同時刻――。
ドンッという衝撃と爆音で、私は目覚めた。
「――っ、なに!?」
ベッドから飛び起き、外の様子を覗う。夜明けの空にゆらりと黒煙が立ち上っていた。
(まさか、暴動!?)
血の気がサッと引く。
(色々と手は打ったもの、大丈夫……。きっと最悪の未来にはならない)
忙しないノックの後に、ソニアが入ってくる。いつもの侍女服ではなく、動きやすいパンツスタイルだった。
私は寝間着を脱ぎ捨て、手早くドレスを身にまとう。着替えを手伝いながら、ソニアが早口で状況を説明した。
「今しがた、シレーネの密偵から情報が入りました。過激派の革命家が市民を扇動し、街で暴動が起きているそうです」
「やっぱり。だけど想定内よ。暴動はすぐに収まるはず」
「それが……」
ソニアが表情を曇らせる。
「予想以上に、城下は酷い有様になっています」
「……っ! どうして」
「警備が厳重になり、革命家たちは計画を変更したようです。彼らが狙ったのは、アストレア監獄。協力者を潜り込ませ、内部から監獄を破壊。囚人が野に放たれ、街中で暴れているとのこと」
「城下がそんな状況なら、王宮は――」
「かなり混乱しているようです。王族と貴族は宮殿の奥に身を隠し、騎士団が事態の収拾のため奔走しています」
「シリウス殿下は、今どちらに」
「騎士数名に聞いたところ、騎士団は暴動の鎮圧と王族の守護、二手に分かれているようです。城下は騎士団長に任せ、シリウス殿下は精鋭を連れ、メイナード殿下の護衛に向かわれるとのこと」
最悪の事態に、私は息をのむ。
未来はたしかに変わった。
――悪い方向に。
混乱した状況。反乱を起こすには絶好の機会……。
小説のラストシーンと全く同じ。舞台はこれ以上ない程、整っている。
「何も変わらなかった……シナリオの修正力に、勝てなかった……」
「お嬢様?」
窓の外を見やると、至るところで黒煙が上がっている。
「私が余計なことをしたせいで……」
シリウスがメイナードに刃を向ける光景が、頭の中に浮かび上がる。
次に想像したのは、民衆の前に引きずり出される殿下の姿。罵声が飛び交う中、ギロチンの刃が無慈悲に落とされ――。
「――っ」
私は両手で口元を覆うと、その場にしゃがみこんだ。
「私の、せいで……」
「お嬢様のせいではありません。民の暴動は、国民を顧みなかった王侯貴族の怠慢が招いたこと。アストレア監獄の件も、金で買収される腐った役人が内部にいるのが原因です。あなたは何も悪くない」
「…………」
ソニアが私の目の前に膝をついた。
「……お叱りは、あとで受けます」
次の瞬間――パシンッと、私の左頬に衝撃が走る。痛みはなかった。ただ急な出来事に驚いて、顔をあげる。
「お嬢様、しっかりして下さい!あなたが何に悩み絶望しているのか、私には分かりません。ですが――ここで諦めてしまって良いのですか!」
力強いソニアの言葉に、私は目が覚めたように我に返った。
「いいえ……諦めない。私は絶対に、諦めないわ!」
私は立ち上がると、急ぎ手紙をしたためた。
「ソニア、これを急いでシリウス殿下へ届けて頂戴!」
「もちろんです、お嬢様」
手紙を受け取ったソニアは、ほっとした笑みを浮かべたあと、すぐさま表情を引き締め部屋を出て行った。
(シリウス殿下、どうか――ご無事で)
ドンッという衝撃と爆音で、私は目覚めた。
「――っ、なに!?」
ベッドから飛び起き、外の様子を覗う。夜明けの空にゆらりと黒煙が立ち上っていた。
(まさか、暴動!?)
血の気がサッと引く。
(色々と手は打ったもの、大丈夫……。きっと最悪の未来にはならない)
忙しないノックの後に、ソニアが入ってくる。いつもの侍女服ではなく、動きやすいパンツスタイルだった。
私は寝間着を脱ぎ捨て、手早くドレスを身にまとう。着替えを手伝いながら、ソニアが早口で状況を説明した。
「今しがた、シレーネの密偵から情報が入りました。過激派の革命家が市民を扇動し、街で暴動が起きているそうです」
「やっぱり。だけど想定内よ。暴動はすぐに収まるはず」
「それが……」
ソニアが表情を曇らせる。
「予想以上に、城下は酷い有様になっています」
「……っ! どうして」
「警備が厳重になり、革命家たちは計画を変更したようです。彼らが狙ったのは、アストレア監獄。協力者を潜り込ませ、内部から監獄を破壊。囚人が野に放たれ、街中で暴れているとのこと」
「城下がそんな状況なら、王宮は――」
「かなり混乱しているようです。王族と貴族は宮殿の奥に身を隠し、騎士団が事態の収拾のため奔走しています」
「シリウス殿下は、今どちらに」
「騎士数名に聞いたところ、騎士団は暴動の鎮圧と王族の守護、二手に分かれているようです。城下は騎士団長に任せ、シリウス殿下は精鋭を連れ、メイナード殿下の護衛に向かわれるとのこと」
最悪の事態に、私は息をのむ。
未来はたしかに変わった。
――悪い方向に。
混乱した状況。反乱を起こすには絶好の機会……。
小説のラストシーンと全く同じ。舞台はこれ以上ない程、整っている。
「何も変わらなかった……シナリオの修正力に、勝てなかった……」
「お嬢様?」
窓の外を見やると、至るところで黒煙が上がっている。
「私が余計なことをしたせいで……」
シリウスがメイナードに刃を向ける光景が、頭の中に浮かび上がる。
次に想像したのは、民衆の前に引きずり出される殿下の姿。罵声が飛び交う中、ギロチンの刃が無慈悲に落とされ――。
「――っ」
私は両手で口元を覆うと、その場にしゃがみこんだ。
「私の、せいで……」
「お嬢様のせいではありません。民の暴動は、国民を顧みなかった王侯貴族の怠慢が招いたこと。アストレア監獄の件も、金で買収される腐った役人が内部にいるのが原因です。あなたは何も悪くない」
「…………」
ソニアが私の目の前に膝をついた。
「……お叱りは、あとで受けます」
次の瞬間――パシンッと、私の左頬に衝撃が走る。痛みはなかった。ただ急な出来事に驚いて、顔をあげる。
「お嬢様、しっかりして下さい!あなたが何に悩み絶望しているのか、私には分かりません。ですが――ここで諦めてしまって良いのですか!」
力強いソニアの言葉に、私は目が覚めたように我に返った。
「いいえ……諦めない。私は絶対に、諦めないわ!」
私は立ち上がると、急ぎ手紙をしたためた。
「ソニア、これを急いでシリウス殿下へ届けて頂戴!」
「もちろんです、お嬢様」
手紙を受け取ったソニアは、ほっとした笑みを浮かべたあと、すぐさま表情を引き締め部屋を出て行った。
(シリウス殿下、どうか――ご無事で)


