シリウスが、背後に控えるライアンへ指示を出す。しばらくして、騎士に支えられた女性――シスター・クラーラが姿を現わした。
「先ほど聖女離宮を捜索したところ、地下牢にて数名の女性および子どもを発見。すぐさま騎士団にて保護いたしました。彼女は地下に幽閉されていた者の一人です」
シリウスに目配せされたシスターは、小さく頷き、口を開いた。
「私達は、ある日突然何者かにさらわれ、気が付けば聖女離宮にいました。怯え、戸惑う私達に、聖女さまがこう、おっしゃったのです――」
あんたたちは、あたしが『聖女』でいるためのエサなの。
異能持ちは、力を。
女と子どもは、若さと美しさを。
神に仕えるシスターは、敬虔さと慈愛の心を差し出しなさい。
あたしが全部、奪ってあげるから――と。
あまりのおぞましさ、貪欲さに、その場にいる全員が戦慄した。
泰然としていた陛下でさえ「なんということだ……」と狼狽える。
ことの起こりは数日前、シスター・クラーラの失踪を知った私は、真っ先にミーティアを疑った。
聖女離宮で転んだ少年の傷を癒したとき、癒しの力が明らかに弱まっていたのを思い出したからだ。
異能は体力などと同じく、加齢や病によって衰えていく。
時を止められないのと同じように、老いと異能の減退をとめる術はない。
ミーティアが国一番の『癒し手』でいるためには、エスターから力を奪ったように、他人から盗むしかない。
しかし癒しの能力者は数が少ない上に、癒し手ばかりが失踪したら、まっさきに犯人として疑われてしまう。
そこで思いついたのが、若い女性や子どもから『若さ』を盗み、加齢による衰えという自然の摂理に逆らうことだった。
シスター・クラーラは、下町で子供が攫われる現場に居合わせてしまい、口封じのため囚われてしまったという。
昔からミーティアは、私から奪ったものは全て、自室の鍵のかかる宝箱にしまっていた。その癖は今も健在のようで、攫った人々は全員、聖女離宮の宝物庫に閉じ込めていた。
(聖女離宮を密かに散策していたのが、こんな所で役に立つなんてね。……それにしても、ミーティア、あなた本当に、変わっていないのね)
私は憐れみの目を、元妹へ向ける。
彼女は唇を噛みしめ、昔と同じく、恨みがましい目で周囲を睨んでいた。
「過ぎた強欲で、己の身を滅ぼしたな」
シリウスはミーティアを正面から見すえ、嘘だらけの『聖女』の仮面を剥ぎ取った。
「もう終わりだ。――『罪人』ミーティア・ロザノワール」
「先ほど聖女離宮を捜索したところ、地下牢にて数名の女性および子どもを発見。すぐさま騎士団にて保護いたしました。彼女は地下に幽閉されていた者の一人です」
シリウスに目配せされたシスターは、小さく頷き、口を開いた。
「私達は、ある日突然何者かにさらわれ、気が付けば聖女離宮にいました。怯え、戸惑う私達に、聖女さまがこう、おっしゃったのです――」
あんたたちは、あたしが『聖女』でいるためのエサなの。
異能持ちは、力を。
女と子どもは、若さと美しさを。
神に仕えるシスターは、敬虔さと慈愛の心を差し出しなさい。
あたしが全部、奪ってあげるから――と。
あまりのおぞましさ、貪欲さに、その場にいる全員が戦慄した。
泰然としていた陛下でさえ「なんということだ……」と狼狽える。
ことの起こりは数日前、シスター・クラーラの失踪を知った私は、真っ先にミーティアを疑った。
聖女離宮で転んだ少年の傷を癒したとき、癒しの力が明らかに弱まっていたのを思い出したからだ。
異能は体力などと同じく、加齢や病によって衰えていく。
時を止められないのと同じように、老いと異能の減退をとめる術はない。
ミーティアが国一番の『癒し手』でいるためには、エスターから力を奪ったように、他人から盗むしかない。
しかし癒しの能力者は数が少ない上に、癒し手ばかりが失踪したら、まっさきに犯人として疑われてしまう。
そこで思いついたのが、若い女性や子どもから『若さ』を盗み、加齢による衰えという自然の摂理に逆らうことだった。
シスター・クラーラは、下町で子供が攫われる現場に居合わせてしまい、口封じのため囚われてしまったという。
昔からミーティアは、私から奪ったものは全て、自室の鍵のかかる宝箱にしまっていた。その癖は今も健在のようで、攫った人々は全員、聖女離宮の宝物庫に閉じ込めていた。
(聖女離宮を密かに散策していたのが、こんな所で役に立つなんてね。……それにしても、ミーティア、あなた本当に、変わっていないのね)
私は憐れみの目を、元妹へ向ける。
彼女は唇を噛みしめ、昔と同じく、恨みがましい目で周囲を睨んでいた。
「過ぎた強欲で、己の身を滅ぼしたな」
シリウスはミーティアを正面から見すえ、嘘だらけの『聖女』の仮面を剥ぎ取った。
「もう終わりだ。――『罪人』ミーティア・ロザノワール」


