夏色のキャンバス

 放課後になると、担任の白石先生に呼ばれて、僕は体育祭予行演習の片づけをしていた。

「悪いな、染谷」

 運悪く先生に捕まってしまった僕は、白石先生と話しながらカラーコーンを片づけていた。カラーコーンとカラーコーンを繋ぐコーンバーを片づけ終えると、等間隔に置かれているカラーコーンを重ねながら端に集めて、後から来た委員会の人に倉庫へ片づけてもらう。

「あっつ……」

 熱中症になりかけた後に照りつける日差しはキツかった。西日とはいえ、日光は日光だ。優しくない日差しに、僕は太陽を睨んだ。

「大丈夫?」

 聞こえてきた声に振り返れば、そこには高梨海斗がいた。

「うん。えっと、その……さっきは、ありがとう。助かった」

「たまたま、持ってただけだから」

「そんなに具合悪そうだった?」

「いや、えっと実は……染谷君が、こっち見てたから気になって見てたんだ」

(何で僕が見てたことに気がついてんだ? 何か恥ずかしっ……)

「いや、特に意味があったわけじゃなくて。ごめん。女子が騒いでたから、つい見ちゃって……」

「そうだよね。変なこと言ってごめん」

「ううん」

 そんなことより、気になってたのはスマホの壁紙についてだったが、聞けるような雰囲気ではなかった。

「あのさ、高梨君……」

「おーい、終わったかぁ? みんな、ありがとう」

 その時、白石先生が来て倉庫に鍵を掛けようとしていた。

「すみません、これが最後です」

 僕が慌ててカラーコーンを倉庫へ持っていくと、白石先生は満面の笑みを浮かべていた。

「ありがとう、染谷」

「いえ……」

「二人は仲良かったんだな?」

「え?」

 急に担任の白石先生にそう言われて、僕は頭が真っ白になった。

(仲良かったって、なに?)

 焦った僕は、何も言えずに口を魚のようにパクパクさせてしまっていた。

「先生、今のは問題発言ですよ。俺と染谷君は、そんな関係じゃありません」

「ごめん。そんなつもりはなかったんだけどなぁ……」

「染谷君、行こう」

「うん」

 下駄箱に置いてあった鞄を取りに戻ると、高梨君は僕のことを見ながら言った。

「なんか、ごめんね」

「どうしたの?」

「僕がいたばっかりに、変なこと言われちゃって」

「ううん、全然気にしてないよ」

「そう? それなら良かったけど。俺、入学初日から悪目立ちしちゃったから、友達があんまりいないんだよね。だから、その……」

「友達になろう、高梨君」

「いいの?」

 僕が先に友達になろうというと、高梨君は口元を抑えて感激していた。

(そんなに感激することだろうか……)

「うん。()()だよ」

 僕はあえて友達という部分を強調して言ったが、彼の耳には届いていないようであった。