夏色のキャンバス

 それから三日後に、生徒会発足のお知らせが職員室の前にある掲示板に貼り出された。生徒が職員室へ来ること自体あまりないので知る人は少なかったが、活動は週に何回かあり、今日は顔合わせということで、生徒会室へ集まることが決まっていた。

 放課後に生徒会室へ行くと、僕と海斗君、それから優と森崎先輩がすでに来ていた。それ以外に生徒が一人座っていたが、僕が席に着くと同時に森崎先輩が立ち上がり、全員に対して挨拶を始めた。

「生徒会役員の仕事に応じてくれて、ありがとう。感謝してもしきれない。一年間という短い期間ではあるが、みんなと仲良くやっていきたい……よろしく頼む。それと、彼は私から生徒会副会長をお願いした三年生の山田君だ」

 森崎先輩は眼鏡のブリッジを押し上げると、山田先輩がいる方を見た。

「こんにちは。山田裕介って言います。生徒会は初めてなので、よろしくお願いします」

 笑うと、糸みたいになる目が印象的な山田先輩は、ものすごくいい人そうだった。きっと、森崎先輩に騙されてここへ連れてこられたに違いない……そんな風に思ったのは、僕だけじゃないだろう。

「お前ら。今、失礼なこと考えただろ?」

「まさか、そんなことはありませんよ。それより、山田先輩は、何部なんですか?」

「元サッカー部。足をケガしてしまってね。もう出場出来ないんだ。だから、教室で一人ぼーっとしていたら、廉が声掛けてくれて。正直、やる気はなかったんだけど気晴らしになればいいかなと思って……あんまりちゃんとした理由じゃなくて、ごめん」

「なんか、すみません。そんなことだとは思わなくて、余計なことを……」

「いいんだよ。何でも聞いて」

 そう言った先輩は、僕の頭を撫でていた。

「あの、撫でないでいただけますか?」

 僕の隣で山田先輩の手を掴んでいた海斗君は、僕の頭から先輩の手を引き剥がすと、先輩を睨んでいた。

「優しい言葉で、葵を惑わさないでいただけますか?」

「いや、僕は何も……ふぅん、そっか」

 山田先輩は何かに納得したのか、僕達を見ると微笑んでいた。

「若いっていいね!」

「いや、山田先輩も十分若いでしょ?!」

 海斗君のツッコミに、山田先輩や優だけでなく、森崎先輩も笑っていた。

「今日集まってもらったのは、一年間の活動についてだ。これから予定が書かれた冊子を配る」

「冊子?」

 優の驚きをスルーした森崎先輩は、素早く冊子を配ると中を確認するようにと言った。

「えっ、これ全部?」

 僕の言葉に、森崎先輩は曖昧に微笑んだ。

「これは、昨年度に私がこなしていた活動と以前の活動報告書をまとめたものだ。聞いていると思うが、昨年は文化祭まで生徒会長が一人で生徒会の業務をこなしていた。今年は四月から役員が集まってくれて嬉しく思う」

「うわっ、素直に嬉しいって言う先輩が怖い」

 海斗君の呟きに、森崎先輩の隣に座っていた山田先輩が言った。

「廉は、誤解されやすいけど基本的にいい奴だからね。頼まれたら断れないんだよ。廉は家の事情で学年順位は落とせないのに、生徒会の仕事まで引き受けちゃって……見てらんなくて、昨年の文化祭から少しずつ手伝ってたんだ」

「先輩。僕、先輩のこと誤解してました」

「俺も協力します」

 優の言葉に、海斗君も続けて言った。

「分かった、俺もやるよ」

 かくして三年生二人、二年生三人の生徒会が発足したのであった。