「オレは、主の悲しむ顔は見たくありません。エスター嬢を失って気落ちした殿下の姿は、そりゃもう見られたものじゃありませんでしたから」
「……心配をかけた」
「従者なんですから、心配くらいさせて下さいよ。あと、恋のお手伝いもお任せを」
「それは結構だ」
ライアンは椅子から立ち上がると「まぁまぁ、遠慮せずに、任せて下さいよ」と軽い口調で言って、パチッとウィンクした。まったく、コイツには敵わない。
「はぁ、ついに殿下にも新しい春が来ましたかぁ。羨ましい。オレにも可愛い令嬢、紹介して下さいよ~」
「ソニアと仲が良いだろう?」
「いやぁ、アイツは気が強すぎますよ。ま、可愛いところもあるんですけどね」
まんざらでもない様子のライアンを眺めていると、突如、地鳴りのような轟音と衝撃が走った。
(地震か? いや、違う)
椅子から立ち上がるのとほぼ同時に、執務室の扉がノックされる。許可を出すと、慌てた様子の部下が、息を切らして部屋に転がり込んできた。
「ご報告致します。城下町にて、市民による暴動が起こりました」
「暴動?」ライアンが眉をひそめる。
「はい。市民の武装蜂起とほぼ同時刻、何者かの手引きにより、アストレア監獄の死刑囚が数名脱走した模様です。恐らく、看守が革命家に買収されていたのではないかと思われます」
部下の報告に、ライアンが「面倒なことに」と舌打ちした。
「急ぎ、騎士と自警団を招集せよ。王都民の避難と安全の確保を優先しつつ、事態の収拾にあたる」
伝令を走らせると、入れ替わりで別の騎士が入室してきた。メイナード兄上付きの近衛騎士だ。
「シリウス殿下に、ご報告致します。メイナード殿下がお呼びです。至急、王座の間にお越し下さいますよう、お願い申し上げます」
「俺は城下の鎮圧にあたる。何用かは知らぬが、兄上には『参上は不可能だ』と伝えよ」
「私は『必ずシリウスを参上させよ』と、メイナード殿下から厳命されております。『もし出来なかった場合はお前の首を刎ねる』とも」
メイナード付きの近衛騎士は青ざめながら頭を下げる。声が震えていた。騎士のあまりに可哀想な姿に、同情と兄王子への怒りがわく。
(兄上は、一体何をお考えなのか)
「分かった。指揮を他の団長職に任せた後、参上する。必ず行く故、心配するな」
肩に手を置いて安心させると、騎士は感極まった様子で頭を下げ、出て行った。
「嫌な予感がします。殿下、お気をつけを」
ライアンの言葉に、俺は深く頷いた。
「……心配をかけた」
「従者なんですから、心配くらいさせて下さいよ。あと、恋のお手伝いもお任せを」
「それは結構だ」
ライアンは椅子から立ち上がると「まぁまぁ、遠慮せずに、任せて下さいよ」と軽い口調で言って、パチッとウィンクした。まったく、コイツには敵わない。
「はぁ、ついに殿下にも新しい春が来ましたかぁ。羨ましい。オレにも可愛い令嬢、紹介して下さいよ~」
「ソニアと仲が良いだろう?」
「いやぁ、アイツは気が強すぎますよ。ま、可愛いところもあるんですけどね」
まんざらでもない様子のライアンを眺めていると、突如、地鳴りのような轟音と衝撃が走った。
(地震か? いや、違う)
椅子から立ち上がるのとほぼ同時に、執務室の扉がノックされる。許可を出すと、慌てた様子の部下が、息を切らして部屋に転がり込んできた。
「ご報告致します。城下町にて、市民による暴動が起こりました」
「暴動?」ライアンが眉をひそめる。
「はい。市民の武装蜂起とほぼ同時刻、何者かの手引きにより、アストレア監獄の死刑囚が数名脱走した模様です。恐らく、看守が革命家に買収されていたのではないかと思われます」
部下の報告に、ライアンが「面倒なことに」と舌打ちした。
「急ぎ、騎士と自警団を招集せよ。王都民の避難と安全の確保を優先しつつ、事態の収拾にあたる」
伝令を走らせると、入れ替わりで別の騎士が入室してきた。メイナード兄上付きの近衛騎士だ。
「シリウス殿下に、ご報告致します。メイナード殿下がお呼びです。至急、王座の間にお越し下さいますよう、お願い申し上げます」
「俺は城下の鎮圧にあたる。何用かは知らぬが、兄上には『参上は不可能だ』と伝えよ」
「私は『必ずシリウスを参上させよ』と、メイナード殿下から厳命されております。『もし出来なかった場合はお前の首を刎ねる』とも」
メイナード付きの近衛騎士は青ざめながら頭を下げる。声が震えていた。騎士のあまりに可哀想な姿に、同情と兄王子への怒りがわく。
(兄上は、一体何をお考えなのか)
「分かった。指揮を他の団長職に任せた後、参上する。必ず行く故、心配するな」
肩に手を置いて安心させると、騎士は感極まった様子で頭を下げ、出て行った。
「嫌な予感がします。殿下、お気をつけを」
ライアンの言葉に、俺は深く頷いた。


