マイロの瞳は悲哀を滲ませながら、実験台を見つめている。
「いつの間にかヤニスが、この崇高な研究の邪魔をする障害にしか私には思えなくなりました」
「障害……ですか?」
「はい。私はそれを排除しただけに過ぎません」
マイロは、それ以上何も語らなかった。
やがて扉が開き、待機していた魔術師団の魔術管理部員たちが入室してくる。
マイロは彼らを一瞥しただけで逃げようとも抵抗しようともしなかった。
「マイロ・バナードだな」
「はい」
「ヤニス・アレクス殺害容疑の重要参考人として、身柄を拘束する」
「承知しております」
マイロは魔術管理部員に両隣へ立たれた状態で歩みを進めた。
「マイロさん!」
ルーレンが椅子を倒しながら、その場へ立つ。
ルーレンはマイロに何かを言いたそうにしていたが、考えがまとまらないのだろう。
なぜ、どうして、聞きたいことは幾つもあるはずだった。
事故で亡くなったと思っていたヤニスが同じ研究室のマイロに殺害されていた。
若い彼がその事実を受け止めきれないのも無理はない。
ボルトラとレミリアも固く口を閉ざしている。
マイロは3人に向かって、軽く頭を下げると魔術管理部員に連行されていった。
後に残されたのは重みと痛みを伴う沈黙。
「――何も殺さなくても良かったのに……」
ルーレンが口を開く。
ルーレンの言っていることは誰が聞いても正しい。
ただ人間は正しさだけで全ての物事を割り切れるほど簡単な生き物ではない。
(だからこそ基準となる制度や法令があって、私たち監査官の仕事もあるのだわ……)
ミュヨンは各々が神妙な面持ちをしているボルトラ、レミリア、ルーレンに向かって声をかけた。
「ヤニス氏が亡くなった今となってはわかりませんが、恐らく共同確認者は実証結果が出た段階でボルトラさんかレミリアさんに頼む予定だったのだと思います」
ミュヨンの言葉にボルトラとレミリアは一度だけ目を合わせて、すぐに逸らし合った。
「それにヤニス氏は研究を止めようとしていたとは思いますが、ご破算にするつもりはなかったと思います」
「どうして、そう思われるのですか?」
「本当に危険な研究を止めたいだけだとすれば、監査局へ直接告発したのではないかと思います」
「確かに……」
レミリアが呟く。
誤った方向に進んで行きそうだったのを立ち止まって、修正したかった。
同じ研究室の全員で積み重ねてきた研究結果を全否定したかったわけではない。
ヤニスはヤニスなりに自分の研究室や研究を守りたかった。
しばらく3人は誰も口を開かず、退室しようともしなかった。
「いつの間にかヤニスが、この崇高な研究の邪魔をする障害にしか私には思えなくなりました」
「障害……ですか?」
「はい。私はそれを排除しただけに過ぎません」
マイロは、それ以上何も語らなかった。
やがて扉が開き、待機していた魔術師団の魔術管理部員たちが入室してくる。
マイロは彼らを一瞥しただけで逃げようとも抵抗しようともしなかった。
「マイロ・バナードだな」
「はい」
「ヤニス・アレクス殺害容疑の重要参考人として、身柄を拘束する」
「承知しております」
マイロは魔術管理部員に両隣へ立たれた状態で歩みを進めた。
「マイロさん!」
ルーレンが椅子を倒しながら、その場へ立つ。
ルーレンはマイロに何かを言いたそうにしていたが、考えがまとまらないのだろう。
なぜ、どうして、聞きたいことは幾つもあるはずだった。
事故で亡くなったと思っていたヤニスが同じ研究室のマイロに殺害されていた。
若い彼がその事実を受け止めきれないのも無理はない。
ボルトラとレミリアも固く口を閉ざしている。
マイロは3人に向かって、軽く頭を下げると魔術管理部員に連行されていった。
後に残されたのは重みと痛みを伴う沈黙。
「――何も殺さなくても良かったのに……」
ルーレンが口を開く。
ルーレンの言っていることは誰が聞いても正しい。
ただ人間は正しさだけで全ての物事を割り切れるほど簡単な生き物ではない。
(だからこそ基準となる制度や法令があって、私たち監査官の仕事もあるのだわ……)
ミュヨンは各々が神妙な面持ちをしているボルトラ、レミリア、ルーレンに向かって声をかけた。
「ヤニス氏が亡くなった今となってはわかりませんが、恐らく共同確認者は実証結果が出た段階でボルトラさんかレミリアさんに頼む予定だったのだと思います」
ミュヨンの言葉にボルトラとレミリアは一度だけ目を合わせて、すぐに逸らし合った。
「それにヤニス氏は研究を止めようとしていたとは思いますが、ご破算にするつもりはなかったと思います」
「どうして、そう思われるのですか?」
「本当に危険な研究を止めたいだけだとすれば、監査局へ直接告発したのではないかと思います」
「確かに……」
レミリアが呟く。
誤った方向に進んで行きそうだったのを立ち止まって、修正したかった。
同じ研究室の全員で積み重ねてきた研究結果を全否定したかったわけではない。
ヤニスはヤニスなりに自分の研究室や研究を守りたかった。
しばらく3人は誰も口を開かず、退室しようともしなかった。



