親の再婚で気になってた同級生が妹になったけど、初恋の許嫁も同じ高校にいた件について

第二話 突然の「家族」
 入学式の余韻がまだ残る夜。
 七斗は自室のベッドに寝転びながら天井を見つめていた。
(葉英と同じ高校か……)
 久しぶりに会ったのに、距離は思ったより遠くなかった。むしろ、小学生の頃よりも自然に話せた気がする。
 コンコン。
「七斗、ちょっとリビングに来て」
 母の声だ。
「今行く」
 階段を降りると、リビングには母と、見知らぬ男性が座っていた。
 穏やかそうな表情の人だ。
「突然だけど、大事な話があるの」
 母は一度深呼吸をしてから言った。
「お母さん、再婚することになりました」
「……え?」
 思考が止まる。
「こちらが、瑠奈ちゃんのお父さん」
 七斗の心臓が一瞬止まりかけた。
「……瑠奈?」
 その瞬間、リビングの奥の扉が開いた。
「こんばんは、七斗くん」
 見慣れた笑顔。
 入学式で隣のクラス番号を見てはしゃいでいた、あの瑠奈が立っている。
 部屋着姿で。
「え、ちょっと待て」
 七斗は母と瑠奈を交互に見る。
「つまり……」
「今日から一緒に住むの。家族になるのよ」
 あまりにもさらっと告げられた言葉。
 頭が追いつかない。
「よろしくね、七斗くん……じゃなくて、お兄ちゃん?」
 瑠奈が少し照れながら言う。
「言うな!!」
 思わず声が裏返る。
 瑠奈はくすっと笑う。
「でも、本当によろしく。私も今日聞いたばっかりだから」
 少しだけ不安そうな目。
 その表情を見て、七斗は何も言い返せなくなる。
「……まあ、よろしく」
 ぎこちなくそう言うと、瑠奈の顔がぱっと明るくなった。
「うん!」

 その夜。
 風呂上がりに廊下を歩いていると、ちょうど瑠奈の部屋の前で鉢合わせる。
 距離が、近い。
「びっくりした?」
「当たり前だろ」
「私もびっくりしたよ。でも……」
 瑠奈は少し視線を逸らしてから、言った。
「ちょっと嬉しかった」
「は?」
「だって、好きな……」
 言いかけて、止まる。
「……気になってた人と家族になるなんて、ドラマみたいじゃん?」
 七斗の顔が一気に熱くなる。
「そういう冗談やめろ」
「冗談じゃないよ?」
 真っ直ぐな目。
 七斗は思わず目を逸らす。
 そのとき、スマホが震えた。
 画面には――葉英。
『今日、話せて嬉しかった。また一緒にバスケしようね』
 短いメッセージ。
 胸が少しだけ締めつけられる。
「誰から?」
 瑠奈がのぞき込む。
「なんでもねえ」
「……葉英ちゃん?」
 勘が鋭い。
 七斗は何も言わない。
 瑠奈は一瞬だけ寂しそうに笑った。
「負けないからね」
「え?」
「なんでもない。おやすみ、お兄ちゃん」
「だからそれやめろ!」
 楽しそうに部屋へ戻る瑠奈。
 廊下に一人残った七斗は、スマホを握りしめた。
 幼い頃から隣にいた葉英。
 突然、家族になった瑠奈。
 どちらも特別で――
 どちらも、簡単じゃない。
 春の夜は、まだ始まったばかりだった。