学校一のモテ男子が、なぜか俺にだけ甘えてくる ──イケメン甘えん坊男子×保護者系眼鏡男子の学園BL

最近、王太陽は、担任から呼び出しを受けた。

 首を傾げながら職員室にいった太陽は、まもなく戻ってきたが、しっぽを半分たらした犬の表情だった。

「部活、多すぎるから減らせ、だって。二つ兼部してるのはわりあいいるけど、三つはいないし、四つは論外だって」

 さすがの王太陽でも、部活四つを兼部は認められなかったか……。

「じゃあ、どこを削るの?」

 訊いたおれに、太陽は、あっさり言った。

「茶道部」
「茶道部? なんで?」
「抹茶が苦いから」
「……」
「あと、正座がきつい」
「……そーだな」

 太陽が茶道部をやめたら、男の部員はおれだけになってしまう。

 女の子のなかに男ひとりはいたたまれないので、太陽と一緒におれも退部することにした。

「ただ残念なのは、真夏のお稽古のあとに、シャワー浴びれなくなることだなー」

 太陽は、いくらか、しょぼんとした顔で言った。

「律と一緒に浴びるの楽しみにしてたのに……」
「それは、おれも残念だけど、しょうがない」

 さすがに彼女が部長をしている茶道部をやめた人間に、水泳部の部長がシャワーの使用を許可するとは思えない。

「そんなの楽しみにしてたの?」

 希里くんが呆れ顔で言った。

「おまいら、ふたりして、小学生みたいだねー。プール行きゃいいだろ、プール」
「そうだな。律、プール開きしたら、プールに行こう」

 そこへ、口を挟んだのは、あっくんだった。

「プール開きなんか待ってるこたねーって。もっとおもしろいとこあんじゃん」
「おもしろいとこ?」

 太陽が、聞き返す。

「そうだよ。スパ銭行けよ」
「え? スパ銭?」
「けっこう遊べて、楽しいぞ。仮眠室もあるから、疲れたら寝られるし、一日遊べる」
「……おれ、スーパー銭湯って、行ったことないわ」

 そう言った太陽に、おれも頷いて、同意した。

「え、何、太陽もりっくんもないの? マジで?」
「おれも、ないわ」

 と、希里くん。

「おれは、あるけど……」

 と、加賀くんが、言い淀む。

「太陽とりっくんにいきなりスパ銭すすめるのはどうかと思うよ」
「なんで?」

 聞き返すあっくんに、加賀くんは、言った。

「いきなり全裸の付き合いって、ハードル高くね?」
 
 何か飲んでいたら、吹き出すところだった。

「全裸のつきあいって、オトコ同士なんだし、恥ずかしがることもないだろ」
「いやー、りっくんは、ともかく、太陽がねー……」
 
 加賀くんが太陽に目をやると、太陽が、鼻血をふいた。

 みんなあわてふためいたけれど、おれは、カバンから、ポケットティッシュを取り出し、太陽に差し出した。

 そんなに大量ってわけじゃないから、心配せずとも大丈夫だろう。

「スパ銭かあ。なんだか、楽しそうだね。行ってみてもいいかもね、太陽」

 けれど、太陽は、ティッシュで鼻を抑えたまま、じっとうつむき、ウンともスンとも言わない。

「せっかくだし、行ってみようよ、太陽」

 が、なぜか、王太陽は固まって、石化している。

「まあまあ、りっくん」

 と、加賀くんが言う。

「そんなにあせらなくてもスパ銭は逃げないからさ、ゆっくりやっていこうよ。な、太陽?」

 太陽は、うつむきがちに、頷いた。

「ゆっくり、やっていくの……?」

 一体何をゆっくりやっていくのかさっぱりわからなかったが、仕方なしに、同意した。

「うん。じゃあ、ゆっくりやってって、いつかスパ銭デビューしよう」

 太陽は、こっくりしたけれど、鼻血は、なかなか止まらないようだった。

 りっくん、と加賀くんに呼ばれた。

「太陽ってわりと純粋だからさ、あんまり煽らないでやって」

 その台詞の意味は、さっぱりわからなかった。

 見れば、あっくんも希里くんも「?」という顔をしている。

 わかっていないのは、おれだけではないようだから、まあいいか……、とおれはひとり、納得したのだった……。