ミーティアの友人になってから、頻繁に聖女離宮へ招待されるようになった。
茶会は聖女さまのご機嫌伺いばかりで、毎回うんざり……。それでも、ミーティアの悪事を暴き、未来を変えるチャンスを得るために通った。
そんなある日、退屈な茶会に意外な人物が現れた。
「まぁ、メイナードさま! いらして下さったのね!」
優雅な足取りで応接間に現れた男性――メイナードの来訪に、ミーティアは頬を薔薇色に染めて立ち上がった。
「お仕事は、もうよろしいの?」
「ああ。今日は終わりにしたよ。僕の愛しい聖女。会いたかった」
「今朝もお会いしたのに、ふふっ」
「たとえ数時間でも、君に会えないのは地獄さ。君は寂しくないの?」
「寂しいに決まっていますわ! でも、頑張って我慢しているんですの」
「あぁ! なんて健気なんだ」
令嬢や貴族もいる中、公然とのろける二人。甘ったるい会話を聞きながら、私はメイナードをこっそり観察した。小説のキャラとしては知っているが、実物を見るのは初めてだった。
ウェーブがかった巻き毛の茶髪。切れ長な瞳のシリウスとは真逆で、垂れ目の甘い顔立ち。まばゆいばかりの華やかな雰囲気。
シリウスが月ならば、メイナードは太陽みたいな男性だった。
「さぁ、ミーティア。おいで」
メイナードは甘やかな顔にさらに甘ったるい笑みを浮かべ、ミーティアを膝に乗せた。
焼き菓子を摘まみ、婚約者の口にうやうやしく運ぶ。
いわゆる、あーん状態。
(小説で読む分にはいいけど、生で見るイチャラブ溺愛はきっついわ!)
あまりの猛愛っぷりに胸焼けがする。
聖女を膝に乗せたメイナードの元に、廷臣がやってきて何か耳打ちした。メイナードは煩わしいといった様子で追い払う。
さっきから、五回以上はこのやり取りを繰り返していた。
「はぁ、うるさい奴らだ。やれ会議に出ろだの、書類仕事が溜まっているだの。この僕を誰だと思っているのか」
「まぁ! 不敬な家臣たちですわね!」
部屋の外が騒がしくなり、応接間の扉が開いた。
外の空気をともなって現れたのは、公務用の礼服を身にまとったシリウスだった。
「ご歓談中、失礼致します。メイナード兄上、公務にお戻り下さい」
「今日の仕事は終わりだ。許可なく聖女離宮に立ち入るとは、身の程をわきまえろ、シリウス」
「無礼をお許し下さい。ですが、何度使いを出しても、兄上が公務に戻らないと家臣に泣きつかれたため、致し方なく。急ぎ目を通して頂きたい嘆願書がございます。どうか、お戻りを」
「嘆願書? あんなもの、いちいち僕が見る必要はない」
「兄上」
「特にウォルス伯爵は、本当に煩わしい。何度も『円卓に戻してくれ』と言って、書面をよこしたり面会を求めてくる。まったく、迷惑なことだ」
家臣を貶める発言に、シリウスが眉をひそめる。
それを見たメイナードが、ミーティアの腰を抱きながらニヤリとした。
「そんなに嘆願書が気になるなら、お前が見てやるといい。あぁ、そうか。僕と違って、お前は陛下の代理印を使えないんだったな!忘れていたよ、はははっ!」
何がおかしいのか、メイナードがケラケラ笑う。
それに倣って、サロンに集っていた人々がさざ波のように笑い声を上げた。
メイナードがシリウスを毛嫌いしている事は知っていた。けれど、まさか公然と笑いものにするなんて……。
【黒薔薇姫】では麗しのプリンスとして描かれていた第一王子。しかし現実の彼は、出来の良い弟に嫉妬する、ただの残念王子にしか見えなかった。
茶会は聖女さまのご機嫌伺いばかりで、毎回うんざり……。それでも、ミーティアの悪事を暴き、未来を変えるチャンスを得るために通った。
そんなある日、退屈な茶会に意外な人物が現れた。
「まぁ、メイナードさま! いらして下さったのね!」
優雅な足取りで応接間に現れた男性――メイナードの来訪に、ミーティアは頬を薔薇色に染めて立ち上がった。
「お仕事は、もうよろしいの?」
「ああ。今日は終わりにしたよ。僕の愛しい聖女。会いたかった」
「今朝もお会いしたのに、ふふっ」
「たとえ数時間でも、君に会えないのは地獄さ。君は寂しくないの?」
「寂しいに決まっていますわ! でも、頑張って我慢しているんですの」
「あぁ! なんて健気なんだ」
令嬢や貴族もいる中、公然とのろける二人。甘ったるい会話を聞きながら、私はメイナードをこっそり観察した。小説のキャラとしては知っているが、実物を見るのは初めてだった。
ウェーブがかった巻き毛の茶髪。切れ長な瞳のシリウスとは真逆で、垂れ目の甘い顔立ち。まばゆいばかりの華やかな雰囲気。
シリウスが月ならば、メイナードは太陽みたいな男性だった。
「さぁ、ミーティア。おいで」
メイナードは甘やかな顔にさらに甘ったるい笑みを浮かべ、ミーティアを膝に乗せた。
焼き菓子を摘まみ、婚約者の口にうやうやしく運ぶ。
いわゆる、あーん状態。
(小説で読む分にはいいけど、生で見るイチャラブ溺愛はきっついわ!)
あまりの猛愛っぷりに胸焼けがする。
聖女を膝に乗せたメイナードの元に、廷臣がやってきて何か耳打ちした。メイナードは煩わしいといった様子で追い払う。
さっきから、五回以上はこのやり取りを繰り返していた。
「はぁ、うるさい奴らだ。やれ会議に出ろだの、書類仕事が溜まっているだの。この僕を誰だと思っているのか」
「まぁ! 不敬な家臣たちですわね!」
部屋の外が騒がしくなり、応接間の扉が開いた。
外の空気をともなって現れたのは、公務用の礼服を身にまとったシリウスだった。
「ご歓談中、失礼致します。メイナード兄上、公務にお戻り下さい」
「今日の仕事は終わりだ。許可なく聖女離宮に立ち入るとは、身の程をわきまえろ、シリウス」
「無礼をお許し下さい。ですが、何度使いを出しても、兄上が公務に戻らないと家臣に泣きつかれたため、致し方なく。急ぎ目を通して頂きたい嘆願書がございます。どうか、お戻りを」
「嘆願書? あんなもの、いちいち僕が見る必要はない」
「兄上」
「特にウォルス伯爵は、本当に煩わしい。何度も『円卓に戻してくれ』と言って、書面をよこしたり面会を求めてくる。まったく、迷惑なことだ」
家臣を貶める発言に、シリウスが眉をひそめる。
それを見たメイナードが、ミーティアの腰を抱きながらニヤリとした。
「そんなに嘆願書が気になるなら、お前が見てやるといい。あぁ、そうか。僕と違って、お前は陛下の代理印を使えないんだったな!忘れていたよ、はははっ!」
何がおかしいのか、メイナードがケラケラ笑う。
それに倣って、サロンに集っていた人々がさざ波のように笑い声を上げた。
メイナードがシリウスを毛嫌いしている事は知っていた。けれど、まさか公然と笑いものにするなんて……。
【黒薔薇姫】では麗しのプリンスとして描かれていた第一王子。しかし現実の彼は、出来の良い弟に嫉妬する、ただの残念王子にしか見えなかった。


