「さぁ、お隣の画廊へ参りますわよ~!」
引きつった聖女の笑みを浮かべ、必死に愛嬌を振りまくミーティア。
その姿が、私の目にはひどく憐れに映った。
次にご一行が向かったのは、宮廷画家の絵が飾られた鑑賞部屋だった。
煌びやかな絵画の数々に、市民が感嘆の声をあげる。
「あっ! おっきなわんちゃん!」
母親と手を繋いでいた男の子が、突然絵画に向かって走り出した。
待ちなさい! という母親の声に驚いたその子は、すってんころりん。転んで膝を擦りむき、大声で泣き出した。
それを見ていたミーティアが、薄ら寒い聖女の笑みをたたえ、少年の膝に手をかざした。
ぽうっと手元が淡く発光したあと、傷がゆっくりと塞がっていく。
(あれ、治りが遅いような……?)
気のせいかな?と私は首をかしげる。
すっかり元気になった少年が、笑顔で飛び跳ねた。
「ありがとうございます、聖女さま。ほらお前もお礼を言いなさい」
少年はペコリと頭を下げ「聖女さま、ありがとうございます。お礼にこれあげる」と言って、ガラス玉を手渡そうとした。
その瞬間――。
「さわんないでよ!」
ミーティアがいきなり叫び、少年の手を思いっきり叩いた。
パシンッという乾いた音が画廊に鳴り響く。
「やだ、サイアク。あぁ、汚い。……ったく、なんであたしが、下民相手にこんなこと」
ヤバッという顔で、ミーティアが口をつぐむ。ようやく失言に気付いたらしい。
だが、とき既に遅し――。
「私、帰らせて頂きます」
「あぁ、俺も。期待したのが馬鹿だった」
「結局、聖女様は噂どおり。僕たちのことを見下してるんだ」
市民が足早に去って行く。
「あっ、お待ちになって! 違うの! 今のは違うんですのよ!」
ミーティアの呼び止めに応える者はいない。
きっと明日の城下町では、聖女が子どもの手を払いのけ、侮辱した話題で持ちきりだろう。
「帰りましょうか」
「ええ、そうですね」
見物に訪れていた令嬢たちも次々に去って行く。私もその場を後にした。
ちらりと振り返ると、ミーティアがドレスを両手でにぎりしめ唇を噛んでいる。
「なんでよ……どうしてこうなったの!? どうしてあたしばっかり、こんな目に遭うのよ!!」
ヒステリックな叫び声は、屋敷を出てもなお響き渡っていた。
引きつった聖女の笑みを浮かべ、必死に愛嬌を振りまくミーティア。
その姿が、私の目にはひどく憐れに映った。
次にご一行が向かったのは、宮廷画家の絵が飾られた鑑賞部屋だった。
煌びやかな絵画の数々に、市民が感嘆の声をあげる。
「あっ! おっきなわんちゃん!」
母親と手を繋いでいた男の子が、突然絵画に向かって走り出した。
待ちなさい! という母親の声に驚いたその子は、すってんころりん。転んで膝を擦りむき、大声で泣き出した。
それを見ていたミーティアが、薄ら寒い聖女の笑みをたたえ、少年の膝に手をかざした。
ぽうっと手元が淡く発光したあと、傷がゆっくりと塞がっていく。
(あれ、治りが遅いような……?)
気のせいかな?と私は首をかしげる。
すっかり元気になった少年が、笑顔で飛び跳ねた。
「ありがとうございます、聖女さま。ほらお前もお礼を言いなさい」
少年はペコリと頭を下げ「聖女さま、ありがとうございます。お礼にこれあげる」と言って、ガラス玉を手渡そうとした。
その瞬間――。
「さわんないでよ!」
ミーティアがいきなり叫び、少年の手を思いっきり叩いた。
パシンッという乾いた音が画廊に鳴り響く。
「やだ、サイアク。あぁ、汚い。……ったく、なんであたしが、下民相手にこんなこと」
ヤバッという顔で、ミーティアが口をつぐむ。ようやく失言に気付いたらしい。
だが、とき既に遅し――。
「私、帰らせて頂きます」
「あぁ、俺も。期待したのが馬鹿だった」
「結局、聖女様は噂どおり。僕たちのことを見下してるんだ」
市民が足早に去って行く。
「あっ、お待ちになって! 違うの! 今のは違うんですのよ!」
ミーティアの呼び止めに応える者はいない。
きっと明日の城下町では、聖女が子どもの手を払いのけ、侮辱した話題で持ちきりだろう。
「帰りましょうか」
「ええ、そうですね」
見物に訪れていた令嬢たちも次々に去って行く。私もその場を後にした。
ちらりと振り返ると、ミーティアがドレスを両手でにぎりしめ唇を噛んでいる。
「なんでよ……どうしてこうなったの!? どうしてあたしばっかり、こんな目に遭うのよ!!」
ヒステリックな叫び声は、屋敷を出てもなお響き渡っていた。


