愛され婚活するならお天気雪の日、九尾の妖狐をお相手に。

 お祭りのお囃子で聞くような、そんな涼やかな音だ。今はもう年も越して、そんな時期ではない。だから、とても不思議だった。

 鈴の音……本来、聞こえていないはずもないものが、聞こえているような気がして。

 これは、気のせいだよね……?

 いま我が身に起きている不思議を解明するには、出勤時間までの時間が少なすぎる。遅刻も嫌だし不意な有給休暇は、その後の自分の首を絞める。

 これは、聞かなかったことにしよう。そうしよう。だって、社会人の私の朝は、あまりにも時間がなさ過ぎる。

 さくさくと良い音を立てて前へ進むと、私の目の前に、半透明の花嫁行列が見えた。

 ゆっくりと進む異形たちの行列。彼らのは姿はそれぞれでありながら、白い狐の仮面を身に付けていた。

 ……最初は、何かの見間違いかと思った。けれど、そうではなかった。

 見えないはずのものが見えてしまっている私は、十字路の前で立ち尽くすしかない。

 何故かって……? だって、私はただの人間だ。明らかに人外に見える異形たちの、狐の仮面を被った半透明な行列を知らないままで横切るなんて出来るわけがない。