愛され婚活するならお天気雪の日、九尾の妖狐をお相手に。

「寒い……」

 玄関のノブを回して思わず出た言葉は、白い息と共に冷たい風に散った。

 何年間に一度という寒気が日本に流れ込み、二日前ほどから急激に気温が下がった。この地域では珍しいくらいに、零下を越すような寒い日が続いた。

 寒い……寒くて、外には出たくない。けれど、仕事は私の都合を考慮してはくれない。

 毎月振り込まれる給料がなければ、一人暮らしは出来ない。社会人となり歯車のひとつに組み込まれれば、寒いという感情だけでは休めない。

 けど、私個人の意見としては生理休暇があるくらいだから、気温低下休暇があっても良いと思う。

 出来るだけ着込んで貼るホッカイロでお腹と背中をサンドイッチしているけれど、驚くべきことにまったく温かい気がしない。普通。暖かいホッカイロにサンドイッチされて、それが普通なのだ。

 このホッカイロがなかったら、もっと寒いってこと……? 私はなんだか今日の寒波の恐ろしさに気が付いて、背筋がゾッとしてしまった。

 通勤のためのバス亭までは、徒歩で十分程度だ。そこから三十分ほどバスに揺られ、電車に乗り換えて一時間。通勤に片道二時間。