ずっと、ずっと

 その学園は街を一望できる丘にある。『夕凪学園(ゆうなぎがくえん)』は中学から大学まで男子のみの全寮制学園で、敷地には校舎、講堂、四階建の寮があり生徒たちが生活している。
 大正時代に設立され、実家が名家や会社経営者といったいわゆる富裕層が多いのが特徴だ。卒業生は経営者や政治家、オリンピック選手や芸術家などを輩出しており、学園の名を轟かせていた。
 手入れの行き届いた芝生と樹木には自然との共存を掲げている学園の想いが込められており、新緑が眩しいこの季節はさらに輝いて見える。
 校舎の奥に小さな公園があり、その先に寮が三つそびえ立っていた。紺碧寮が中等部、群青寮は高等部、青藍寮には大学部の生徒たちが住んでいる。一番人数が多いのは群青寮で次が紺碧寮。大学部になると一人暮らしする生徒が多いため青藍寮は広々と使われている。
 そんな新緑が見渡せる群青寮の三階に斎川正孝(さいかわまさたか)の部屋はあった。
 斎川は中学生で親元を離れ、いまは夕凪学園の群青寮で暮らしていた。朝日が差し込む窓の外から聞こえる小鳥の囀りの中、廊下を進み、食堂に向かっているとすれ違った下級生たちから声が上がる。
「おはようございます、斎川先輩」
「おはよう」
 斎川は高等部の二年生で、生徒会執行部の副会長だ。それゆえに挨拶をされることが多くなかなか食堂まで辿り着けない。学年トップクラスの頭脳のうえに、黒の短髪で清潔感あふれる風貌。弓道部では個人種目で全国大会出場したこともあった。名家揃いの夕凪学園にあって、斎川の父が営む会社はそれほど規模が大きくないがそれでも副会長に選ばれているのは本人の努力と才能なのだろう。生徒からはもちろん、教師たちからも熱い信頼を寄せられていた。男子校であるにも関わらず彼のファンクラブなるものが密かにあるほどだ。
 ようやく食堂に辿り着き、毎朝ルーチンにしている和食メニューを手に取ると窓際の席に座った。隣には赤毛に近い茶色の柔らかな髪をした生徒がいる。黒髪で直毛の斎川と対照的だ。彼は斎川に気がつくと微笑む。
「おっはよ、斎ちゃん」