ずっと、ずっと

 思わず体を起こそうとしたが、バレーボールが衝突した左腕に痛みが走り顔を歪める。
「大人しくしていた方がいいよ」
 保健師は研修で、代わりの先生を呼んでいるから、と佑月が教えてくれた。少し痛む腕をさすりチラッと彼を見る。円城寺と三人でいた時からあまり直接話することがなく、初日に学園を案内した日が一番話したのではないかと思うほど。そんな佑月がこうやって保健室まで抱えてくれたことがなんだか申し訳なく感じてきて、ベッドの横に椅子を持ってきて座っている佑月に話しかけた。
「運んできてくれて、ありがとう」
「目の前だったからね。それに斎川なら抱えられそうだったし」
「それは余計だろ」
 佑月はわざと軽口を叩いたのだろう。その気遣いにホッとして斎川も答えた。
「めまいとかしてない?」
「ああ。大丈夫」
「よかった。斎川に何かあったら冬留が悲しむからさ」
 その言葉を聞いていったん緩みかけた気持ちがにわかに緊張する。そして斎川はポツリと呟いた。
「佑月は、円城寺を追って夕凪学園に?」
 椅子を引き、ベッドに近づいて佑月は笑顔を見せた。
「そんなわけ無いだろ。関高校に飽きたから来ただけ。それに冬留に親友ができた、毎日楽しいって聞いていたから羨ましいなって思ってさあ」
 言葉を発さない斎川の肩を、佑月はポンと叩いた。

「冬留は今のこの状況にかなり参っているよ。このまま放っておくなら、俺がさらうけどいい?」
「……だめだ」

 斎川は佑月を睨みつけて、言葉にはっきりと答えた。一瞬、佑月は驚いた顔を見せたがすぐに笑顔になった。しばらくすると戸が開き、教師と一緒に要が入ってきた。
「先生、連れてきた。調子はどう?」
「大丈夫だよ、ありがとう」
 教師が斎川の手当てを始める。
 佑月は椅子から立ち上がり、要の側に立ち小さな声で呟く。
「君の恋路、邪魔してごめんね?」
「ふん。口だけだろ。……いつから気がついてた」
「転入した当時からさ。君があの二人を見ているときの顔つきに違和感があったし、最近のベタつきは分かるでしょ」
「呑気そうな顔してるのになあ、お前。怖いわ」
「ははっ。褒め言葉だと受け止めておくよ」
「恋路を邪魔したんなら、お前からそれなりの対価はもらえるんだろうな?」
「……どうだろうね」
 ニヤっと笑う佑月に要も口元を緩めた。
「顔は好みじゃないけどさ、その性格嫌いじゃない」
「そう? じゃあ対価、あげようかな」