ずっと、ずっと

 斎川は震える手を押さえた。何も答えない円城寺に、生徒会室は冷蔵庫のように空気が凍ってしまう。そしてその他には議題がないため解散となり、円城寺は斎川に声をかけることなく部屋を出ていく。
 一人、部屋に残った斎川はこめかみを押さえる。どうして自分が佑月の推薦の準備をしなければならないのか。拳を握りながらもやり場のない気持ちはどこにも吐き出せない。さっきまで円城寺が座っていた椅子を見つめ、そっと撫でた。
 すると誰かの足音が部屋に近づいてきたので、慌てて手を離す。からり、と戸が開き入ってきたのは要だ。
「……要、忘れものか?」
 入ってきた要は斎川が触れていた椅子にどかっと座り、顔を覗き込んだ。
「斎川、お前顔が白いぞ」
 佑月がらみで斎川と円城寺がうまくいっていないことに気づいている彼。さっきの円城寺とのやりとりを見て気になり、戻ってきたのだろう。最近なにかと要が自分のことを気にかけていることに感謝しつつも、斎川は不思議に思っていた。クラスメイトで生徒会執行部の仲間だが今までは言葉を少し交わす程度。なのになぜこんなにするのか。それほど斎川が弱く見えているんだろうか。
「頭が痛くてね、少し休んでいたけど。もう大丈夫」
「まあ、佑月が推薦されるとは思わなかったもんな。……生徒会長とはまだ仲直りしてないんだ?」
「……喧嘩しているわけじゃない」
「ふぅん。でも、このままじゃ円城寺とられるよ」
「……」
 斎川は要から顔を背ける。分かっているのだ、円城寺を避けたところで、何にもならない。自分の態度が事態を悪化させているのだ。小さな綻びがどんどん広がっていく。何も答えない斎川を見て、要はほんの少し口元を緩めた。
「円城寺が好きなんだろ?」
 突然、ストレートに言われて、斎川は息を呑んだ。バクバクと鼓動が激しくなる。なぜ要にバレているのか。動揺を隠せない斎川に要は追い討ちをかけた。
「そりゃ分かるよ。あんなにいつも一緒にいるしさ。まあそれだけじゃ皆は分からないだろうけど、俺は分かる」
 斎川の顔を覗き込み、机の上の斎川の手を握る。そしてフッと笑い要は信じられない言葉を放った。
「俺は斎川を見てきたからね」
 それが何を意味しているか、すぐ理解した。斎川に近づき何かと気を遣ってくれた理由。添えられた手。熱い眼差し。窓の向こう、鳥の鳴き声がやけに大きく聞こえた。