目をくれたあなたへ





「ねえ」




暗闇。
匂いも、
感触も、
味もない。


―――虚無。



地面があるのかも分からない場所で、

ひとりの少年が振り返った。


眼球はなく、真っ黒な空洞が二つある。

しかし肋骨が花開いた胸の中には大きな目があった。

その目の中には何かが、見える。


少年が差し出した両手には、眼球が二つ。



「返すよ」

「もう、いいの?」



少年は頷く。

真っ黒な空洞が、覗いていた。

両手を差し出すと、少年は眼球を、そこに落とす。


パツン



何も見えなくなった暗闇の中で、

真っ黒な空洞の視線を感じた。



背中が粟立つ。

息ができない。

足場が不安定に感じる。



声は耳元で、聞こえた。





「今、あなたには、何が見えていますか?」





瞬きの音が、聞こえた。