「お、おまえ、なにして……。怪我したらどうするんだ、このおてんば!」
うろたえながら怒るシリィ。私は上体を起こして馬乗りになると、もっと大きな声で叫んだ。
「だって、ぜったいシリィが受け止めてくれるって信じてたもん!」
「なっ……」
「私、シリィが本当は優しいって知ってるよ。転びそうになったとき、助けてくれたよね? 本の結末言わないでってお願いしたら、黙っていてくれた。あと最近は、私に合せてゆっくり歩いてくれてるでしょ?全部、気付いてるよ」
シリィは私を押しのけることもせず、芝生の上に大の字で倒れたまま、驚いた様子でこちらを見上げている。
「本当は甘いもの好きなのに我慢して年下の子にあげるところも、私が呼べば立ち止まってくれるところも、すごく、かっこいいって思ったの」
じわじわっとシリィの頬が赤くなる。明らかに戸惑い狼狽える彼に構わず、私はしゃべり続けた。
「無口で、オトナで、意地悪だけど面倒見が良くて、優しい。そんなシリィだから、友達になりたかったの。でも嫌いって……私のこと、だいっきらいって」
大嫌いだという言葉を思い出した途端、胸が痛くなる。
悲しみとともに涙が込み上げてきて、まずいと思ったときには、すでに両目からぽろぽろと雫がこぼれていた。
「え、エスター」
「私っ、ここがすき! シスターも、みんなも、シリィのことも、だいすき。だから……だから……きらい、なんて、いわないでぇっ」
とうとう堪えきれず、私は泣いてしまった。
すぐさまシスターとうちの護衛が駆け寄ってくる。
護衛は私を立ち上がらせると、事情も聞かず「屋敷に戻りましょう」と強く手を引いた。私はとっさに「いや!」と抵抗する。
もしこのまま帰宅したら、二度とここに来られなくなってしまう。
必死に抗うものの、大人の力には叶わない。
もう無理なんだ……と諦めかけたその時、「――待って下さい!」という声が聞こえた。
護衛を止めたのは、私でもシスターでもなく、シリィだった。
顔をしかめる厳つい護衛にもひるまず、シリィは「彼女に謝りたいんです」と頭を下げる。
援護するようにシスター・クラーラが前に出た。
「私からもお願い致します。たしかに、子供をあらゆる危険から守るのも大切でしょう。ですが、本人たちの解決を見守るのも、大人の役目だと私は思うのですよ」
「そんなことを言われても……護衛の俺にも任務ってものが……。はぁ、仕方ない」
護衛の男は渋々頷き、シスターとともに少し遠いところまで下がった。
ほかの子ども達は、お昼寝の時間が来たからか、みんな施設の中に戻ったようだ。
去り際、シスター・クラーラがシリィに向かってこう言った。
「子供のうちに、どんどん喧嘩なさい。ですが、謝罪を忘れてはいけませんよ。それと、ひとを傷つける言葉より愛する言葉の方が、わたくしは尊いと思います」と。
しんと静まり返った中庭に、私とシリィ、二人だけが取り残された。
うろたえながら怒るシリィ。私は上体を起こして馬乗りになると、もっと大きな声で叫んだ。
「だって、ぜったいシリィが受け止めてくれるって信じてたもん!」
「なっ……」
「私、シリィが本当は優しいって知ってるよ。転びそうになったとき、助けてくれたよね? 本の結末言わないでってお願いしたら、黙っていてくれた。あと最近は、私に合せてゆっくり歩いてくれてるでしょ?全部、気付いてるよ」
シリィは私を押しのけることもせず、芝生の上に大の字で倒れたまま、驚いた様子でこちらを見上げている。
「本当は甘いもの好きなのに我慢して年下の子にあげるところも、私が呼べば立ち止まってくれるところも、すごく、かっこいいって思ったの」
じわじわっとシリィの頬が赤くなる。明らかに戸惑い狼狽える彼に構わず、私はしゃべり続けた。
「無口で、オトナで、意地悪だけど面倒見が良くて、優しい。そんなシリィだから、友達になりたかったの。でも嫌いって……私のこと、だいっきらいって」
大嫌いだという言葉を思い出した途端、胸が痛くなる。
悲しみとともに涙が込み上げてきて、まずいと思ったときには、すでに両目からぽろぽろと雫がこぼれていた。
「え、エスター」
「私っ、ここがすき! シスターも、みんなも、シリィのことも、だいすき。だから……だから……きらい、なんて、いわないでぇっ」
とうとう堪えきれず、私は泣いてしまった。
すぐさまシスターとうちの護衛が駆け寄ってくる。
護衛は私を立ち上がらせると、事情も聞かず「屋敷に戻りましょう」と強く手を引いた。私はとっさに「いや!」と抵抗する。
もしこのまま帰宅したら、二度とここに来られなくなってしまう。
必死に抗うものの、大人の力には叶わない。
もう無理なんだ……と諦めかけたその時、「――待って下さい!」という声が聞こえた。
護衛を止めたのは、私でもシスターでもなく、シリィだった。
顔をしかめる厳つい護衛にもひるまず、シリィは「彼女に謝りたいんです」と頭を下げる。
援護するようにシスター・クラーラが前に出た。
「私からもお願い致します。たしかに、子供をあらゆる危険から守るのも大切でしょう。ですが、本人たちの解決を見守るのも、大人の役目だと私は思うのですよ」
「そんなことを言われても……護衛の俺にも任務ってものが……。はぁ、仕方ない」
護衛の男は渋々頷き、シスターとともに少し遠いところまで下がった。
ほかの子ども達は、お昼寝の時間が来たからか、みんな施設の中に戻ったようだ。
去り際、シスター・クラーラがシリィに向かってこう言った。
「子供のうちに、どんどん喧嘩なさい。ですが、謝罪を忘れてはいけませんよ。それと、ひとを傷つける言葉より愛する言葉の方が、わたくしは尊いと思います」と。
しんと静まり返った中庭に、私とシリィ、二人だけが取り残された。


