また、朝が来た。
今日は晴れた。少し雲は残っているけど。
「昨日ね、少し踊ってみた。送っていい?」
「見せて。楽しみだ」
最近流行のロックダンスの曲だ。
テンポ感のある曲、かっこいいダンス。
凛帆らしい。
一つ一つの音を大事に、はめて踊るダンスが、好きなんだ。
「いいね」
「これが初投稿の動画でいいかな? 少し不安」
「十分すぎるほどよ。めっちゃいい」
「本当?」
「ほんと」
凛帆は照れくさそうに笑った。
頬が赤く色付く。
「たくさん踊って、撮って、送ったら投稿してくれるの?」
「うーん。とりあえず、撮れる分だけ撮って。まずはこれを編集する。明日までに。それで、一緒に見てから投稿しよ」
「なんか、マネージャーみたい」
「今日から私は凛帆の専属マネージャーになります」
小さく、敬礼をしてみた。
「ありがと~」
「もちろん~」
横断歩道を、渡る。もう、学校に着く。
「今日さ、委員会長引きそうだから一緒に帰れないの」
凛帆は衛生委員会を務めている。毎週金曜日、活動があるそうだ。
ちゃんと曜日ごとの出来事は残っているからかろうじて曜日は忘れずにいられる。
「そうなの?」
「うん。明日会える? 学校休みじゃん」
「いいよ。じゃあ、明日が初投稿の日だね」
凛帆はそっと、笑った。
「いつもの河川敷にするか。話すの」
いつもの河川敷。友達になってからよく過ごした場所。私が初めて死にたいという気持ちを打ち明けたのも、この場所だった。
『凛帆』
『ん?』
『言いたいことあるの』
『なになに。怖い怖い』
『そうだね。怖いと思う』
『じゃあ、覚悟して聞く』
ひたすらに青く染まった空の下。
『何かあったの?』
『あったとかじゃないの。ずっとあるって感じ』
『なにが?』
『希死念慮』
『え?』
一瞬、時を止めた感覚がした。
『ずっと死にたいって思ってるの』
『リスカ、とかしてるの?』
『よく知ってるね。そうね。してるよ』
『してるのか……』
『最近、自殺しちゃいたい、消えちゃいたいって思うことが多いの』
『うん』
ずっと一定のテンションで聞いてくれている。
『ようやく言えた……』
『泣かないでよ』
『そっちこそ泣かないでよ』
『ずっとしんどかったでしょ』
『しんどかった。苦しかった。誰にも、言えなかった』
『あのさ、私は今、希咲の話を聞いた。でも、希咲の求めている言葉を伝えられる気がしないの』
『急すぎたよね。ごめん』
『謝んなくていいよ。むしろ、ありがとう』
『え?』
感謝の言葉を言われるとは思っていなかった。
『初めてなんでしょ? このこと話すの、私が初めてなんでしょ?』
『うん』
『それが、嬉しいの。私から言えること、それは話してくれてありがとうってこと』
『うぅ……』
『泣きな。泣きたかったんだよね』
『また、しんどくなったら、話してもいい?』
『私でよければ』
『ありがとう……』
『もう、我慢はだめだからね』
『うん』
「じゃ、また明日」
「うん。また明日」



