「隕石、落ちるんだってね」
希望が一つもない言葉。
いつもの通学時間が重苦しいものとなった。
今朝のニュースで大々的に取り上げられた話題。
隕石衝突・地球滅亡
かなり前のこと。磁力がおかしくなり、地球上のすべての時計が止まった。正確な日時がわからなくなった。
宇宙について研究しているチームが隕石を発見し、すべての宇宙に関する会社や研究者が集まって検証を進めた。やがて確定となり、取り上げられた。
ただ、時計が止まったことで正確な日時が導けない。いつ終わるかがわからない。
「ようやく死ねる。嬉しいな」
重苦しい空気を中和させるために言葉を出してみたけど、もっと暗くなってきた。
曇り空、もうすぐ雨が降りそうだ。好きじゃない天気だ。
これは一つの予兆なのだろうか。
「やっぱり、そう言うよね。前から言ってたよね。全員まとめて死んだら一番だな、って」
確かにそう言ったことがあった。
隣にいる彼女――凛帆――は記憶力がいいな。やっぱり。
私には希死念慮がある。この言葉を知ったのは持ち始めてからかなり後のことだったけど。
私にとって、死ぬことは人生のゴールだった。
誰にとってもそうではある。
だって、人生は「生」から始まり、「死」で終わる。
私は、出来る限り、早く死にたかった。
生きることに意味を見出せない。希望が無い。
――あの日から、私の人生は終わった。
「私が望んでいたこと、ようやく叶う。でも、凛帆は本望じゃないでしょ。将来に希望を持っているもんね」
「そうね。夢、あるからね。私。叶えられないのか」
凛帆には夢がある。ダンスで世界を笑顔にすること。去年、中学二年生の時に教えてくれた。
大きな夢だなって思った。良いなって思った。生きたいって思えているの、良いなって思った。
いつも凛帆は輝いている。この前の体育でのダンス発表会ではまるでスポットライトが当たっているような存在感があった。
夢を語るときにはいつも笑顔で。生命を感じていた。
そばにいるのに、遠くにいるようだった。
「私は叶えられる。そっちは叶えられない。両方叶えられることなんてないんだね」
「良くない世の中だね」
この世は不平等だ。
連日のニュースで罪のない人が殺されたり、事故に巻き込まれたり。幼い子も、私ぐらいの子も、死んでいく。それを見ているのが苦しくて仕方がなかった。
もしかしたら、死んでいった子たちは未来に希望を持っていたのかもしれない。
そもそも「生」とか「死」について考えたことすらなかったかもしれない。
代わりになりたかった。私の命を差し出したかった。変わりたかった。
私の命が消えたら、きっと誰かが泣く。それは嫌だった。全員が一気に死ぬことが出来るなら、泣かせることもない。私が傷つくこともない。
あっという間に着いた。学校に。
「今日も一緒に帰ろ」
「うん」
「じゃ」
私と凛帆は教室が違う。約束を交わして、日常じゃない日常を始めた。
もう終わるのに、自然と学校に向かえてる。
日常じゃなくても、日常なんだな。



