ずっと、ずっと

 要の実家は江戸時代から続く酒造メーカーだ。高等部を終えたら杜氏の修行をするために戻る予定だと教えてくれた。
 いつのまにか自分の知らない世界を教えてくれる要といることが楽しい、と感じるようになっていた。そして気がつくと円城寺のことが頭から離れていた。
 二人が話している様子をいつもの席からじっと見つめている円城寺の視線に気づかないほどに。

 クラスの違う円城寺とは離れようと思えば離れることができた。放課後は授業が終わるとそそくさと部屋に篭る。なにより要が何かと話しかけてくるから気がつけば三日間、円城寺と話すことはなかった。
 それでも週一回の生徒会執行部では顔を合わせないわけにはいかない。この頃になると斎川と円城寺が一緒にいないことに気がついた生徒たちがいて、執行部内も腫れ物を触るような空気感になっていた。

 今日もそんなピリついた中、ミーティングが開かれていた。斎川は隣に座る円城寺の視線をことごとくかわして、必要最低限の話しかしない。
「……というわけで、今日の議題は以上。他に報告がある委員長は挙手して」
 執行部の司会は斎川の仕事だ。挙手する委員長がいないことを確認し、執行部会を終えようとしたとき……
 すっと隣から手が伸び、斎川は眉をひそめる。
「……生徒会長。何か」
「来年の生徒会執行部の選挙なんだけど、推薦の話が出てるんだ」
 夕凪学園では代々現役の生徒会執行部が次期執行部を指名する。優秀な生徒を執行部に任命することで、夕凪学園生徒会執行部の威厳を保っているのだ。だが任命する時期はまだ先。斎川をはじめ他の委員長たちも首を傾げた。
「ご実家の都合で急遽、学園を後にする委員長がいてね。その彼の空いた穴を埋めてもらうことになって。三組の佑月颯にお願いすることになった」
 斎川はその名を聞いて、スッと血の気が引いた。倒れてしまいそうな体をなんとか平常心で支える。まわりの委員長たちもざわめいたが、彼の秀才ぷりと人格者ぷりは数ヶ月にして広まった。だから驚きつつも納得したのだ。
 そして斎川は予感がしていた。佑月はとことん、斎川から円城寺との居場所を奪っていくらしい。それは佑月本人がしていることではないのは分かっているのだが。
「承知しました。では、諸々手続きを準備いたします」