学校一のモテ男子が、なぜか俺にだけ甘えてくる ──イケメン甘えん坊男子×保護者系眼鏡男子の学園BL

昼休みになった。

 あっくんと加賀くんと希里くんは学食で食べるとのことで、今日は、王太陽とおれのふたりだけだった。

「おれの席、座っていーよ」

 と太陽に言われたので、太陽の席に座ったら、おれの両腿の上に太陽が横向きに腰かけてきた。

 太陽の図体はでかく、おれは、ちっこい。

 冗談抜きでつぶれそうになった。

「太陽……おれが、つぶれる……」

 そう言ったら、太陽は、すぐにどいてくれた。

「ごめんごめん。一度律の上に座ってみたかったんだよねー」

 明るい笑顔で言われたが、なんとも答えられずにいたら、太陽に訊かれた。

「律も座ってみる?」

 太陽は、座った自分の両腿のあたりを指でさしたが、おれは、遠慮した。

 今日の太陽は、なんだかいつもよりご機嫌だ。

 おれは、ランチバッグから、二段重ねの弁当を取り出した。

 母親のお手製弁当というと聞こえはいいが、玉子焼き以外のおかずは、全部冷食だ。

 唐揚げ、フライドポテト、たこ焼き、ほうれん草のごまあえ。白米のまんなかには、梅干し。

 メニューもおかしいし、はっきり言って見た目もよくない。

 あるものを詰めるだけ詰め込んだ、とりあえず腹が満たされればいいだろう的ないい加減弁当だ。

 が、作ってもらえるだけありがたいのだから、とおれは、両手を合わせ、いただきます、を言った。

 すると、太陽が、声をあげた。

「すげーうまそう、律のお弁当!」
「……え、そう?」

 おれは、太陽の弁当を見た。

 学校に来る途中で買ったという、弁当屋の、デミグラスソースの煮込みハンバーグ弁当だ。

「そっちの方がおいしそうだよ。おれのはなんか、メニューがおかしい。フライドポテトにたこ焼きって……」

 おれがぼやいていると、太陽が、その表情を輝かせた。

「じゃさ、とりかえっこしない?」
「え、弁当を?」
「うん」
「いーけど……これ、全部冷凍食品だぞ、玉子焼き以外」
「かまわないよ。おいしそうじゃん!」

 太陽の迫力に押され、おれたちは、弁当を交換した。

「マジ、そんなのでいいの?」

 白米の中心でつぶれている大きめの梅干しが、なんだか恥ずかしかった。

 せめて、うちのばーちゃんが漬けたやつ、とかなんとか言い訳できればよかったけど、うちは核家族でばーちゃんはいない。

「おかずの種類たくさんじゃん!」
「たくさん……たって、たこ焼きだぞ。ごはんのおかずにたこ焼きって……」

 ぼやかずにはいられないおれに、太陽は、それこそ太陽みたいな笑顔をみせた。

「おれ、律のお母さんの玉子焼き、大好き!」

 太陽は、そう言うと、迷いなく玉子焼きに箸を伸ばした。

「ネギ入りだ!」

 あまりにうれしそうな顔で言うから、なんだか胸の内側が、くすぐったくなった。

 おれも、もそもそとハンバーグ弁当を食べだした。

「ハンバーグもうまいよ。少しやろうか?」
「からあげあるから、いらない」

 だから冷凍だって、と言いかけて、やめた。

 太陽がおいしく食べているのなら、それでいい。

「あのさ、律……」

 太陽が、少し声を潜めて言った。

「近いうち、ふたりで遊ばない?」
「ふたり? いいよ」
「やった。律と行きたいとこできてさ」
「どこ?」
「ぶたカフェ」
「ぶたカフェ?」
「そ。ミニミニのマイクロぶたのカフェ。ぶたがさ、すげーかわいいんだよ。律みたいで」
「……ミニぶたかあ。醍醐くんも好きそうだね」

 何の気なしに言ったとたん、太陽が、真顔になった。

「声かけたいの? 醍醐にも?」
「いや、そうじゃなくて……ちいさいもの好きなんだろ、醍醐くん」
「でも、醍醐はダメ。ふたりで行くの」
「はいはい」
「あっくんたちにも内緒な。ついてこられたら、やだ」
「はいはい」
「じゃあ、決まり」

 そう言って、太陽は、にっこり笑った。

 子供みたいに無邪気な笑顔だった。

 胸の内側が、またくすぐったくなった。

 ゆうに180センチは超えている太陽が可愛いなんて、おれの目もどうかしている。

 そんなことを思いつつも、ぶたカフェに行くのが楽しみなおれだった。