ーー好きな子がいる。しかも相手がこちらに好意があるのは分かっているけど発展しない。どうしたら振り向くか分からない。
そんなことを、一年前に幼馴染である冬留が呟いた。佑月が関高校がつまらないと愚痴っていた時期に。
『やっぱりドラマチックな刺激がないとダメなのかなあ。突然仲のいい友達が転入してくるとか』
電話先でそれを聞き、佑月は『転入してくる友達』が自分のことを言っているのだと気がついた。
小さな頃から冬留は佑月に頼っていた。兄しかいない佑月はまるで弟ができたような感覚で彼を可愛がっていた。それは年齢を重ねても同じ。
たまに冬留に感じるしたたかでわりと強引な性格。そしてそれに従ってしまう自分。きっと冬留は天性の『人たらし』なのだ、と佑月は苦笑いした。
『……いいよ、冬留。俺がお前の恋愛成就させてやる』
夕方の図書館。円城寺の姿があった。調べ物をするために本棚に手を伸ばすが、背伸びをしても目当ての本に届かない。しばらく格闘してみたものの、どうにも取れないので司書にとってもらうかと円城寺が諦めて手を下ろした時、背後から腕が伸びてきて、その本を取った。円城寺が振り向くと視線の先には斎川がいた。
「ほら」
本を渡すと、円城寺は俯くと無言で斎川の胸を数回、拳で叩いた。
「痛い」
「……遅いよ、ばか」
その声は掠れていた。斎川が顔を覗き込むと、円城寺の目が潤んでいた。
「ずっと話しかけてこないかもと思ったじゃないか」
ああ泣かせてしまった、と斎川は思いながらもその瞳にゾクリとする。俺と離れて泣くほど寂しかったのかな、と思うと麻薬のように全身が痺れ、クラクラした。そして次の瞬間、斎川は両手で円城寺の体を包み込み抱きしめた。
「ごめん、円城寺……俺お前に言わなきゃいけないことがあるんだ」
円城寺の肩に顔を埋め、そう呟く斎川。斎川の体にゆっくりと手を回しながら、円城寺は口元を緩めほくそ笑みを浮かべた。潤んだ瞳とは対照的な微笑み。しかしそれは斎川からは見えない。
「なに?」
「俺、佑月にお前を取られたくない」
いつも冷静な斎川の声がうわずっていた。心臓が口から出てしまいそうな感覚。それでも絞り出すように、言葉を紡ぐ。
「幼馴染で仲がいいのは分かってる。だけど……いやだからこそ嫌なんだ」
そんなことを、一年前に幼馴染である冬留が呟いた。佑月が関高校がつまらないと愚痴っていた時期に。
『やっぱりドラマチックな刺激がないとダメなのかなあ。突然仲のいい友達が転入してくるとか』
電話先でそれを聞き、佑月は『転入してくる友達』が自分のことを言っているのだと気がついた。
小さな頃から冬留は佑月に頼っていた。兄しかいない佑月はまるで弟ができたような感覚で彼を可愛がっていた。それは年齢を重ねても同じ。
たまに冬留に感じるしたたかでわりと強引な性格。そしてそれに従ってしまう自分。きっと冬留は天性の『人たらし』なのだ、と佑月は苦笑いした。
『……いいよ、冬留。俺がお前の恋愛成就させてやる』
夕方の図書館。円城寺の姿があった。調べ物をするために本棚に手を伸ばすが、背伸びをしても目当ての本に届かない。しばらく格闘してみたものの、どうにも取れないので司書にとってもらうかと円城寺が諦めて手を下ろした時、背後から腕が伸びてきて、その本を取った。円城寺が振り向くと視線の先には斎川がいた。
「ほら」
本を渡すと、円城寺は俯くと無言で斎川の胸を数回、拳で叩いた。
「痛い」
「……遅いよ、ばか」
その声は掠れていた。斎川が顔を覗き込むと、円城寺の目が潤んでいた。
「ずっと話しかけてこないかもと思ったじゃないか」
ああ泣かせてしまった、と斎川は思いながらもその瞳にゾクリとする。俺と離れて泣くほど寂しかったのかな、と思うと麻薬のように全身が痺れ、クラクラした。そして次の瞬間、斎川は両手で円城寺の体を包み込み抱きしめた。
「ごめん、円城寺……俺お前に言わなきゃいけないことがあるんだ」
円城寺の肩に顔を埋め、そう呟く斎川。斎川の体にゆっくりと手を回しながら、円城寺は口元を緩めほくそ笑みを浮かべた。潤んだ瞳とは対照的な微笑み。しかしそれは斎川からは見えない。
「なに?」
「俺、佑月にお前を取られたくない」
いつも冷静な斎川の声がうわずっていた。心臓が口から出てしまいそうな感覚。それでも絞り出すように、言葉を紡ぐ。
「幼馴染で仲がいいのは分かってる。だけど……いやだからこそ嫌なんだ」



