翌日、俺はまたしても教室にいる大神を視線で追いかけていた。
委員長として黒板の前に立っていた大神を、凝視してしまう。
この前あった体育祭のアンケート結果を話しては「このクラスがダントツでクレームが多かった」と爽やかに笑っていた。
クレームは、『声がでかい』『動きが激しい』『女の子みたいな子がいて種目に集中できなかった』などといったものがメインで、最後はどうやら俺らしい。
「まあ、みんな小鳩に夢中だったってことで」
そう締めくくった大神と目が合い、ついドキッとしてしまった。
なんか、ずっと変だ。
「……俺、欲求不満なんかな」
「開口一番にそれか。姫が言うもんじゃねえよ」
白井はスマホから顔を上げて、げんなりした顔で言った。
「なんていうか、人肌が恋しい季節に入ってきてんじゃん」
「まあ秋だからな」
「俺も誰かに温めてもらったら、いろいろ解決するのかなと」
「んじゃ、手っ取り早く彼女作るしかないだろうよ」
彼女か……。
言われてみれば、最近は大神との関わりが増えている。
だから余計に大神のことばかり考えてしまうのだろうか。
女の子と関われば、大神への気持ちもスッキリする……?
「でも、女の子との接点はないしなあ」
「あ、だめだ。姫には女を知ってほしくない」
「なんで」
「姫は姫なんだよ。俺らのオアシスがなくなるだろ」
「勝手な理想を押し付けんなよ」
俺が眉をひそめると、白井は大げさにため息をついた。
「いや、だってお前に彼女できたらさ……『姫』キャラが崩れるじゃん」
「べつに崩れてもいいと思うんだけど。そもそも俺が望んで作ったキャラじゃないし」
「おー、こじれてんなあ」
愉快だと笑う白井。それから、「でもなあ」と納得がいかない顔をする。
「姫には姫でいてもらいたんだよ」
「友達としてどうなの、今の発言って」
白井は肩を揺らして笑い、再びスマホに視線を戻す。
その横顔を睨みつけながら、俺は机に突っ伏した。
もし俺に彼女ができたら、大神とのことを考えなくなるんだろうか。
「……やっぱ俺、ちょっとおかしいのかな」
白井が俺の様子に気づいたのか、横目でニヤリと笑った。
「まあ、こういうときは体を動かすのが一番だな」
「その顔、どうせまたボウリング行こうとか言い出すんだろ」
「いいじゃん、べつに」
「俺、ボウリングだけはできないんだよ」
「ボウリングっていうか、運動全般無理じゃね?」
「……走るのは得意」
そう、鬼ごっこが得意だったし、走ることだけは自信が持てる。
だからといって高校生にもなって「鬼ごっこしよう」なんて言えるわけない。
「まあ姫にはずっと女を知らずに姫でいてほしいけどな」
「さすがにそれは自分の人生としてどうなんだろう」
正直、姫とかって今だけなんだろうし。これから社会に出たら「姫」なんて呼ばれなくなるだろう……と期待はしたい。
「よし、予約完了」
「え、もしかしてボウリングじゃないよな?」
「またまた~違うに決まってるじゃないっすか~」
「……絶対ボウリングだな」
「まあまあ。そんな心配すんなって。俺は姫一筋だから」
「そのノリいいって」
「そうなの? なんだ、求めてんのかと思ったのに」
へいへいと言いながら、すぐにスマホを操作している。
「だからボウリングだろ」
「ちがいます~そんなもの知りません~」
とか言いつつ、ボウリングのポーズをするあたり、どう考えても行き先はひとつだ。
なんで俺の言うことをきいてくれないのか。どう考えてもおかしい。
「おい、大神ってば聞いてんのかよ」
少し離れたところから大神の名前が聞こえて、自然と反応してしまった。
今日も今日とて大神は人に囲まれている。どうして大神の周りには華があるような人間ばかりが集まるんだろうか。自分があそこにいるという想像ができやしない。
「ああ、なんだっけ。聞いてなかった」
「なんでだよ!」
珍しく大神が人の話を聞いていなかったらしい。なにかに気を取られていたのか?
……あ、もしかして白井とか?
いきなりボウリングの素振りを始めるから、つい見ていたとか?
大神は俺が白井と一緒にいるときのことを気にしていた。
改めて考えても、白井とはべつに普通だ。友達って言われたらそんなものだし、俺を姫扱いしてくる以外はべつに変なところもないと思う。
委員長として黒板の前に立っていた大神を、凝視してしまう。
この前あった体育祭のアンケート結果を話しては「このクラスがダントツでクレームが多かった」と爽やかに笑っていた。
クレームは、『声がでかい』『動きが激しい』『女の子みたいな子がいて種目に集中できなかった』などといったものがメインで、最後はどうやら俺らしい。
「まあ、みんな小鳩に夢中だったってことで」
そう締めくくった大神と目が合い、ついドキッとしてしまった。
なんか、ずっと変だ。
「……俺、欲求不満なんかな」
「開口一番にそれか。姫が言うもんじゃねえよ」
白井はスマホから顔を上げて、げんなりした顔で言った。
「なんていうか、人肌が恋しい季節に入ってきてんじゃん」
「まあ秋だからな」
「俺も誰かに温めてもらったら、いろいろ解決するのかなと」
「んじゃ、手っ取り早く彼女作るしかないだろうよ」
彼女か……。
言われてみれば、最近は大神との関わりが増えている。
だから余計に大神のことばかり考えてしまうのだろうか。
女の子と関われば、大神への気持ちもスッキリする……?
「でも、女の子との接点はないしなあ」
「あ、だめだ。姫には女を知ってほしくない」
「なんで」
「姫は姫なんだよ。俺らのオアシスがなくなるだろ」
「勝手な理想を押し付けんなよ」
俺が眉をひそめると、白井は大げさにため息をついた。
「いや、だってお前に彼女できたらさ……『姫』キャラが崩れるじゃん」
「べつに崩れてもいいと思うんだけど。そもそも俺が望んで作ったキャラじゃないし」
「おー、こじれてんなあ」
愉快だと笑う白井。それから、「でもなあ」と納得がいかない顔をする。
「姫には姫でいてもらいたんだよ」
「友達としてどうなの、今の発言って」
白井は肩を揺らして笑い、再びスマホに視線を戻す。
その横顔を睨みつけながら、俺は机に突っ伏した。
もし俺に彼女ができたら、大神とのことを考えなくなるんだろうか。
「……やっぱ俺、ちょっとおかしいのかな」
白井が俺の様子に気づいたのか、横目でニヤリと笑った。
「まあ、こういうときは体を動かすのが一番だな」
「その顔、どうせまたボウリング行こうとか言い出すんだろ」
「いいじゃん、べつに」
「俺、ボウリングだけはできないんだよ」
「ボウリングっていうか、運動全般無理じゃね?」
「……走るのは得意」
そう、鬼ごっこが得意だったし、走ることだけは自信が持てる。
だからといって高校生にもなって「鬼ごっこしよう」なんて言えるわけない。
「まあ姫にはずっと女を知らずに姫でいてほしいけどな」
「さすがにそれは自分の人生としてどうなんだろう」
正直、姫とかって今だけなんだろうし。これから社会に出たら「姫」なんて呼ばれなくなるだろう……と期待はしたい。
「よし、予約完了」
「え、もしかしてボウリングじゃないよな?」
「またまた~違うに決まってるじゃないっすか~」
「……絶対ボウリングだな」
「まあまあ。そんな心配すんなって。俺は姫一筋だから」
「そのノリいいって」
「そうなの? なんだ、求めてんのかと思ったのに」
へいへいと言いながら、すぐにスマホを操作している。
「だからボウリングだろ」
「ちがいます~そんなもの知りません~」
とか言いつつ、ボウリングのポーズをするあたり、どう考えても行き先はひとつだ。
なんで俺の言うことをきいてくれないのか。どう考えてもおかしい。
「おい、大神ってば聞いてんのかよ」
少し離れたところから大神の名前が聞こえて、自然と反応してしまった。
今日も今日とて大神は人に囲まれている。どうして大神の周りには華があるような人間ばかりが集まるんだろうか。自分があそこにいるという想像ができやしない。
「ああ、なんだっけ。聞いてなかった」
「なんでだよ!」
珍しく大神が人の話を聞いていなかったらしい。なにかに気を取られていたのか?
……あ、もしかして白井とか?
いきなりボウリングの素振りを始めるから、つい見ていたとか?
大神は俺が白井と一緒にいるときのことを気にしていた。
改めて考えても、白井とはべつに普通だ。友達って言われたらそんなものだし、俺を姫扱いしてくる以外はべつに変なところもないと思う。


