠生。何回も言ってるけど、俺は悠生が必要。それは悠生が好きだからだよ。分かってる?」

 英くんから思いがけない言葉が出てきて、僕は目が点になる。

「…好き? 僕のこと?」

「そう。今だって、抱きしめてキスしたいって思ってるんだよ、俺」

 首を触りながら、英くんは照れくさそうに言う。

「え? え?、え??」

 僕は何度も英くんに確認する。

「僕のことが好き?」

「うん、そう」

 英くんは当たり前のように頷く。

 自分の感情がまだ追いついていない。

 必要って言われただけで舞い上がっていたのに。

 僕を好き?

 え? 幻でも見てるのか。

 目の前にいる英くんに瞬きをして、僕の瞳が捕らえる。

 二人は向き合ったまま、見つめ合った。

 お互いの世界にいて、誰からもこの空間は奪われたくない。

 このまま、世界が止まればいいのに。

 僕の鼓動は止まらずに、二人の想いは空気だけで分かった。

 好き…って。

 その時、コロンと何か転がる音がした。

 すると、先ほど中華料理屋にいた女子大学生数人が僕たちを見て、じっと眺めていた。
   
 その後、女子大学生数人は何も言わずに立ち去った。

「だ、大丈夫かな?」

 僕は女子大学生数人の背を見つめたまま、声を発した。

 すぐそれに感づいて、英くんは声を出した。

「…大丈夫だよ。あの子らは。写真も撮らなかったし、人との距離感を大切にしてる」

 確信を持った言い方をした英くんに僕は首を傾げる。

「なんで分かるの?」

「分かるよ、アイドルやってると分かるもんだよ」

「ふーん、そうなんだ」

 僕は配信での自称アイドルなので、現実世界での人との距離感が分からない。

 アイドルでもオンラインと現実じゃ違うんだな。

 僕は現実に引き戻されて、女子大学生数人がいなくなったのにそのまま顔を向けていた。

「もう、この話は終わり。ねぇ、俺のこと見てよ」

 僕の顔を英くんの両手が包み込む。

「あ、うん」

 なんだかさっきまでの熱気が冷めて、冷静になった。

「…なんだ、もう…、ま、いいや」

 僕の顔から離れて、舌打ちをした。

 そんなにさっきの続きをしたかったのか。

 いやいや、なんで僕がそんなこと考えてるの。

 僕がしてほしかった?

 その続きって、いやいや……僕はもう……