夏色のキャンバス

 10月30日にプレゼント交換するプレゼントを買うと、31日の放課後に生徒会室へ集まってプレゼント交換をした。それぞれ持ち寄ったプレゼントを棚の上に置くと、山田先輩がクジの入った箱を机の上に置いた。

「今、プレゼントに番号をふったから、この箱から紙を一枚引いてみてくれ」

 森崎先輩に言われて僕が箱から紙を取り出すと、紙には「3」と書かれていた。

「僕のは……優のプレゼントか。何だろ?」

 包み紙を開けると、それは雪の結晶マークが入った手袋だった。

「うわっ、暖かそう。しかも、手袋したままスマホいじれるやつだ」

「何となく、葵をイメージして買っちゃったから、葵が引いてくれてよかったよ」

「サイズも、フリーサイズって書いてあるけどピッタリだよ。伸縮性のあるやつなんだ?」

「うん。誰に当たってもいいようにって思って」

 僕が優のプレゼントを一番に引いてしまったので、山田先輩は残念そうだった。

「沢田君も、引いてみてください」

「俺のは、『1』だ……海斗のか。オルゴール?」

「うん。好きな曲を作れるみたい」

 優はオルゴールを手に取ると、眉を顰めていた。

「何というか……聞いてると、切なくなってくるな」

 入ってた曲は流行りのJ-POPだっが、オルゴールの音色は寂しげだった。

「曲を変えてみてよ」

「いや……俺はこういうの、疎くて」

「優、俺が設定しようか?」

 山田先輩が優にそう言うと、優は戸惑っていた。

「えっ?!」

「やめとく?」

「いえ……手間じゃなければ、お願いします」

「オッケー、任しといて」

「次は、森崎先輩引いてください!」

 僕の言葉に驚いていた森崎先輩だったが、しばらくすると箱の中に手を入れてくじを引いていた。

「……えっと、『2』だ。葵のかな」

「はい!」

「なんだ、これは……」

 先輩は、包み紙からぬいぐるみを取り出すと眉根を寄せていた。

「これは軟体動物Threeです。揉んでると、疲れが取れますよ」

「顔が……不思議な顔をしているんだな」

「ええ。ナマケモノらしいんですが……癒やされませんか?」

「すまない。ナマケモノは好きになれないかもしれないが、大切な思い出として取っておくよ」

 森崎先輩は、ナマケモノのぬいぐるみが苦手だったのか、あまり嬉しそうではなかった。僕が落ち込んでいると、海斗が言った。

「森崎先輩、良かったら僕のプレゼントと交換しませんか?」

「え?」

「俺は葵からのプレゼントだったら、なんでも嬉しいですし、そのナマケモノも可愛らしいと思います」

「これが、可愛い……分かった。これは、海斗に譲ろう」

「山田先輩、俺が先に引いてもいいですか?」

「いいよ」

 海斗が箱から紙を取り出すと、紙には「5」と書かれていた。

「俺のは……山田先輩のプレゼントか」

「あっ。それは……」

「もしかして、砂時計?」

 山田先輩のプレゼントは、棚の上に飾るようなオブジェだった。ミニチュア版の時計塔が左側にあり、それにくっつくような形で右側に砂時計がついていた。

「おしゃれですね」

「何となく、思い出に残ればいいなって思って……楽しい時間は、あっという間だし、過ぎてしまった時間は取り戻せないけど、これを見て思い出した時に、少しでも癒やされればいいかなと思って」

「先輩も、僕達と過ごした時間を楽しいと思ってくれていたんですね」

「当たり前だろ」

 山田先輩がそう言ったところで、森崎先輩と海斗はプレゼント交換の交換をしていた。

「大切にするよ」

「お、おう」

 余ったプレゼントは森崎先輩のもので、もらっていないのは山田先輩だけだった。

「じゃあ、俺のは廉のプレゼントだな」

「いやっ、それは……」

 山田先輩がプレゼントの包み紙を開けると、それは参考書だった。

「すまない。プレゼント交換の意味を分かっていなかった。買い直すよ」

「廉、らしいな」

 参考書の他に、書きやすい四色ボールペンが入っていた。

「俺は気に入ったよ、ありがとう」

 山田先輩が森崎先輩にそう言うと、森崎先輩は顔を赤らめていた。

「よかった。俺も、大切にする」

 二人の雰囲気に、もしかしてと思ってると海斗が僕の服の裾を引っ張って言った。

「行こうか」

 海斗の声に頷いた僕は、優と一緒に生徒会室を出た。廊下に海斗の声が響く。

「いい感じじゃない?」

「海斗も、そう思う?」

「うん」

「上手くいくといいね」

 そんな事を言い合いながら、僕達は廊下を歩いていった。