【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜

「あっ、あの……!」

「はい、なんでしょう?」

「くりすちーぬさまが、きてくれて。すごく、うれしいですっ!」

「……え?」

 身を乗り出してそう告げると、クリスティーヌが虚を突かれたように目を見開いた。

「わたし、おかあしゃま、いないです。だから、あたらしい、おかあしゃま……すごく、すーっごく、うれしい!」

 これは紛れもないセレスティアの本心だった。

 確かに平穏な生活を送るため継母と良好な関係を築いておきたい、そんな打算的な考えがないと言えば嘘になる。

 けれど、決してそれだけではない。

 せっかく縁あって家族になったのだから、叶うのなら本当の親子みたいになりたい──そう強く願うセレスティアの気持ちは本物だった。

「クリスティーヌ様がいらしてから、お嬢様は毎日のように『ご挨拶に行きたい』とおっしゃっておりました。こうしてお会いできる日を、本当に心待ちにしていたのですよ」

 そばに控えるポーラが、クリスティーヌにそっと告げた。

(ありがとう、ポーラ……!)
 
 仲を取り持とうとしてくれる乳母に、セレスティアはパチパチとまばたきをし、精一杯の感謝を伝えようとした。
 その仕草から心の内を察してくれたのだろう。ポーラは目元をなごませ、穏やかな微笑みを返してくれる。

 正面に向き直ったセレスティアは、にこっと満面の笑顔を浮かべた。

「わたし、くりすちーぬさまと、なかよくなりたい、ですっ!」

 心からの想いを口にした、その瞬間。
 クリスティーヌの翡翠色の瞳が、波立つ水面のように大きく揺れた。

 次いで見開かれた両目から、はらはらと涙の雫がこぼれ落ちる。

 これにはセレスティアも息を呑み、それまで静かに事の成り行きを見守っていた妖精たちも『なんだ?』『どうしたのかしら?』と一気にざわめき出す。

(わたし、なにかいけないこと言っちゃった……⁉ どっ、どうしよう……!)

 狼狽(うろた)えていると、クリスティーヌがハッとした様子で目尻を拭った。

「驚かせてしまって、ごめんなさい。すごく嬉しくて……思わず涙が出てしまいました」

 クリスティーヌは瞳を潤ませながらも、口元には柔らかな微笑みを湛えて、セレスティアを優しく見つめた。

「ありがとうございます。私も、セレスティアさんと仲良くなりたいです」

「……ほ、ほんとう?」

「ええ、本当です」

「わぁ……! やったーっ!」

 セレスティアは湧き上がる喜びのまま両手を挙げ、足をパタパタとさせた。
 
 十三年間分の前世の知識を持つとはいえ、身体はまだ三歳。
 気持ちが昂ぶると理性が感情に負けてしまうのか、嬉しさが抑えきれなかった。

「お嬢様、おしとやかに」

「あう。……ごめんなしゃい」

 ポーラにすかさず(たしな)められ、セレスティアは手を下ろして淑女らしい澄まし顔をつくる。
 そのおませな様子にクリスティーヌはくすくすと朗らかな笑みをこぼした。

継母(はは)として至らないところもあるかもしれませんが、これからどうぞよろしくお願いしますね、セレスティアさん」

 丁寧にお辞儀をしたクリスティーヌに、セレスティアも慌ててペコリと頭を下げる。

「あっ、こちらこしょ! ふちゅ、ふつつかな、むすめですが、よろしく、おねがいしますっ!」

 とっさに頭に浮かんだフレーズを口にすると、クリスティーヌとポーラが揃って顔をほころばせた。

「まぁ、難しい言葉をご存知なのですね」

「どこで覚えてくるのか分からないのですが、最近はこうして時折、大人びたことを(おっしゃ)るようになりまして」

「ふふっ、おませさんなのですね。可愛らしい」

 なごやかに言葉を交わす乳母と継母を、セレスティアはニコニコと眺めていた。すると膝の上から『よかったわね』とマリアベルがそっと声をかけてくる。

 シルフたちはもう見守らなくても大丈夫だと思ったのだろう、ヒラヒラと手を振って窓の外へと飛び立っていった。そしてブラウニーたちもいつものように、日の当たる場所でうたた寝を始める。

 お茶会はその後も穏やかな雰囲気のまま、幸せな余韻を残して幕を閉じたのであった。




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