氷の姫騎士様はメンタル以外最強です!

 ユキミは毛布を顔まで被り、シュンを見つめている。

「それじゃ、俺はこの辺で……」

「ま、まてシュン!!」

 呼び止められて振り返るシュン。

「手を……、手を握ってほしい……」

 弱気なユキミを見て、シュンはクスッと笑う。

「お安い御用で」

 普段はひんやりとしているユキミの手は熱かった。

 しばらく握っていると、ユキミは眠ってしまう。

 それを見届け「おやすみ」と言ってシュンは部屋を後にした。



 翌日、チフリは食事を作ろうと台所に立っていた。

「おう、チフリさん。遅れて悪いな」

 シュンが言うと、いつもは皮肉の一つでも返ってきそうだが、今日はそれが無い。

「チフリさん……って!!」

 チフリは顔が赤く、熱っぽい。軽く咳もしている。

「風邪移ったのか!?」

「なんの事です?」

 明らかに強がって言うが、どう見ても風邪だ。

「チフリさん。寝ておけ、後は俺がやる」

「私はサヴィ家を守る使命があります。この程度で……」

「それだったら、なおさら休め。そんな状態じゃ何もできないだろう?」

 チフリは強情に台所へ立ち続けるが、ふらりと倒れそうになる。

 シュンが慌てて肩をがっちり掴んだ。

「ほら、無理だ!」

「私は、私はお役に立てなければ生きている価値が無い……」

「そんなの知らねえけどよ、チフリさんが生きているだけで価値はあるだろ」

 そんなシュンの言葉にチフリは不思議そうな顔をしていた。

「いえ、私にそんな価値は……。お役に……、立たないと……」

「だから大人しくしとけって! 役に立ちたいならば余計にな!」

 強情を張るチフリをお姫様抱っこして、部屋に運ぶ。

「何するんですか、殺しますよ?」

「そんぐらい元気になったらしても良いぞ」

 普段あれだけ怖いチフリも、こうしてみると軽い少女に感じられた。

 ベッドに寝かすと、毛布を掛けてやる。

「わ、私なんかよりユキミ様を……」

 まだ言い続けるチフリにシュンは笑う。

「わかっている。二人同時に看護ぐらいできるさ」

「っく、ここまで醜態を晒したのならば、腹を切るしか……」

 チフリは熱のせいか、普段から思っているのか、恐ろしい事を口にする。

「アンタが死んだらユキミさんも俺も悲しむ。やめとけ」

 それだけ言ってシュンは朝食を作りに行った。




 朝食が出来上がると、まずはユキミの部屋へ向かう。

 ノックをしたが返事は無い。

「ユキミさん、入るぞー」

 汗ばんで苦しそうに寝ているユキミがそこにはいた。

「ユキミさん、朝メシ食べられそうかい?」

 その言葉に、ぼんやりとユキミは起きる。

「シュンか……」

「あぁ、おはようユキミさん」

 上体を起こすと、服がはだけており、目のやり場に困るシュン。

「ユキミさん、薬と飯置いておくから。チフリさんも風邪引いちゃったみたいでね」

 言おうか迷ったが、言わないわけにもいかないので話す。

「チフリが!? どうしよう、移してしまったのだろうか、私のせいだ……」

「元はと言えばサキタマがスライムに捕まったせいだ。ユキミさんは悪くない」

 案の定自分を責めるユキミ。シュンはまた手を握ってやり、言った。

「それじゃ、チフリさんの所にも行ってくるんで。着替えはここに」

「あぁ、すまない……。チフリの事も頼んだ……」




 シュンはチフリの部屋をノックする。

「はい」

 かすかに声が返って来た。ガチャリとドアを開ける。

「調子はどうだ?」

「大丈夫です」

 強がって言うチフリだったが、顔は赤く、目はうつろだ。

「全然大丈夫に見えないけどな」

 シュンが椅子に座って、食事と薬を机に置く。

「食事は無理して食べなくても良い。ただ薬は飲んでおいてくださいな」

「っく……」

 不服そうな顔をしてチフリは目を閉じる。

「今回は……」

 何かを言いかけたので、シュンは立ち止まった。

「今回だけは感謝しておきます……」

 そう言われ、シュンはハハハと笑った。

「そうかい、感謝されておくよ」