氷の姫騎士様はメンタル以外最強です!

「私も!! 私もギルドまで行こう!」

 二日酔いのユキミは海という言葉で興奮したのか、立ち上がった。

 シュンはそんなユキミを見て驚くも、体調を案じて言う。

「ユキミさん。無理しなくても良いんだぞ? 別に俺がクエストの受注をしてくれば……」

 だが、興奮の収まらないユキミはこう返す。

「私も行く!!」

 ユキミの熱量に押されたシュンは、まぁそう言うならばと一緒にギルドへ向かうことにした。

 ギルドへ着くと、ユキミは借りてきた猫のように大人しくなる。いつもの事だ。

 受付嬢レモンにシュンは話しかける。

「さっきのクエスト、受けたいんだけど」

 レモンは笑顔で返してくれた。

「はい! わかりました! それでは二日後の朝7時にギルドまで来てください!」

 ユキミは相変わらず目を伏せてレモンとも目を合わせられなかったが、ギルドの外に出ると、目を輝かせてシュンに言う。

「やったなシュン! 海だぞ!」

「ははは、そうですね。ユキミさん」

 家へと戻ると、シュンは皆に言った。

「ってなわけで、海へ護衛のクエストを受けた。行って帰ってで五日は掛かる。家を空ける準備と旅の準備を二日後までに済ませてくれ」

 チフリは相変わらずの無表情で返す。

「了解しました。シュン先輩」

 ユキミはそわそわしていた。

「な、なぁ。シュン、海には入れるのだろうか?」

 シュンはそんなユキミに言ってやる。

「まぁ、せっかく海へ行くんだし、1日ぐらいは滞在して羽を伸ばしたいよな」

 見てわかるぐらいユキミの顔は明るくなった。

「やった! 実は実家から持ってきた水着があるんだ!!」

 まさか金ビキニかと一瞬思ったシュンだったが、そんな訳ないかと心にしまう。

「そっか、忘れずにな。さて、皆で準備だ!」

 ずっと黙っていたサキタマが話す。

「シュン。おやつを買うから金をくれ!」

「仕方ねえな、ほら、おやつは銅貨3枚までだ」

 そう言って渡そうとするとサキタマは怒り始める。

「のじゃー!! 銅貨3枚じゃ何も買えないのじゃー!!!」



 思い思いに準備を済ませ、とうとうクエストを受ける日になった。

 シュンは指さし確認で家のチェックをする。

「それじゃ、火の元よし、施錠よし! 出発すんぞー」

「おー!! なのじゃ」

 乗ったのはサキタマだけで、ユキミはソワソワして、チフリは無表情のまま黙っている。

 ギルドへ着くと、依頼人との顔合わせだ。

 現れたのは、中年の男性商人達だった。

「おー、あなた達が護衛の冒険者さん達ですか。美しい方ばかりでこりゃ今回は当たりですな」

 はっはっは、と笑いながら言う。

 軽く自己紹介を済ませる、商人達代表の名は『ゴンザレス』と言うらしい。一行はさっそく街を出発した。

 商人たちは4台の馬車を率いて、シュン達はその周りを歩く。

 草原で休憩を入れた際、ユキミは珍しい笑顔で遠くを見ていた。

「この先に、海があるんだな」



(イラスト:毒霧すあま先生)