「これは、私がウォルス伯爵から相談を受け、秘密裏にカルミア侯爵を調査していた結果報告書です。――読み上げよ」
シリウスに命じられ、書記官が内容を高らかに読み上げた。
傍聴席に座る、あまたの貴族諸侯、有力者、市民の前で、カルミア侯爵の犯した悪行が明らかになっていく。
領民からの不当な税の取り立て、孤児院への寄付金の着服、低賃金での奴隷労役。横領、収賄、裏組織との癒着。
暴かれる罪に、当の本人だけでなく、カルミア侯爵を円卓に入れたメイナードの顔も青ざめていく。
ミーティアは、かろうじて聖女の仮面をかぶり続け、平静を保っている。が、さすがに動揺を隠せないようで、扇子を持つ手が震えていた。
「――以上です」
書記官が席に着く。
ざわつく傍聴席をぐるりと見渡し、シリウスが声高に訴えた。
「ウォルス伯爵は、許されざる罪を犯しました。しかし善良かつ忠義に厚い彼を絶望させ、追い詰めたのは、他でもない。兄上、貴方だ」
シリウスは強い眼差しで兄王子を見上げ、はっきり述べた。
「これは貴方の罪だ――メイナード兄上」
形勢逆転とは、まさにこのこと。
ウォルス伯爵を反逆者として見下していた人々も、今ではすっかり同情しきった様子で裁判の行方を見守っている。
もはやここは伯爵の裁判ではなく。汚職まみれのカルミア侯爵と、それを円卓に加えたメイナード、そして裏から円卓会議の人事を操っていた聖女の罪を問う場になっていた。
「ウォルス伯爵に、どうかお慈悲を!」
ひとりが声をあげると、人々が次々に同調し叫び始める。
「メイナード殿下、お考え直しください!」
「処刑の撤回を!」
「ウォルス伯爵を裁くのなら、カルミア侯爵も断罪すべきです!」
傍聴席から無数の声が放たれる。あまたの嘆願が、嵐となって法廷に吹き荒れる。
なかには嘆願に紛れて、メイナードの責任を問う声と、廃嫡を求める訴え。シリウスの王位継承を叫ぶ者もいる。
「う、うるさい! ここはウォルス伯爵の罪を問う場だ! 静まれ! 静まれッ!!!」
追い詰められたメイナードが、椅子を蹴飛ばして立ち上がり叫ぶ。
「静まれと言っている! 命令を聞けないのであれば、みな処刑だ! 衛兵! ここにいる者達を全員、引っ捕らえろ!」
命を下された衛兵たちが、視線をさまよわせ困惑する。
「何をしている、早くしろッ!」
ひときわ大きくメイナードが吠えた、その時。
ギィ――という重たい音が響き、入り口の扉がゆっくりと開いた。
熱気のこもった室内に、外の空気が流れ込んでくる。
「口を閉ざすのはお前だ、メイナード」
低い、しわがれた声だった。
決して大きい声ではない。が、圧倒的な貫禄を滲ませた声音に、場内が水を打ったように静まり返る。人々は口を閉ざし、固唾を飲んで『その方』を見つめた。
騎士に支えられ、法廷の中央に歩み寄る一人の男性。
「な、なぜ、ここにいらっしゃるのですか。……父上」
病床にいるはずの現国王の登場に、メイナードは驚愕の表情で呟いた。
シリウスに命じられ、書記官が内容を高らかに読み上げた。
傍聴席に座る、あまたの貴族諸侯、有力者、市民の前で、カルミア侯爵の犯した悪行が明らかになっていく。
領民からの不当な税の取り立て、孤児院への寄付金の着服、低賃金での奴隷労役。横領、収賄、裏組織との癒着。
暴かれる罪に、当の本人だけでなく、カルミア侯爵を円卓に入れたメイナードの顔も青ざめていく。
ミーティアは、かろうじて聖女の仮面をかぶり続け、平静を保っている。が、さすがに動揺を隠せないようで、扇子を持つ手が震えていた。
「――以上です」
書記官が席に着く。
ざわつく傍聴席をぐるりと見渡し、シリウスが声高に訴えた。
「ウォルス伯爵は、許されざる罪を犯しました。しかし善良かつ忠義に厚い彼を絶望させ、追い詰めたのは、他でもない。兄上、貴方だ」
シリウスは強い眼差しで兄王子を見上げ、はっきり述べた。
「これは貴方の罪だ――メイナード兄上」
形勢逆転とは、まさにこのこと。
ウォルス伯爵を反逆者として見下していた人々も、今ではすっかり同情しきった様子で裁判の行方を見守っている。
もはやここは伯爵の裁判ではなく。汚職まみれのカルミア侯爵と、それを円卓に加えたメイナード、そして裏から円卓会議の人事を操っていた聖女の罪を問う場になっていた。
「ウォルス伯爵に、どうかお慈悲を!」
ひとりが声をあげると、人々が次々に同調し叫び始める。
「メイナード殿下、お考え直しください!」
「処刑の撤回を!」
「ウォルス伯爵を裁くのなら、カルミア侯爵も断罪すべきです!」
傍聴席から無数の声が放たれる。あまたの嘆願が、嵐となって法廷に吹き荒れる。
なかには嘆願に紛れて、メイナードの責任を問う声と、廃嫡を求める訴え。シリウスの王位継承を叫ぶ者もいる。
「う、うるさい! ここはウォルス伯爵の罪を問う場だ! 静まれ! 静まれッ!!!」
追い詰められたメイナードが、椅子を蹴飛ばして立ち上がり叫ぶ。
「静まれと言っている! 命令を聞けないのであれば、みな処刑だ! 衛兵! ここにいる者達を全員、引っ捕らえろ!」
命を下された衛兵たちが、視線をさまよわせ困惑する。
「何をしている、早くしろッ!」
ひときわ大きくメイナードが吠えた、その時。
ギィ――という重たい音が響き、入り口の扉がゆっくりと開いた。
熱気のこもった室内に、外の空気が流れ込んでくる。
「口を閉ざすのはお前だ、メイナード」
低い、しわがれた声だった。
決して大きい声ではない。が、圧倒的な貫禄を滲ませた声音に、場内が水を打ったように静まり返る。人々は口を閉ざし、固唾を飲んで『その方』を見つめた。
騎士に支えられ、法廷の中央に歩み寄る一人の男性。
「な、なぜ、ここにいらっしゃるのですか。……父上」
病床にいるはずの現国王の登場に、メイナードは驚愕の表情で呟いた。


