ウォルス伯爵の裁判から早数週間。城下は王位争いの話題で持ちきりだった。
新聞では連日、シリウスとメイナードの人柄や政策が報じられている。
【王都広場でシリウス殿下が演説。――『平民や異能力のない人にも開かれた社会を目指す』】
【人気高まるシリウス殿下、陰りが見えるメイナード殿下。王位争いの明暗分かれる】
裁判の日を境に、王子二人の立場が逆転した。
シリウスは持ち前のリーダーシップと才覚で、新たな法制度や開かれた社会づくりに着手。公務の合間に各地で演説を行い、視察や慰問も精力的に行っているらしい。
また、アストレア監獄の看守が買収された件や、カルミア侯爵の汚職発覚などを受け、各方面の人事も大きく見直すようだ。
民の声に耳を傾けるシリウスの真摯な姿勢に、王室への国民感情もやわらぎ、革命の気配は街から消え失せていた。
シリウスへの期待が高まる一方、メイナードとミーティアの人気は急落。
特にミーティアは『聖女』という清らかなイメージを打ち出していた分、国民の落胆はすさまじかった。
巷では、メイナード殿下を堕落させた悪女、とまで囁かれている。
小説で、ハッピーエンドを迎える時期になっても、現実のミーティアとメイナードが結婚する予兆はない。
(もうそろそろ、潮時ね)
ここまで悪評が広まった以上、ミーティアが王妃として幸せになる道は、もはや残されていない。
私が直接手を下さなくても、元妹は勝手に不幸になる。
落ちぶれていく様を見てやろうという意地悪心は、不思議と湧かなかった。
ただ一点、エスターの無実を晴らせないのが心残りだけれど……。
追い詰められた獣は何をするか分からない。
これ以上刺激して正体を見破られては大変だ。
(今日のお茶会が終わったら、怪しまれない程度にミーティアから距離を取りましょう)
シリウスが正式に王位継承者になれば、メイナードは廃嫡され僻地へ送られる。恐らく婚約者であるミーティアと両親も、王都に留まることは出来ないだろう。
エスターの無実を訴えるのは、それからでも遅くない……。
そんなことを考えながら、私は聖女離宮へ足を踏み入れた。
今日もいつもの茶会かと思いきや、何やら変わった『催し』をしていた。
「はぁい、みなさま。こちらが遊戯サロンですわ。わたくしたち貴族は、ここで盤上遊戯やカード遊びをするんですのよぉ~」
先頭に立ったミーティアがバスガイドさん風に扇子を振り、館内を順に練り歩く。その後ろには、王都民が一列に並んで歩いていた。
え、これどういう遊び? 見学ツアーごっこ? と首をかしげる私に、顔見知りの令嬢がこそっと耳打ちする。
「市民を聖女離宮に招いて、ご機嫌とってるのよ。この後は豪華な晩餐をふるまうんですって」
「あんなに平民を馬鹿にしていたのに、聖女さまも落ちぶれたものね」と、別の令嬢が囁く。
集まった令嬢達の態度は冷めたもので、取り巻きの中に、ミーティアの味方は一人もいないようだった。
急に関係を断つのは不自然だから、みんな私と同じように、少しずつ疎遠になる作戦みたいだ。
新聞では連日、シリウスとメイナードの人柄や政策が報じられている。
【王都広場でシリウス殿下が演説。――『平民や異能力のない人にも開かれた社会を目指す』】
【人気高まるシリウス殿下、陰りが見えるメイナード殿下。王位争いの明暗分かれる】
裁判の日を境に、王子二人の立場が逆転した。
シリウスは持ち前のリーダーシップと才覚で、新たな法制度や開かれた社会づくりに着手。公務の合間に各地で演説を行い、視察や慰問も精力的に行っているらしい。
また、アストレア監獄の看守が買収された件や、カルミア侯爵の汚職発覚などを受け、各方面の人事も大きく見直すようだ。
民の声に耳を傾けるシリウスの真摯な姿勢に、王室への国民感情もやわらぎ、革命の気配は街から消え失せていた。
シリウスへの期待が高まる一方、メイナードとミーティアの人気は急落。
特にミーティアは『聖女』という清らかなイメージを打ち出していた分、国民の落胆はすさまじかった。
巷では、メイナード殿下を堕落させた悪女、とまで囁かれている。
小説で、ハッピーエンドを迎える時期になっても、現実のミーティアとメイナードが結婚する予兆はない。
(もうそろそろ、潮時ね)
ここまで悪評が広まった以上、ミーティアが王妃として幸せになる道は、もはや残されていない。
私が直接手を下さなくても、元妹は勝手に不幸になる。
落ちぶれていく様を見てやろうという意地悪心は、不思議と湧かなかった。
ただ一点、エスターの無実を晴らせないのが心残りだけれど……。
追い詰められた獣は何をするか分からない。
これ以上刺激して正体を見破られては大変だ。
(今日のお茶会が終わったら、怪しまれない程度にミーティアから距離を取りましょう)
シリウスが正式に王位継承者になれば、メイナードは廃嫡され僻地へ送られる。恐らく婚約者であるミーティアと両親も、王都に留まることは出来ないだろう。
エスターの無実を訴えるのは、それからでも遅くない……。
そんなことを考えながら、私は聖女離宮へ足を踏み入れた。
今日もいつもの茶会かと思いきや、何やら変わった『催し』をしていた。
「はぁい、みなさま。こちらが遊戯サロンですわ。わたくしたち貴族は、ここで盤上遊戯やカード遊びをするんですのよぉ~」
先頭に立ったミーティアがバスガイドさん風に扇子を振り、館内を順に練り歩く。その後ろには、王都民が一列に並んで歩いていた。
え、これどういう遊び? 見学ツアーごっこ? と首をかしげる私に、顔見知りの令嬢がこそっと耳打ちする。
「市民を聖女離宮に招いて、ご機嫌とってるのよ。この後は豪華な晩餐をふるまうんですって」
「あんなに平民を馬鹿にしていたのに、聖女さまも落ちぶれたものね」と、別の令嬢が囁く。
集まった令嬢達の態度は冷めたもので、取り巻きの中に、ミーティアの味方は一人もいないようだった。
急に関係を断つのは不自然だから、みんな私と同じように、少しずつ疎遠になる作戦みたいだ。


