8年後の告白

春風がやわらかく吹く午後。
慶と奏は、再びカフェで向かい合って座っていた。二人の間に、言葉が足りなくても伝わるものがあるような、そんな静かな時間が流れていた。

「慶くん、最近思うことがあるの。」

奏がゆっくりと口を開いた。その言葉に、慶は少しだけ驚きながらも、静かに耳を傾けた。

「私、まだ自分がどうしたいのか、はっきりわからない」

奏の声には、これまで以上に真剣な響きがあった。
毛は黙って、彼女の目を見つめる。その瞳に浮かぶ迷いと不安に心が痛んだ。

「でも、今までのように、心の中で何も感じずに過ごすのはいやだって思うようになった。ずっと、何かに縛られているみたいで・・・」
 
「それは、病気のこと?」

奏は頷いた。
「そう。まだ完全に治っているわけじゃないけど、少しずつ自分を取り戻してきたと思う。でも、何もかもが怖くて。これからどうなるのか、何をしていいのか。自分でも分からなくなるときがある」
慶はその言葉を聴いて、少し驚いたように目を見開いた。

「それでも、どうして?」

彼女の声には、疑問とともに、少しの気体が込められていた。 
慶は真剣に答える。 

「だって、俺は君を好きだからだよ。君がどうなっても、そう思っても、君がそばにいることが、俺にとって一番大事なんだ。だから、怖いことがあったとしても、君と一緒に乗り越えたい。」

奏はその言葉に、しばらく無言でいてやがて小さく息を吐いた。

「ありがとう・・私、どうしても不安になるんだけど、慶くんがそういってくれると少し安心する。でも、それでも渡し、まだ自分に自信が持てなくて・・・〕

慶はその手を静かにとった。

「自信がないのは当然だよ。でも、君がどんな状態でも、俺は君を応援している。だから、あせらずに、ゆっくりでいいんだ」

奏はその手をしっかりと握り返した。
「敬君がそういってくれるなら、私も少しずつ、前に進んでみようと思う。自分を少しでも信じられるように」

「一緒に進んでいこう」
慶は微笑みながら言った。
 
その言葉に奏の顔にもようやく少しだけ笑みが浮かんだ。
お互いの手がしっかりとつながった瞬間、どこかで心が通じ合ったような、そんな感覚が広がった。
しばらく沈黙が続いたが、今度は奏が口を開いた。

「慶くん、今までありがとう。私、少しずつだけど、また歩きさせる気がする。でも。。。」

「でも?」


「でも、私、もう一度、告白してもいいかな?」

奏の声は、少しだけ震えていた。

「もちろんだよ」
そのひとことが、二人の間に新しい扉を開けたような気がした。

「じゃあ、今度こそ、ちゃんと答えてほしいんだ」
奏は少し顔を赤くしながらも、真剣な眼差しで慶を見つめた。

奏はその目を見返し、心の中で決意を固めた。

彼は自分の心を、しっかりと奏に伝えることを決めた。