王太陽と昼休みを一緒に過ごすようになって、一週間が経った。
結論から言うと、おれの昼休みは、以前より騒がしくなった。
そして、以前より忙しくなった。
理由は、王太陽だ。
王太陽は、見た目に反して、生活能力が低い。
いや、正確には、生活に対する注意力が、ほぼほぼ皆無だ。
初日に気づくべきだったのかもしれない。
あれだけ派手に、物を落とし、転がし、散らかしていたのだから。
昼休み二日目。
「なあ律、見なかった?」
開口一番、それだった。
「何を」
「財布」
おれは、箸を止めた。
「どうした?」
「なくした。さっきまで、あったのに」
周囲を見回すと、王太陽の席の下に、黒い物体が落ちていた。
「それ、足元」
「あ、ほんとだ」
あっさり解決した。
王太陽は、安堵したように笑った。
「助かった」
「……気をつけたほうがいいと思う」
「だよなー」
返事は軽かった。
昼休み三日目。
「律~、これ食べたら腹壊すよな。賞味期限一日過ぎてた」
そう言って、ラップに包まれたカツサンドを見せられた。
「冷蔵庫にあったやつ、持ってきたらさ」
「賞味期限なら、食べて、大丈夫だよ。消費期限なら、まずいけど」
「賞味? 消費? あ、そーなの? じゃ食べてもOK?」
おれは黙って、うなずいた。
昼休み四日目。
「律、消しゴム知らね?」
「昨日、半分やったろ?」
「なくした」
「マジで?」
マジだった。
昼休み五日目。
「律、このマンガやるよ」
一冊のコミックスを渡された。
「なんで?」
「間違えて、同じの二冊買った」
「レシートない? 買ったときの。これ、シュリンクも破れてないし、レシートあれば、返品きくよ」
「え、マジで? 律って、物知りだなー」
王太陽は、いかにも感心したといった口ぶりで言った。
ここで、おれは気がついた。
王太陽は、困っている自覚がないまま、困り続けている。
そして、なぜかその相談窓口が、おれに設定されている。
おかしい。
冷静に考えて、スクールカースト最上位の人間が、底辺眼鏡に生活指導を受けているなんて。
構図が逆だ。
だが、王太陽は、至って真剣だった。
「律ってさ、いつも落ち着いてるよな」
「……そう?」
「うん。安心する」
そう言って、唐揚げを半分、またおれの弁当箱に入れた。
「栄養、ちゃんと摂れよ」
おれは一瞬、迷った。すでに、腹は、パンパンだった。
しかし、人の好意を無下にはできない。
「……ありがとう」
「いいって」
満足そうに笑う王太陽を見て、おれはひとつ、結論を出した。
王太陽は、
・見た目は王
・中身は小1
・ひとりにすると危険
そして、なぜかおれの隣だと落ち着くという。
この状況を、クラスメイトは「面倒見がいい」と褒めそやす。
おれの認識では、事故防止だ。
以上。
