氷の姫騎士様はメンタル以外最強です!

「まずはユキミ様を救ってくださったこと、感謝を申し上げます」

 サヴィ家の従者は頭を丁寧に下げ、礼を言う。

 だが、シュンは訝しげにそれを見ていた。

「感謝を伝えるってんなら、もっとこう。やりようがあったんじゃ……」

 従者は頭を上げ、凛と澄ました顔をシュンに近付けてくる。

 暗さの中でも分かる、口は布で隠していたが、切れ長の目を持つ美人だ。

「いえ、私はユキミ様が知らぬ存在なのです。最初の仲間が見つかるまで、接触は最小限にと申しつけられておりまして」

「なるほど、それで三日も食べてないのを放っておいたという事か」

 シュンは皮肉を一つ言ってやる。

「本当に倒れそうな時はお助けするつもりでした。そこへ、あなた様がユキミ様を助けて下さりました」

「あー。はいはい、それで目的は?」

 従者は本題に移る前に一つ咳払いをして、言った。

「単刀直入に申し上げます。ユキミ様に手を出した場合、失礼があった場合。あなたの首を落とす事になります」

「こわっ!!」 

 従者は目が本気だった。

「ユキミ様は人間関係が少々苦手ですが、そこに付け込まぬようお願い申し上げます」

 シュンはやれやれと両手を上げる。

「分かってるよ、俺もあんな美人と釣り合うだなんて思っちゃいない。俺は楽にクエストが終わって、カネが手に入ればそれでいいの」

 そう口では言っていたが、内心は「部屋、別で取っておいて良かったー!!!」と叫んでいた。

 サヴィ家の従者は立ち上がり、シュンに改めて告げる。

「信じましょう。私は常にユキミ様を監視しています。くれぐれも肝に銘じておいてください。普通の冒険者仲間としてユキミ様をよろしくお願いいたします」

「あぁ、わかったよ……」

「それではおやすみなさいませ。『スリープ』」

 睡眠魔法を掛けられ、再び夢の中へと旅立つシュン。




 朝になり、シュンはうーんと伸びをして目が覚める。

 ボーっとした頭で、昨日の夜の事を思い出していた。

 夢であって欲しかったが、枕元に身に覚えのない金貨が一枚転がっていた。

「夢じゃ……、なかったみたいだな」

 金貨を手に取ってまじまじと見つめる。

 ふと時計を見ると、約束の時間が近かった。

 考えて悩むのは後にしようと思い、シュンは身支度を済ます。

 部屋のドアを開けて、フロントへ行くと、ユキミが椅子に座って待っていた。

「あぁ、お待たせしちゃったみたいですねぇ」

「い、いや、その、大丈夫……」

 ユキミは立ち上がって言う。

「その、一緒にギルド……。行こうと思って」

 思わずそのセリフにシュンはときめきそうになるが、自分の首の心配をし「いかんいかん」と気持ちを落ち着かせる。

「それじゃ、ギルドで何かクエストを見つけましょうかね」

 二人は宿屋の外に出た。日差しが眩しくて、シュンは目を細める。

「そういえば、ユキミさんって出身はどちらで?」

「あ、えと『カシワダイ』って所で……」

 ユキミの言った地名をうーんと記憶の中で照らし合わせてみた。

「なんか聞いた事あるな……。北の方の国でしたっけ?」

「そう……」

 ユキミは短く返すが、シュンはコミュニケーションを試みる。

「やっぱ北の国って雪がすごい降ったり寒かったりで大変でしょう」

「えと、うん。大変……」

 美人と歩くのは気分が良いが、会話が続かないのが気まずかった。