ずっと、ずっと

 背後から聞き覚えのある声がして振り返ると、その先には手を大きく広げた円城寺がいた。そして斎川の横を擦り抜け、目の前の佑月に抱きついたのだ。
 (な、なんだ?)
 円城寺の突然の行動に目を見開いていると、さらに驚くべきことが起きた。抱きつかれた佑月が笑顔を見せて円城寺の両頬を掴み左右に伸ばすと……
「久しぶりだな、冬留(とおる)
 自分でさえまだ呼べない円城寺の名前を、佑月が呼んだのだ。
 
 転入生があの生徒会長の頰を掴んで伸ばしていた、という噂はあっという間に広がり、佑月は校内で有名になった。ただならぬ転入生の家柄もまた、ただならぬものだった。
「佑月流の家元?」
 それを教えてくれたのは円城寺だった。佑月流とは華道の流派で、日本三大流派の一つだ。佑月本人は家督を継ぐ立場ではないが、母親が溺愛していて中々寮生活を認めなかったらしい。そしてなにより斎川が驚いたのは、円城寺家と佑月家は近所だったらしく、つまり二人は幼馴染ということだ。
「ハヤはさ、いつも僕を頼ってきてさあ」
「お前がだろ! 泣いてばかりだったくせに」
 夕食後の群青寮談話室。当分会っていなかった幼馴染の二人は真ん中にいる斎川のことなんて忘れたかのように盛り上がっていた。今まで夕食は円城寺と二人で食べていたのだが、佑月が来て自然と三人でとるようになっていた。それだけではなく、昼食や放課後、休日まで円城寺がいるところに必ず斎川がいたその間に、佑月がいるようになったのだ。
 久々にあった幼馴染なんだから仕方ないことだ、と斎川は我慢していたのだが、一週間経っても一か月経っても佑月は離れない。生徒の間では『円斎(えんさい)コンビ』が『円斎佑(えんさいゆう)トリオ』なんて呼ばれるようになっていた。斎川が円城寺と二人でいられるのは生徒会執行部の時くらいだ。
「見事に自分から円城寺くんを取られちゃったねぇ」
 生徒会室で執行部会を始める前、円城寺がまだいない時に要がニヤニヤしながら斎川にそう言ってきた。図星ではあるが、斎川は別にと答える。
佑月(あいつ)のほうが付き合いが長いんだ。仕方ないだろう」
「まあね。いやそれにしても仲良しだこと」
 要の言葉にイライラが止まらず、その横顔を睨みつけているとガラリと部屋の扉が開き円城寺が入ってきた。
「悪い、遅くなった!」