不遇の正妃は      隣国の王に愛される

 鷲の国に来てから瞬く間に三月の時が経った。小雀を始め、鷲の国の人たちは希鳥に好意的だった。居心地の良さに思わず気が緩む。ただひとつ気になることと言えば、夫となった紅鸞が常に淡い赤色をまとっていることだ。夫は希鳥に対してなにか嘘を吐いている。来た当初はさほど気にかけていなかった希鳥も、それを悲しく思うようになっていた。
 寂しさを紛らわせるように自分にできることを探しては仕事をしたり、王宮で飼われている鳥の世話に精を出した。暇な時間が出来てしまうと知識を求めて書庫に籠った。
 悩ましいことのひとつに鷹の国の増税がある。資金に余裕のある鷲の国では少々上げられたところで問題はないが、厳しい国もあるだろう。鷹の国の財政は悪くなかったはずだ、急な増税とはどうしたことだろうか。
「希鳥、またここにいたのか」
「はい、興味深い書物が収められているので……」
「あなたのおかげで政がはかどると大臣たちが褒めていたぞ」
「微力ながらできることはないかと思っております」
「俺は助かるが、あまり根を詰めるな。体を壊さないようにしてほしい」
 紅鸞は心優しい夫であった。常に希鳥を気遣ってくれる。
「はい、気を付けますね。ところで、私になにか御用ですか?」
「雛が生まれたので、あなたに知らせてほしいと言付かった」
 希鳥は顔をほころばせた。
「ありがとうございます、とても楽しみにしていたのです! ですが、紅鸞様を伝令にしてしまうなんて、なんて恐れ多いことでしょうか……申し訳ありません」
 希鳥が困った表情になると、紅鸞はやわらかく微笑む。
「飼育を担当している者にも嫌がられたのだが、俺があなたに会う口実がほしかったのだ」
 赤い色は濃くならない。紅鸞の本心だろう。紅鸞は押しつけられた妃を大切にしてくれている。律儀な男だ、優しい夫でいてくれる。自分にはもったいない。
「私に会うために口実など必要ありません。ですが、ありがごうざいます、嬉しいです」
 紅鸞は想像していたよりもずっと穏やかな男だった。魔物と戦い、結界を守る兵の要と聞けば、さぞ恐ろしい男が王に据えられているのだろうとの噂を耳にしたこともあるが、あてにならない。紅鸞は希鳥を尊重し、大切にしてくれる。
 生まれたばかりの雛鷲を見て、希鳥は目を細めた。
「なんて可愛らしいのでしょう、雄々しい姿からは想像できません」
「喜んでもらえてよかった」
 紅鸞も目じりを下げた。
「希鳥、手伝ってもらいたいことがあるのだが……」
「はい、なんなりとおっしゃってください」
「あなたにしか頼めそうにないことだ」
「私にできることであれば喜んで」
 紅鸞は少し躊躇うような表情になったが、希鳥が快諾したのを見てうなずく。
「俺の部屋に来てほしい」
「紅鸞様のお部屋ですか?」
「ついてきてくれ」
 紅鸞は希鳥の歩幅を慮り、ゆっくりと歩みを進めてくれる。何気ない優しさが嬉しい。紅鸞は部屋に着くと、大事そうに何かを取り出した。光を浴びた宝石のように光輝くそれは、自らが発光していた。
「それは……」
「これは、朱雀の卵珠(らんしゅ)という」
「朱雀の卵珠……」
 聞いたことがある。朱雀の国の王はそれぞれこの卵珠を神殿から賜る。次の王を見定めるのがこの卵珠であり、朱雀が王を認めると卵珠は孵るといわれている。卵が孵っていないということは……この国の王はまだ定まっていないということになる。紅鸞が王位に就いているにも関わらず。
「不思議だろう、この国の卵珠はまだ孵っていないにも関わらず、俺は王となった。もとは兵をまとめる役職に就いていた。王位を継ぐ者が相次いで亡くなったため、仕方なく王座が俺のところにやってきた。王位継承権は低く、王家の血も薄い。ゆえに俺はまだ朱雀に認められていないのだろう」
「意外です、紅鸞様はこんなにも人々から慕われ、政にも心を砕いていらっしゃるのに」
 朱浪よりもよほど上に立つものにふさわしい器だと思う。
「希鳥には、俺に何が足りていないのか教えてほしい」
「私にですか……」
 正直、足りないところなど見つからない。強いていうならば、彼がまとう赤い空気だ。それを、指摘してもいいのだろうか。
「あなたにしか頼めないのだ。他のものに弱みを見せるようなことはできない」
 一国の王である紅鸞の苦労を見た気がした。
「私には見せても大丈夫なのですか?」
 それだけ、信用してくれているのかもしれない。嬉しさと恥ずかしさではにかむと、紅鸞は目を細めた。
「あなたになら見られてもいい」
 少し照れたような表情に、ドクンと心臓がはねた。
「そ、そうおっしゃってくださるなら、全力を尽くします」
「頼もしいな」
 紅鸞が微笑むと、心臓が早鐘を打つ。いったいどうしたというのか。自分にできることがあるなら、今まで夫であった朱浪に対してもこんな気持ちになったことはない。
 私は、紅鸞様とともにありたい。
 下賜されたことを心から感謝した。紅鸞の妃の座は、朱浪からもらった最高の贈り物だ。下賜されたことを笑う者も、陰口を叩く者もいるだろう。だが、そんなことは気にならない。自分自身がこの場所にいることを望んでいるのだから。
 心の中に光が差したようであった。鷲の国に来てからというもの、憂鬱な気持ちにならないのは、紅鸞のおかげだ。紅鸞が、希鳥のことを大切に扱ってくれるから。
 身に余ることだと思いながらも、希鳥は幸せに触れた気持ちだった。

 紅鸞から依頼を受けてからというもの、一緒に過ごす時間が増えた。時間を見つけては希鳥のもとを訪れてくれる。他愛無いない時間が心地よかった。
「希鳥、時間はあるか」
「はい」
「少し話がしたい。残念ながら、今日は仕事の話だ」
「どのような内容ですか?」
 紅鸞は少し躊躇うような表情になる。少し間を置いて、紅鸞は話し始めた。
「陛下から武術大会への招待を受けた。妃も同伴とある、あなたにも一緒に来なければいけないのだが……無理強いはしない。俺もできれば連れて行きたくはない」
 朱浪からの招待であれば出席しないわけにはいかないだろう。
「紅鸞様と一緒であれば怖いものなどありません」
「そうか、あなたが嫌な思いをするようなことはけっしてさせない」
「ありがとうございます」
 武術大会などこれまで開かれたことはない。朱浪は武芸に暗く、自ら剣技を披露することはないだろう。なにかしらの余興と考えるべきだ。麗華の提案かもしれない。
 不思議と、鷹の国に行くのが苦ではなかった。紅鸞が一緒にいてくれるなら心強い。朱浪や麗華に会ったとしても問題なく対応できるだろう。鷹の国にいたときの自分はいくらか卑屈になっていたのかもしれない。今度は、紅鸞の妃として恥ずかしくない振る舞いをしたい。希鳥は来る鷹の国への訪問に備えた。

 数週間後、紅鸞は希鳥を伴って鷹の国を訪れた。鷹の国はお祭り騒ぎだったが、一方で貧しい民の生活の苦しさも垣間見える。路上では行き倒れた人々の姿を何人も見た。自分がこの国を離れてからいくらも経たないうちに荒廃が進んでいる。増税のしわ寄せが弱いものに及んでいるのだろう、民の生活を思うと心が痛んだ。
 希鳥の胸の内を読んだ紅鸞が話しかけてくる。
「増税の煽りを受けているのだ、被害はどうしても弱いものにいく」
「何とかできないでしょうか……。増税の理由が知りたいです、理由がわかれば、改善できる点や、いつまで続くのかなど具体的に対策が立てられるかもしれません」
「そうだな、早いうちに手を打とうと思っている。陛下に進言するつもりだ」
「本当ですか! ありがとうございます、紅鸞様」
「ああ、このままでは朱雀連合国全土に被害が及んでしまう。見過ごすことはできない」
 頼もしい夫の横顔を見ると、胸が高鳴る。恥ずかしくなって視線を外し、流れていく景色を眺めた。 

 朱浪の王城に着くと、謁見の間に通された。王座に朱浪、隣にお腹の大きな麗華が腰かけている。
「よく来たな、顔をあげろ」
 久しぶりに聞く朱浪の声、隣で同じように頭を下げていた紅鸞はその声で顔をあげた。希鳥もそれに倣う。朱浪は希鳥に視線を向けていたようだ、目が合ったので驚いた。慌てて視線を下げる。虐げられていたときの自分がよみがえりそうになる。
「紅鸞、おまえの剣技は確かなものだろう。余と麗華を楽しませろ」
「勿体ないお言葉です」
 短い謁見は終わり、あてがわれた客間に入ると、小さく息を吐いた。思っていたよりも緊張していたようだ。体からふっと力が抜ける。
「疲れただろう、今日は早めに休もう」
「はい、紅鸞様も明日は試合に出るのですね」
「そのようだ、のんびりと観覧させてくれるわけではなかったな」
 希鳥を安心させるように紅鸞は穏やかに微笑んだ。
「どうか怪我をなさいませんように……」
「大丈夫だ、心配するなら相手の方だな。怪我をさせないように気を付ける」
「頼もしいお言葉です。ですが、本当にお気を付けください」
「あなたが悲しむようなことはしない」
 青みがかった紅い瞳に見つめられると心臓の音が大きくなる。思わず視線を外してしまいそうになるが、紅鸞がそれを許してはくれなかった。
「希鳥」
「は、はい」
「明日はあなたのために勝ち進む」
「え……」
「だから俺の勇姿を見ていてほしい」
「はい、応援しております」
 心からそう告げると、紅鸞は嬉しそうに目を細めた。
 紅鸞様と、心が通じているのではないかと勘違いしてしまう……。紅鸞様のために、できることをしたい。お役に立ちたい。だから、早く朱雀の卵珠が孵らない理由を見つけたいのに、わからない。紅鸞様は王として完璧だ、民を思い、国を守るべく政に心を砕いていらっしゃる。家臣も、妃も大事にし、人徳の高いかただ。それなのに、朱雀が認めないのはなぜだろう。
 紅鸞がまとう赤い気配が気にかかる。
 紅鸞様は、なにか重大な秘密を抱えていらっしゃる。その秘密が、朱雀が紅鸞様を認めない理由に他ならない気がする。
 紅鸞が明かそうとしない秘密を暴いてもよいものか気がかりではある。紅鸞は希鳥に嘘を見抜く力があるとは知らない。いったところで不審に思われるかもしれない。
 いいえ、紅鸞様はそのようなかたではないわ。私の言葉を真摯に受け取ってくださる。だからこそ、慎重にならなければ。
 
 翌日、早朝から武術大会が開かれた。
 希鳥は観覧席から落ち着かない気持ちで試合を見ていた。真剣で戦うため、大怪我をする選手もいる。下手をすれば命を落とすかもしれない。
 紅鸞の試合がもうすぐ始まる。
 紅鸞様、どうかご無事で……。
 祈らずにはいられなかった。紅鸞が怪我でもしないかと心配でまっすぐに見られない。だが、希鳥の心配とは裏腹に、紅鸞はあっという間に相手の剣を弾き落として勝利した。
 あまりに鮮やかな手並みに、辺りから感嘆の声が漏れる。
 その後も紅鸞は危なげなく勝ち進み、あっという間に優勝した。実に鮮やかな勝利だった。
「おめでとうございます! ご無事でよかった……本当に」
 紅鸞が無事に戻ってきたことに涙腺が緩む。はらりとこぼれ落ちた涙を紅鸞の指が掬い取った。
「あなたの応援のおかげで勝てたのだ」
「私など……」
「あなたがそばにいてくれることが、どんなに心強かったことか。これをあなたに贈りたかった」
 紅鸞が差し出したのは、優勝の褒美として受け取った金の髪飾りだった。精巧な金細工は、思わず見とれてしまうほど美しい。紅鸞はそっと髪に触れ、希鳥に髪飾りをつけてくれる。
「思った通り、あなたの美しい黒髪に似合うと思ったのだ。どうしても手に入れたかったから、武術大会に出場できてよかった」
「私に……似合うでしょうか」
「ああ、俺の妃はこの世で最も美しい」
「紅鸞様……ありがとうございます。大切にいたします」
 嬉しくて涙が出るのは初めての経験だ。紅鸞はたくさんの初めてをくれる。
「喜んでもらえてよかった」
 紅鸞も嬉しそうに微笑むので、希鳥の心も温かくなった。こんなに幸せな気持ちになったことはない。紅鸞と出会ってから、希鳥は一日一日が大切で仕方がなかった。律の世話だけを生きがいに、息をひそめて生きていたころとは全く違う。
 紅鸞様を心からお慕いしている。でも、この気持ちの伝え方がわからない……。
 希鳥は初めて抱く感情に戸惑っていた。



「紅鸞様」
 歓声の中、武術大会で優勝した紅鸞を呼びとめる声がある。紅鸞は足を止め、一瞬迷ったが仕方なく振り返った。
 無碍にはできない相手だ。
「素晴らしい剣技でした」
「ありがとうございます」
 一刻も早く会話を終えたい。身重の妃をひとりにさせるなど、鷹の国の警備はどうなっているのだ。それも、男とふたりきりにさせるなど。
「紅鸞様、今夜私が催す宴があるのです。参加してくださいませんか。もちろん、希鳥様も一緒に」
「お誘いいただき光栄ですが、国が心配ですので戻ります」
「あら、一日くらい遅れても大丈夫ではなくて?」
「失礼いたします」
 深々と頭を下げると踵を返す。一刻も早く希鳥に会いたい。だが、麗華はまだ声をかけてくる。
「紅鸞様、優勝の髪飾りを私に贈ってくださいませんか?」
「お断りしたします」
 もう一度振り返り、頭を下げるとため息が聞こえた。
「ああ、希鳥様が羨ましいわ。こんなに素敵な旦那様がいて」
 希鳥から正妃の座を奪いながら、この女は何をいっているのか。
「紅鸞様、希鳥様は退屈でしょう? いつでも私が話し相手になって差し上げますわ」
「皇后陛下、我が妻は素晴らしい女性です。妻が待っておりますので、失礼いたします」
 今度こそ、振り返ることなく早足で歩く。希鳥に金の髪飾りを贈る前にこんやり取りがあったことを希鳥は知る由もなかった。



「希鳥様を迎えられて、殿下は穏やかになられました」
 武術大会も無事に終わり、希鳥が紅鸞から贈られた髪飾りの手入れをしていると、小雀が嬉しそうな声で話しかけてくる。
「そうなのですか?」
「ええ、やはり奥方を迎えられるというのはよい影響を与えてくれるのでしょうか。実を申しますと、私どもは殿下が妃を迎えないのではないかと気を揉んでおりました」
 小雀は心から喜んでいるように話す。
「殿下はあの強面からは想像できないほど一途なんですよ。心に決めた女性がいたらしくて、妃は取らないと……あ、申し訳ありません、余計なことを……ご安心ください、昔の話でございます。今は希鳥様を大切にしていらっしゃいますでしょう、陛下は本当に良い褒美をくださいました」
 小雀の言葉は、希鳥の心に影を落とした。
「そうでしょうか……」
 曖昧に答えることしかできない。自分は紅鸞にとって、迷惑な褒美だっただろう。心に決めた女性がいたのなら余計に。紅鸞が、赤い空気をまとっている理由は希鳥を妃に迎えたからだ。
 紅鸞が希鳥を大切に扱ってくれるのは、朱浪から賜った妃だから。断れずに妃に迎えるしかなかった希鳥を大切にしてくれるのは紅鸞の性分だ。彼は責任感が強く、真面目な男だ。陛下から賜った妃を無碍にはできないのだろう。
 紅鸞様とはよい夫婦になれるだろう、だけど、そこに愛はない。王族の結婚とはそういうものだ。
 わかっているのに、朱浪に嫁いだときには感じなかった寂しさがある。
「あの……紅鸞様が愛した女性は……」
 こんなことを聞いてどうするのか、そう思いながらも、尋ねずにはいられなかった。
「それが、どうやら他の国へ嫁いで行かれたようです。ご安心ください、殿下は希鳥様を大切になさいますよ」
「……私も、紅鸞様のために尽くしたいと思います」
「はい、仲睦まじいおふたりの姿を見るのが私も嬉しいですよ」
 自分でも我がままなことだと思う。自分にだって、紅鸞に出会う前に少しでも惹かれた男性がいたというのに、紅鸞にそんな相手がいたことを切なく感じた。

「希鳥はいるか」
「はい」
 紅鸞に名を呼ばれると、心が震える。
 紅鸞様が淡い赤色の嘘をまとっているのはきっと、私を妃に迎えたからだ。心に思う相手がいながら、自分を偽っておられるから……。それでも私は紅鸞様とともにありたい。彼の心に私がいなくとも。
 そんなことは慣れている。朱浪の心には一瞬たりとも希鳥はいなかった。だが問題は他にある。朱雀の卵朱が孵らないのはこの嘘のかもしれないということ。心に偽りを抱く者を、朱雀は認めはしない。
 紅鸞様にこのことを告げるべきだろう。だが、心は自分ではどうしようもない。意中の相手ではない希鳥を妃に据えている間は、卵珠は孵らないだろう。
 勇気が出なかった。紅鸞のことを愛している、ともにありたいと思っている。叶わない恋だ。紅鸞は希鳥を大切にしてくれるだろう、だが、そこに愛はない。
「紅鸞様」
「どうした、神妙な顔をして」
「朱雀の卵珠が孵らない理由を、私なりに考えてみました」
「本当か、聞かせてくれ」
 少し高揚したような声に、心が苦しくなる。
「紅鸞様、私には噓を見抜く力があります。紅鸞様は秘密をまとっていらっしゃる。それが、朱雀から認められない理由ではないかと考えております」
「俺が、秘密を……なるほどな。的を得ている、さすが希鳥だ」
 紅鸞は納得したような表情になる。やはり、思うところがあるのだろう。
「卵珠を孵すためには、その秘密を暴く必要があるかもしれません」
 希鳥の言葉に、紅鸞は押し黙り、考え事をしているようだった。自分がまとっている嘘について考えているのだろうと希鳥は思った。長い沈黙のあと、紅鸞はゆっくりと言葉を紡いだ。
「ありがとう希鳥、感謝する」
「いえ、間違っていたら申し訳ありません。引き続き探して……」
「いや、恐らく間違いないだろう。早く決断しろと朱雀は俺を急かしているのだ、きっと」
 紅鸞は希鳥をじっと見つめると、静かに瞳を閉じた。何かを決したような表情に見えた。
 また、離縁されるかもしれない。
 何が起こっても、私は紅鸞様の決断を受け入れよう。どんな結末になっても。
「朱雀は紅鸞様のご決断を認めてくださると思います」
 希鳥は心を満たす悲しさに蓋をし、静かに微笑んだ。