騒ぎの翌日――。
逃げ出した囚人は全員捕まり、街は平穏を取り戻した。
だが、ほっとしたのも束の間、王都にさらなる激震が走る。
――混乱のさなか、メイナード殿下が襲撃された。
これから裁判所で、メイナードを襲った反逆者の公開裁判が行われる。傍聴席には、貴族平民問わず、多くの人が集まりごった返していた。
(シリウス殿下、どうか。どうか……ご無事でいてください)
こみあげる不安感と焦燥感に苛まれながら、私は静かに席で始まりを待った。その間にも、人々の囁き声が嫌でも耳に入ってくる。
「駆けつけた騎士の話によると、シリウス殿下が血のついた剣を持っていたそうよ」
「おいおいまさか、反逆者ってのはシリウス殿下なのか?」
「他に誰がいるっていうんだよ。メイナード殿下を一番恨んでいるのは、あのお方だ」
「反逆罪は大罪だぞ……。恩赦でもないかぎり、シリウス殿下は処刑だろうな」
耳障りな雑音が私の心をかき乱す。
込み上げる感情を飲み込むように、私はぐっと拳を握って奥歯をかみしめた。
星空の下を一緒に歩いたあの日、シリウスは『自分を取り戻せた気がする』と晴れやかに笑っていた。だから、きっと大丈夫……。
いよいよ開始時間が迫り、張り詰めた空気が室内に漂い始める。
法廷の中央には被告人席。その向かいには、裁判官となる円卓貴族と王族の座る席が設けられている。それらをぐるりと取り囲むように傍聴席が並ぶ。
定刻を知らせる鐘が鳴る。
それと同時に扉がゆっくり開き、メイナードが姿を現わした。
かたわらには、当然のようにミーティアが寄り添っている。二人とも怪我をしている様子はない。
裁判席の前に立ったメイナードが、高らかに宣言した。
「これより、この私、メイナード・イヴァン・アストレアの命を狙った大罪人の裁きを行う。罪人をここに連れて参れ――!」
直後、姿を現わした『彼』の姿に、人々が一気にざわめく。
私は目の前が真っ暗になった。
艶やかな銀髪、まっすぐ前を見つめる青い瞳。
凜とした佇まいで中央へ歩み寄る、長身の男性。
現れたのは――紛れもない、シリウス殿下その人だった。
これ以上、見ていられない。
私はこらえきれず、両手で顔を覆ってうつむいた。
(変えられなかった……。何も、変えられなかった……っ)
じわりと涙がこみあげる。絶望に打ちひしがれ、嗚咽をかみ殺していた、その時――。
「これより裁判を開始する。被告人カルロス・ウォルス伯爵、前へ」
聞き慣れぬ被告人の名前に、私ははっと顔を上げた。
(シリウス殿下じゃ、ない……?)
逃げ出した囚人は全員捕まり、街は平穏を取り戻した。
だが、ほっとしたのも束の間、王都にさらなる激震が走る。
――混乱のさなか、メイナード殿下が襲撃された。
これから裁判所で、メイナードを襲った反逆者の公開裁判が行われる。傍聴席には、貴族平民問わず、多くの人が集まりごった返していた。
(シリウス殿下、どうか。どうか……ご無事でいてください)
こみあげる不安感と焦燥感に苛まれながら、私は静かに席で始まりを待った。その間にも、人々の囁き声が嫌でも耳に入ってくる。
「駆けつけた騎士の話によると、シリウス殿下が血のついた剣を持っていたそうよ」
「おいおいまさか、反逆者ってのはシリウス殿下なのか?」
「他に誰がいるっていうんだよ。メイナード殿下を一番恨んでいるのは、あのお方だ」
「反逆罪は大罪だぞ……。恩赦でもないかぎり、シリウス殿下は処刑だろうな」
耳障りな雑音が私の心をかき乱す。
込み上げる感情を飲み込むように、私はぐっと拳を握って奥歯をかみしめた。
星空の下を一緒に歩いたあの日、シリウスは『自分を取り戻せた気がする』と晴れやかに笑っていた。だから、きっと大丈夫……。
いよいよ開始時間が迫り、張り詰めた空気が室内に漂い始める。
法廷の中央には被告人席。その向かいには、裁判官となる円卓貴族と王族の座る席が設けられている。それらをぐるりと取り囲むように傍聴席が並ぶ。
定刻を知らせる鐘が鳴る。
それと同時に扉がゆっくり開き、メイナードが姿を現わした。
かたわらには、当然のようにミーティアが寄り添っている。二人とも怪我をしている様子はない。
裁判席の前に立ったメイナードが、高らかに宣言した。
「これより、この私、メイナード・イヴァン・アストレアの命を狙った大罪人の裁きを行う。罪人をここに連れて参れ――!」
直後、姿を現わした『彼』の姿に、人々が一気にざわめく。
私は目の前が真っ暗になった。
艶やかな銀髪、まっすぐ前を見つめる青い瞳。
凜とした佇まいで中央へ歩み寄る、長身の男性。
現れたのは――紛れもない、シリウス殿下その人だった。
これ以上、見ていられない。
私はこらえきれず、両手で顔を覆ってうつむいた。
(変えられなかった……。何も、変えられなかった……っ)
じわりと涙がこみあげる。絶望に打ちひしがれ、嗚咽をかみ殺していた、その時――。
「これより裁判を開始する。被告人カルロス・ウォルス伯爵、前へ」
聞き慣れぬ被告人の名前に、私ははっと顔を上げた。
(シリウス殿下じゃ、ない……?)


