夏色のキャンバス

 その後に文化祭があったが、生徒会役員として校内を巡回していたら、いつの間にか終わっていた。文化祭の後には期末テストがあり、それも終わると冬休みになった。

 昨年の冬休みを思い出して、海斗と二人で集まろうかという話をしていたが、優は僕達に遠慮したのか、「四人で集まるのはやめておこう」と言われ、年末は二人で過ごすことになっていた。

「今年は、初詣に行く?」

「うーん……どうだろう? 雪が降らなかったら、近くの神社に行ってみる?」

「そうだね」

 二人で除夜の鐘を聞きながら、新年を迎えるのもいいかもしれない……そう思っていたが、十二月三十一日に夏祭りに行った時の神社で待ち合わせをしたら、たくさんの人がいて驚いた。

「すごい人だね」

「こんなに人がいるとは思わなかったよ」

 二人でお詣りの列に並ぶと、お汁粉のいい匂いが漂ってきた。

「美味しそうだね」

「うん。後で食べよっか」

 三十分くらい並ぶと、順番が回ってきて僕達はお賽銭箱に小銭を投げ入れると、両手を合わせた。

(この先も、ずっと海斗と一緒にいられますように)

 お願いごとをしていたら、除夜の鐘が鳴った。

「あけましておめでとう、葵」

「あけましておめでとう」

「何をお願いしたの?」

「内緒。海斗は?」

「二人とも志望校に受かりますようにって」

「そうだ。来年は受験勉強か……遊びに行ったりとか、出来ないかもね」

「うん。でも、息抜きも必要だと思うし、たまには遊びに行こ」

「そうだね。海斗、お汁粉食べに行かない?」

「うん……その前に、ちょっとこっち来て」

「うん?」

 海斗は僕の手を握ると、引っ張って夏祭りの時に告白された場所まで連れて行かれた。

「あのね……」

 初詣に来ただけなのに、海斗に手を握られただけでドキドキしていた。

「うん」

 海斗の真剣すぎる表情に、もしかして別れを切り出されるのかな……と、不安が過った。

「これ……」

 海斗はポケットから箱を取り出すと、僕に手渡した。

「重たいかなって、思われるかもしれないって思ったんだけど、どうしても渡しておきたくて……」

 箱を開けると、中にはペンダントが入っていた。ペンダントトップには石がついている。

「もしかして、これって……」

「こ、婚約指輪の代わりのつもり……これだったら、普段から身につけていられると思うし」

「誕生石?」

「うん。葵の誕生石のアクアマリンがついてるよ」

「ありがとう……一生、大切にする」

 僕は嬉しすぎて、泣きそうになっていた。

「結婚指輪は、別に作るからプロポーズさせてね」

「……うん!」

 僕は涙を堪えると、笑って海斗に答えた。

「ありがとう、海斗。好きだよ」

「愛してる、の間違いじゃない?」

「好きだし、愛してる」

 そう言った僕の唇に、海斗は優しいキスをした。






                           おしまい