学校一のモテ男子が、なぜか俺にだけ甘えてくる ──イケメン甘えん坊男子×保護者系眼鏡男子の学園BL

昼休みになった。

 教室内がにぎやかになって、ほっと肩の力が抜ける。

 王太陽、希里くん、加賀くん、あっくん、そしておれ、のいつメンで寄り集まっての食事が始まる。

「ここでおれから発表があります!」

 食べ始める早々、王太陽が、笑顔で言った。

 玉子サンドイッチを食べていたおれは、今日は、王太陽(こいつ)の誕生日なのかと思った。

 ━━ら。

「おれと律の入部が決まったよ!」

 みんな、二秒は黙っていた。もちろん、おれも。

「は?」
「え?」
「どこ?」

 驚きがさめると、みんな、口々に言った。

 おれは、かじりかけのサンドイッチを口に入れたままだった。

「どこにした?」

 希里くんがこっちを見てきいたけれど、おれは、固まったままだった。

 王太陽は、うれしそうに言った。

「茶道部だよ、茶道部!」

 さどうぶ……? と誰かが、気がぬけたように言った。

 おれは、口から、玉子サンドを離し、

「茶道部━━って、おれもなわけ?」

 突然の発表に、驚きを隠せないまま、訊いた。

「あたぼう。一緒に入ろうって言ってたじゃん!」

 おれは、なかなか二の句がつげなかった。

「律をびっくりさせたかったからー、昨日入部届けだしちゃった! サプライズ!」

 みんな、黙っている。

 しばしして、加賀くんが口を開いた。

「サプライズ、ってことは、りっくんに内緒にしてってこと?」
「そう」
「一言の断りもなしに?」
「そう!」

 王太陽の表情はどこまでも明るい。

「律、いいだろ、茶道部! 活動は週イチだし、抹茶飲めるし、つづければ、お免状ももらえるって」

 オメンジョウ……?

 あまりにサプライズ過ぎて、おれは、自分も食欲も見失った。

「……太陽」
 
 やっと声が出た。

「なに?」
 
 きらきらした目で見てくる。
 
「おれ、入るって言った覚えない」
「え?」
 
 初めて、王太陽の笑顔が止まった。

「で、でも、文化部に入りたいとは言ってたよね」
「文化部に入りたいとは確かに言ったけど、茶道部なんて、ひとっことも言ってない」

 希里くんが静かにお茶を飲む。
 加賀くんとあっくんは、固唾をのんでいる。

「勝手に出すな」
 
 できるだけ静かに言った。
 
 王太陽の肩が、ぴくっと動く。

「……ごめん」

 目に見えて、王太陽がしゅんとする。
 さながら犬だったら、しっぽがだら~んとするところだろう。

 王太陽は、しっぽの代わりに、肩を落として、うなだれた。

「律……言ってたじゃん、抹茶味のスイーツ好きって。だから、抹茶飲めるからいいんじゃないかなぁ、と思って」
「抹茶味のスイーツと本物の抹茶って、似て異なるものだろ」
「その発想って、くまのプーさんが好きって言ってる人間に、本物のヒグマを送りつけるようなもんじゃね?」

 口々に、加賀くんとあっくんが言う。

 その言葉に、さらに、王太陽のうなだれ度が深くなる。

「まあ、あれだな」

 と、希里くんがつづける。

「入部届けは、取り下げだな」
 
 え……、と王太陽が、希里くんを見る。

「仕方ないだろ、本人に無断じゃさ」
「そうそう。太陽、暴走し過ぎ」

 と、加賀くんと、あっくん。

 王太陽は、弱々しく、こちらを見る。
 
 おれは、重々しく、頷いてみせる。

 王太陽の表情が暗くなり、眉尻が下がる。

「わかった━━放課後、取り下げてくる」

 さっきまでとはうってかわったその表情に、おれは、ふきだしそうになるのを精いっぱいこらえた。

「おれも、一緒に行くよ」
「え?」
「一緒に行ってみて、見学してからだな、まずは」
「え……」
「部活見学しよ、とりあえず。それからだな」
「本当に……?」
 
 まだしっぽが半分たれている状態の王太陽に、おれは、苦笑して、頷く。

「ありがとう……律」

 王太陽の眼差しは、うるうるしていた。

 本当に大型犬だな、と思った。(キング)らしさなんて、みじんもない。

 バカな子ほど可愛い。

 そんな言葉を思い出しながら、おれは、王太陽の弁当箱から肉を一枚失敬したのだった。