学校一のモテ男子が、なぜか俺にだけ甘えてくる ──イケメン甘えん坊男子×保護者系眼鏡男子の学園BL

とても、天気のよい日だった。

 四月の半ばとは思えないほど、気温も高い。

 すべての窓が全開にされていた。

 吹き込むさわやかな風に、おれは、目を細める。

 こんな日は、と思った。外でお弁当を食べたら、きっと美味しさが倍増するだろう。

 おむすび片手に窓の外を見ていると、焼きそばパンにかじりついていた王太陽に訊かれた。

「どうした? あっちばっか見て」
「あ……うん。すごくいい天気だなぁと思って」
「本当、いい天気だな」

 王太陽は、にっこりした。

「こんな日は外で食べたら、すごく美味しいだろうね」

 すると、王太陽が、さっそく提案した。

「じゃあ、明日天気よかったら、ウッドデッキで食べるか?」
「え~」

 ブーイングしたのは、購買のカレー弁当を食べていた、あっくんだった。

「昼時のウッドデッキなんて、女子とカップルに占拠されてるぞ」
「おまえは来なくていいよ」
「ひで~」

 王太陽とあっくんが、わちゃわちゃしているときだった。

 開けっ放しになっていた後ろの出入口からその男が入ってきたのは。

 おれは、あ、と思った。

 とにかくがたいのいい男だった。
 背も肩幅も、存在感も。切れ長の目に、和風の整った顔立ち。ブレザーよりも学ランが似合うタイプだ。
 
 王太陽が、そちらを見る。

「よう、太陽」

 親しげに声をかけられた王太陽の顔つきが、険しくなる。

「……醍醐」

 低く呼ばれて、その男は、笑ってみせる。
 
 見つめ合う、王太陽と醍醐。ふたりの間の空気がピリつく。

 ふと醍醐という男が、こちらを向いた。

 あまりの目ヂカラに、おれの背筋が伸びる。

 「昨日は、サンキュ」
 
 自分の目ヂカラをわかっているのだろう、その目元を和らげて、言ってくれた。

 おれは、おどおどとしつつ、軽く頭を下げる。

「何だよ、醍醐と律って知り合い?」

 尖った声で、王太陽に訊かれた。

「知り合い、ってわけじゃ……」
「おれの落とし物を拾ってくれたの」

 昨日、廊下を歩いていたときだ。
 前を歩いていたこの男が、ポールペンを落とした。そして、次は、シャーペンも。

 王太陽みたいだな、と思いながらふたつを拾ったおれは、男に声をかけて、そのふたつを差し出した。

 それだけのこと。でも、妙に印象に残っていた。

 王太陽に、醍醐が言った。

「おまえも冷たいよなぁ。たまには一緒にメシ食おうって言ってんのに」
「おまえとおれが一緒に食わなきゃなんない義理はないだろ」

 ふたりの間にバチバチと見えない火花が散る。
 周囲のクラスメイトは、弁当を食べる手を止めずに、でも耳だけは全力で傾けているようだった。

 数秒の睨み合いのあと、醍醐はふっと笑った。

「ま、いいや。またな」
 
 そう言って、おれにもちょっと笑ってみせてから、醍醐は、教室を出ていった。

「律──」

 王太陽が、らしくもない真面目な声で言ってから、おれの方を向いた。

「あいつには、気を付けろ」
「……なんで?」
「醍醐──あいつ、あんなデカい図体してて、ちっさいものが大好きなんだぞ!」
「え……?」
「キンクマ飼ってるし、ネザーランドドワーフ飼ってるし、あとチンチラも!」
「きん、くま……?」
「ハムスターだよ、あと、ちっこいうさぎ。それと、でっかいネズミ」

 あっくんが、助け船をだしてくれた。

「てかさ、太陽んちのペットと種類、被ってるな」
「うちはジャンガリアンだし、垂れ耳だし、デカいネズミなんていない!」

 あっくんが、おれを見た。

「まあ注意はした方がいいかもね。りっくん、ちっさくて、可愛いし」

 冗談でもなさそうな顔で言ったあっくんに、

「律はもう、うちのちっちゃいものクラブ(※注 『おじゃる丸』にでてくるちっちゃい生き物グループ)のメンバーだ」

 王太陽が言う。

 いつのまにか、メンバー入りしていた。

「え、りっくんって、太陽のペットなの?」
「そう」

 断言された。

 もう、こいつらは、放っておこう。

 おむすびを食べ終わったおれは、ひたすら無言のまま、いちごミルクを飲みつづけたのだった……。