親の再婚で気になってた同級生が妹になったけど、初恋の許嫁も同じ高校にいた件について

第四話 教室の距離
 翌日。
 朝のホームルーム前。
 教室はざわざわとした空気に包まれていた。
 七斗は自分の席に座り、昨夜瑠奈に教わったノートを見返していた。
(……意外とわかるな)
 数式がちゃんと意味を持って見える。
「おはよ、七斗」
 振り向くと葉英が立っていた。
「昨日、勉強どうだった?」
 柔らかい笑顔。
 一瞬、七斗は言葉に詰まる。
「まあ、なんとか」
「そっか。よかった」
 少しだけ安心したように微笑む。
 そのとき――
「七斗ー!」
 後ろから勢いよく肩を叩かれる。
 瑠奈。
「実力テスト自信ある?」
「……まあな」
「でしょ? 誰が教えたと思ってるの?」
 わざとらしく胸を張る。
 クラスメイトが振り向く。
「え、なに? 二人で勉強してたの?」
「仲よくない?」
 ひそひそ声。
 七斗の顔が熱くなる。
「ただ教えてもらっただけだ!」
「“ただ”って何それ」
 瑠奈がじっと見る。
 葉英はそのやり取りを静かに見つめていた。
「瑠奈さん、数学得意なんだ?」
 穏やかな声。
「まあまあかな」
「すごいね。七斗、理系苦手だから助かったでしょ?」
 にこっと笑う。
 でも、その目はどこか探るよう。
「……うん、まあ」
 七斗は落ち着かない。
 なんだこの空気。

 実力テスト開始。
 教室に静寂が落ちる。
 カリカリとペンの音。
(昨日やったとこだ)
 解ける。
 ちゃんと解ける。
 七斗は最後まで書き切った。

 放課後。
 答案返却。
「七斗、国語八十九点、数学七十八点、英語八十五点、理科六十一点、社会九十八点」
「おっ」
 思ったより高い。
「やるじゃん!てか文系科目の点数たかっ?!」
 瑠奈が小声でガッツポーズ。
 葉英は少し目を見開いた。
「すごいね。七斗。文系科目相変わらず高得点だね。」
 素直な笑顔。
 でも、ほんの一瞬だけ寂しそうな影が差す。
(私が教えなくても……できるんだ)
 小学生の頃は、いつも隣で教えていた。
 七斗が困れば、頼られていた。
 その立場が、少し揺らぐ。

 教室の窓際。
 七斗が立っていると、男子数人が近づいてくる。
「お前さ」
「ん?」
「瑠奈と付き合ってんの?」
「はあ!?」
 声が裏返る。
「昨日も一緒に帰ってたし、今日もなんか距離近くね?」
「違う!」
「じゃあ葉英のほう?」
「は!?」
 さらにざわつく。
「バスケ部のあの子だろ? 幼馴染って聞いたけど」
「なんだよそれ……ズルすぎだろ!!」
 完全に噂の中心。
 教室のあちこちから視線が刺さる。とても痛い。
 そのとき。
「七斗、部活行こ」
 葉英が自然に隣に立つ。
 同時に――
「七斗、今日も勉強する?」
 瑠奈が反対側に立つ。
 左右から挟まれる形。
 男子たちがニヤニヤする。
「うわ、修羅場?」
「違う!!」
 七斗の叫びが教室に響く。
 葉英は静かに微笑む。
「私達は部活あるから、瑠奈ちゃんは先に帰っててね」
 顔は笑ってるけど目が少し笑ってないように見える。
 瑠奈も負けじと笑う。
「私は時間あるし応援したいから待ってるよ」
 火花は見えない。
 でも、確実に散っている。