自転車の貸出申請をするたびに、鍵を渡すのを渋る江坂。何せ、夕凪学園の生徒が事故やあらぬ事件に巻き込まれては大問題に発展するのは目に見えている。特に円城寺はかなりの資産家なので、そういった犯罪にも巻き込まれないか大人たちは心配してくるのだ。だが本人は外出したくてたまらないようだ。
「大丈夫だって。なんかあったら斎ちゃんが助けてくれるし。なあ?」
「さあな」
「ひっどーー」
(助けるに決まってるじゃないか)
ヘルメットを被り、夕日の街を自転車で走る二人。先を行く円城寺の背中。自分より少し小さな体を斎川はずっと守りたいと思っている。ただ、夕凪学園を卒業したら各々活躍する場所は別であるしその先には家庭を持つだろう。斎川の抱く円城寺への想いは到底許されない……なんてことは、考えていない。
夕凪学園には同性カップルはたくさんいるし、世間だって容認しつつあるのだ。障害があるとすれば円城寺家に見合う男でなければならない、ということ。そのために斎川は経営学など身につけ恥じることない自分に作り上げている。全ては円城寺のために。
やがて本屋に到着したが、お目当ての小説は売り切れていて円城寺はがっくりと肩を落とした。だが他のラノベ小説で面白そうなものを発見した彼はそれを買いご機嫌になっていた。本屋を出たあとはしばらく街を歩く。その間も円城寺のおしゃべりは止まらない。
「そう言えば斎ちゃん、例の件覚えるよね?」
「当たり前だろ、耳にタコができるくらい言われてるし俺も楽しみなんだから」
「ひひっ。早く休み来ないかな」
例の件、とは二人でちょっとした冒険をする約束。大したことではないが、円城寺にとって生まれて初めての体験だ。それは『電車に乗り出掛ける』こと。小さな頃から移動は全て運転手付きの車だった円城寺は電車に乗ったことがない。高等部になれば休暇に電車での外出が認められるから、出かけたい、と中等部の頃から言っていた。斎川は普通に電車を利用しているから、円城寺のお供としてほぼ強制的に付き合わされる訳だが、ある意味デートのようなものだとこちらも違う意味で楽しみにしているのだ。
外出申請を提出し、承認がおりて次の夏期休暇に隣の市まで行く。二時間くらいの冒険だ。
「楽しみだなあ」
夕陽に向かう愛おしい背中を見つめながら、斎川はこの穏やかな日々が幸せだ、と感じていた。
「大丈夫だって。なんかあったら斎ちゃんが助けてくれるし。なあ?」
「さあな」
「ひっどーー」
(助けるに決まってるじゃないか)
ヘルメットを被り、夕日の街を自転車で走る二人。先を行く円城寺の背中。自分より少し小さな体を斎川はずっと守りたいと思っている。ただ、夕凪学園を卒業したら各々活躍する場所は別であるしその先には家庭を持つだろう。斎川の抱く円城寺への想いは到底許されない……なんてことは、考えていない。
夕凪学園には同性カップルはたくさんいるし、世間だって容認しつつあるのだ。障害があるとすれば円城寺家に見合う男でなければならない、ということ。そのために斎川は経営学など身につけ恥じることない自分に作り上げている。全ては円城寺のために。
やがて本屋に到着したが、お目当ての小説は売り切れていて円城寺はがっくりと肩を落とした。だが他のラノベ小説で面白そうなものを発見した彼はそれを買いご機嫌になっていた。本屋を出たあとはしばらく街を歩く。その間も円城寺のおしゃべりは止まらない。
「そう言えば斎ちゃん、例の件覚えるよね?」
「当たり前だろ、耳にタコができるくらい言われてるし俺も楽しみなんだから」
「ひひっ。早く休み来ないかな」
例の件、とは二人でちょっとした冒険をする約束。大したことではないが、円城寺にとって生まれて初めての体験だ。それは『電車に乗り出掛ける』こと。小さな頃から移動は全て運転手付きの車だった円城寺は電車に乗ったことがない。高等部になれば休暇に電車での外出が認められるから、出かけたい、と中等部の頃から言っていた。斎川は普通に電車を利用しているから、円城寺のお供としてほぼ強制的に付き合わされる訳だが、ある意味デートのようなものだとこちらも違う意味で楽しみにしているのだ。
外出申請を提出し、承認がおりて次の夏期休暇に隣の市まで行く。二時間くらいの冒険だ。
「楽しみだなあ」
夕陽に向かう愛おしい背中を見つめながら、斎川はこの穏やかな日々が幸せだ、と感じていた。



